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38 夏合宿②
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「レオーネ……遅いな……どうしたんだろう」
先に行って帰ってきた私たちは、なかなか帰って来ないフローラのことを不思議に思った。
唯一、二股に分かれた道もあるんだけど、右へ進めばすぐに行き止まりで、そこに事前に用意された石を持って帰れば、行って来たという証明になる。
だから、石を先に行ってきた私たちは持っているし、本当に短い肝試しだから、フローラだって五分程度で帰ってくると思っていたのだ。
そして、間抜けな私はフローラがとんでもない方向音痴だと言うことを今更ながらに思い出した。
「あの……もしかして、フローラさん、迷ったのではないかしら……?」
おそるおそる口にした私に、三人ともぎょっと驚いた顔になった。
「まさか、そんな……! ほぼ一本道で、しかも短距離だぞ?」
エルネストはあり得ないだろうと言ったけど、私はそれがあり得てしまう理由を知っていた。
「意中の庭師に会った時、あの子、寮に帰る道で迷って、庭園にまで迷い込んでしまっていたんです。そこを助けてもらって、知り合ったとか……」
「えっ……嘘だろう。どれだけの道を間違えたら、そんなことになるの?」
オスカーはフローラのあまりの方向音痴振りに戸惑った様子だった。
「そうですよ。寮と庭園は、校舎を挟んで全く逆方向ですよ……それに、その間にはいくつも表示があるはずです。まさか」
「そうだな。ロゼッタの言う通りだ……それほどまでに方向音痴なのなら、俺たちが想像を絶する迷い方をしているのかもしれない」
私が何を言わんとしているかを、他の三人もわかってくれたらしい。
アクィラ魔法学園内は広い。けれど、表示がいくつもあるし、気をつけて進めばそんなに迷うこともない。
けれど、度が過ぎた方向音痴のフローラはそこで迷い、そして、明後日の方向へ行ってしまっていたのだ。
先に行って帰ってきた私たちは、なかなか帰って来ないフローラのことを不思議に思った。
唯一、二股に分かれた道もあるんだけど、右へ進めばすぐに行き止まりで、そこに事前に用意された石を持って帰れば、行って来たという証明になる。
だから、石を先に行ってきた私たちは持っているし、本当に短い肝試しだから、フローラだって五分程度で帰ってくると思っていたのだ。
そして、間抜けな私はフローラがとんでもない方向音痴だと言うことを今更ながらに思い出した。
「あの……もしかして、フローラさん、迷ったのではないかしら……?」
おそるおそる口にした私に、三人ともぎょっと驚いた顔になった。
「まさか、そんな……! ほぼ一本道で、しかも短距離だぞ?」
エルネストはあり得ないだろうと言ったけど、私はそれがあり得てしまう理由を知っていた。
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「えっ……嘘だろう。どれだけの道を間違えたら、そんなことになるの?」
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「そうですよ。寮と庭園は、校舎を挟んで全く逆方向ですよ……それに、その間にはいくつも表示があるはずです。まさか」
「そうだな。ロゼッタの言う通りだ……それほどまでに方向音痴なのなら、俺たちが想像を絶する迷い方をしているのかもしれない」
私が何を言わんとしているかを、他の三人もわかってくれたらしい。
アクィラ魔法学園内は広い。けれど、表示がいくつもあるし、気をつけて進めばそんなに迷うこともない。
けれど、度が過ぎた方向音痴のフローラはそこで迷い、そして、明後日の方向へ行ってしまっていたのだ。
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