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22 恋が叶う本①
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「ねえー? この図書館に、恋が叶う本があるって、知っている?」
「知らないっ……何々? どういうこと?」
「それがさー……」
図書館で隣に座って、楽しそうにこそこそ話をしている二人の女の子の言葉が聞こえていて来て、会話には加わっていない私はそれに答えたくて、とてもうずうずしていた。
……はいはい! 私! 私はそのレアアイテムのこと、知っています!
それは、フローラが好感度を上げたい攻略対象者に使うアイテムの中で、最高に効果のある『恋が叶う本』のこと!
確かゲーム内では、何か条件をクリアしないと出て来ないはずだけど、リアルな世界は条件なく手に入ったりするのかな。
けど、アイテム『恋が叶う本』でも、好感度+30だから、もし私がエルネストとオスカーに使ってマイナス100とマイナス80に使っても、だから何って感じもするし。
……私の悪評を何も知らないイエルクとは、順調に仲良くなっている気はするし、別に良いか……。
恋が叶う本って、いかにも乙女ゲームだよね。だって、普通なら好感度が上がり下がりを操れるアイテムなんて、心を操っているみたいで……。
「……です。ディリンジャー先輩。聞いてますか?」
「聞いてるよ。イエルクって、本当に教え方上手いよね」
隣の女の子たちの会話に、頭の中が完全に横道に逸れてしまっていた私が動揺を隠せず彼を褒めると、イエルクは照れくさそうに微笑んだ。
イエルクは無表情が基本だから、こういうふとした笑顔が可愛いんだよね……ギャップ萌えという概念かしら。
私は『恋色★魔法学園』では、一応エルネストが推しだったんだけど、これからはイエルクが一番の推しになりそう。
だって、唯一私に優しいし……優しくない男なんて、近寄りたくもない。
……どんなに好みの顔でも、自分に冷たい人をずっと好きでいるとか無理……私はロゼッタは、そういう意味で凄いとは思う。
あまり恋愛に興味なかった元喪女OLから見たって、それは時間の効率が悪すぎる。
最初から脈のない恋に掛けている時間なんて、まだ若いとは言え、単純に考えてもったいないもの。可能性ゼロの恋に意地になってもな何の意味もない。
「良かった。それより……ディリンジャー先輩、もしかして……何か気になることでも、あるんですか?」
イエルクはさっきから、私がこの図書館の中にある何かに気を取られていることに、気がついていたみたいだ。
そうそう。実はエッセル先生からの課題、双月草の資料を探しに行きたいなーって、思ってた。
「そうなの……少し、調べ物したいことがあって……」
ゲーム内では図書館の使用率が上がる度に、ランクの高い書棚が見られるようになっていた。
ゲームの進行上、先に重要な事の書いてある魔導書を見られればおかしなことになるし、仕方ないけど……なんだか、不便すぎる仕様だよね。
だけど、こうして現実にある図書館では、もちろん、そんなことはない。
確かうっすらとした記憶では双月草に関する本は、司書との関係を深め図書館ランク『S』にならないと、見つからず読めなかったはずだけど、今なら私は自由に動けるし『S』や『SS 』の本だって普通に読めちゃうはずだよ!
「知らないっ……何々? どういうこと?」
「それがさー……」
図書館で隣に座って、楽しそうにこそこそ話をしている二人の女の子の言葉が聞こえていて来て、会話には加わっていない私はそれに答えたくて、とてもうずうずしていた。
……はいはい! 私! 私はそのレアアイテムのこと、知っています!
それは、フローラが好感度を上げたい攻略対象者に使うアイテムの中で、最高に効果のある『恋が叶う本』のこと!
確かゲーム内では、何か条件をクリアしないと出て来ないはずだけど、リアルな世界は条件なく手に入ったりするのかな。
けど、アイテム『恋が叶う本』でも、好感度+30だから、もし私がエルネストとオスカーに使ってマイナス100とマイナス80に使っても、だから何って感じもするし。
……私の悪評を何も知らないイエルクとは、順調に仲良くなっている気はするし、別に良いか……。
恋が叶う本って、いかにも乙女ゲームだよね。だって、普通なら好感度が上がり下がりを操れるアイテムなんて、心を操っているみたいで……。
「……です。ディリンジャー先輩。聞いてますか?」
「聞いてるよ。イエルクって、本当に教え方上手いよね」
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イエルクは無表情が基本だから、こういうふとした笑顔が可愛いんだよね……ギャップ萌えという概念かしら。
私は『恋色★魔法学園』では、一応エルネストが推しだったんだけど、これからはイエルクが一番の推しになりそう。
だって、唯一私に優しいし……優しくない男なんて、近寄りたくもない。
……どんなに好みの顔でも、自分に冷たい人をずっと好きでいるとか無理……私はロゼッタは、そういう意味で凄いとは思う。
あまり恋愛に興味なかった元喪女OLから見たって、それは時間の効率が悪すぎる。
最初から脈のない恋に掛けている時間なんて、まだ若いとは言え、単純に考えてもったいないもの。可能性ゼロの恋に意地になってもな何の意味もない。
「良かった。それより……ディリンジャー先輩、もしかして……何か気になることでも、あるんですか?」
イエルクはさっきから、私がこの図書館の中にある何かに気を取られていることに、気がついていたみたいだ。
そうそう。実はエッセル先生からの課題、双月草の資料を探しに行きたいなーって、思ってた。
「そうなの……少し、調べ物したいことがあって……」
ゲーム内では図書館の使用率が上がる度に、ランクの高い書棚が見られるようになっていた。
ゲームの進行上、先に重要な事の書いてある魔導書を見られればおかしなことになるし、仕方ないけど……なんだか、不便すぎる仕様だよね。
だけど、こうして現実にある図書館では、もちろん、そんなことはない。
確かうっすらとした記憶では双月草に関する本は、司書との関係を深め図書館ランク『S』にならないと、見つからず読めなかったはずだけど、今なら私は自由に動けるし『S』や『SS 』の本だって普通に読めちゃうはずだよ!
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