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24 彼の秘密①
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そんなこんなで、私に何の興味もなさそうなイエルクから、暗に『とても良い先輩だと思っていますから』のようなな……もし私が女性として気になっているなら有り得ないだろう、付き合っている女の子が居るからと、振られるような台詞を言われてしまった。
なんだか……悲しいけど、もうそれは仕方がない。
初期好感度は良さそうだし、若干期待はしたけど、イエルクは確か初期、少しずつしか好感度が上がらない。
ヒロインフローラが個別ルート行く前にも、好感度の数値をかなり上げておかないと、幼馴染みに別れ告げないということは今でも印象的で覚えているし、それもそうだった。
ええ。イエルクとは親しくなって信頼度上がったら、学園並びに世界を救うために、ただ協力してくれるだけで良いのよ。
私との恋は、別に始まらなくても……とても、残念だけど。
イエルクに告白してもいないのに、なんだか事前に振られた気分になった私は、その後黙々と真面目に勉強して、一時間の読書タイムを取り、そこでゲーム内で明かされている双月草の情報を集めたりしていた。
二人が図書館から帰ろうと歩き出した時、私は不注意で転倒しそうになった。
その時、大きな黒い手が影の中から伸びて私を助けてくれた。
……あ。
そっか。イエルクは黒魔法の上位魔法、闇魔法をこの時点で使うことが出来た。
それは育ての親のドワーフから『決して誰にも言ってはならない』と、約束させられて秘密を抱えたままで生きている。
「あの……」
何かを言い出そうとしているイエルクに、私は首を横に振って微笑んだ。
「誰にも言わないから、大丈夫」
「先輩は……怖くないですか?」
一年生の段階で上位魔法が使えるなんて、通常ならば有り得ない。育ての親のドワーフは、イエルクが奇異の目で見られることを恐れていた。
「怖くないよ。イエルクは怖くない」
本当に怖くない。イエルクは黒魔法の才能を持ちすぎているだけの優秀な子って私は知っているから。
「……先輩って、変な人ですね」
まだ何か言いたげにしていたイエルクは、また女子寮前まで私を送ってくれたけど、結局は私は彼にとって恋愛対象外だから、余計なことは考えずに自然に優しいんだと思う。
送ったからって私が自分が好きだと思うなんて思っていないし、それほど彼にとって対象外っていうことなのよ。
多分、本当に困っていると思って、助けてくれようとしたのよね……優しいけど、残酷な事実。
三頭の犬《ケルベロス》は、今日は機嫌が悪かったらしく、「なんで、こんなに寮に帰って来る時間が遅いんだ」と、説教され掛けたけど、私は聞こえない振りをして微笑みながら、するりと扉をすり抜けた。
そして、食事と入浴を済ませ、今日図書館で調べてきた『双月草』についての記述を書き写して来たノートを開いた。
「……魔の森の高原のこの位置に、双月草らしき光る薬草を見掛ける……フローラ以外には、気がつかれなくて当然だわ。だって、薬草辞典のような薬草について書かれた書物ではなく、アクィラ魔法学園の創設者の日記にこんな大事な情報が書かれているなんて……」
歴史的偉人という訳でもないし、なんで紛れ込んでいたんだろう? と、不思議になるような学園創設者の日記は、これまでにあまり読まれなかったようだ。
なんだか……悲しいけど、もうそれは仕方がない。
初期好感度は良さそうだし、若干期待はしたけど、イエルクは確か初期、少しずつしか好感度が上がらない。
ヒロインフローラが個別ルート行く前にも、好感度の数値をかなり上げておかないと、幼馴染みに別れ告げないということは今でも印象的で覚えているし、それもそうだった。
ええ。イエルクとは親しくなって信頼度上がったら、学園並びに世界を救うために、ただ協力してくれるだけで良いのよ。
私との恋は、別に始まらなくても……とても、残念だけど。
イエルクに告白してもいないのに、なんだか事前に振られた気分になった私は、その後黙々と真面目に勉強して、一時間の読書タイムを取り、そこでゲーム内で明かされている双月草の情報を集めたりしていた。
二人が図書館から帰ろうと歩き出した時、私は不注意で転倒しそうになった。
その時、大きな黒い手が影の中から伸びて私を助けてくれた。
……あ。
そっか。イエルクは黒魔法の上位魔法、闇魔法をこの時点で使うことが出来た。
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「あの……」
何かを言い出そうとしているイエルクに、私は首を横に振って微笑んだ。
「誰にも言わないから、大丈夫」
「先輩は……怖くないですか?」
一年生の段階で上位魔法が使えるなんて、通常ならば有り得ない。育ての親のドワーフは、イエルクが奇異の目で見られることを恐れていた。
「怖くないよ。イエルクは怖くない」
本当に怖くない。イエルクは黒魔法の才能を持ちすぎているだけの優秀な子って私は知っているから。
「……先輩って、変な人ですね」
まだ何か言いたげにしていたイエルクは、また女子寮前まで私を送ってくれたけど、結局は私は彼にとって恋愛対象外だから、余計なことは考えずに自然に優しいんだと思う。
送ったからって私が自分が好きだと思うなんて思っていないし、それほど彼にとって対象外っていうことなのよ。
多分、本当に困っていると思って、助けてくれようとしたのよね……優しいけど、残酷な事実。
三頭の犬《ケルベロス》は、今日は機嫌が悪かったらしく、「なんで、こんなに寮に帰って来る時間が遅いんだ」と、説教され掛けたけど、私は聞こえない振りをして微笑みながら、するりと扉をすり抜けた。
そして、食事と入浴を済ませ、今日図書館で調べてきた『双月草』についての記述を書き写して来たノートを開いた。
「……魔の森の高原のこの位置に、双月草らしき光る薬草を見掛ける……フローラ以外には、気がつかれなくて当然だわ。だって、薬草辞典のような薬草について書かれた書物ではなく、アクィラ魔法学園の創設者の日記にこんな大事な情報が書かれているなんて……」
歴史的偉人という訳でもないし、なんで紛れ込んでいたんだろう? と、不思議になるような学園創設者の日記は、これまでにあまり読まれなかったようだ。
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