(総愛され予定の)悪役令嬢は、私利私欲で魔法界滅亡を救いたい!

待鳥園子

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19 勉強を教えて②

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「……ディリンジャー先輩、それではまた明日の放課後、図書館で」

「イエルクくん。ありがとう。また明日、図書館でね」

 無表情が標準のイエルクは、私に軽く挨拶をしてから、男子寮へと帰って行った。

 女子寮と男子寮は学園の中で言うと正反対の位置にあるので、そこへ戻るにはかなりの距離がある。

 それなのに、自分と喋っていると暗くなってしまったから、イエルクがさりげなく送っていてくれたことに気がつき、胸がきゅんと、ときめいてしまった。

 え。まだ出会ったばかりなのに、優しい。

 当たり前のことなのかもしれないけど、ロゼッタの周囲が彼女に優しくない男ばかりだから、やたらと際立つ。兄も第二王子もその友人も酷い扱いだったし!

 イエルク……私には、好感度が唯一マイナスではない貴方しか居ない。

 親しくなって、リッチ先生の企みを防ぐのを協力してもらうのは、貴方に決めるわ!

 袋小路だと思っていた道すじに突破口が見つけられて、よーしと機嫌よくなった私は女子寮の寮番、三頭の犬《ケルベロス》に挨拶をしてから扉を開いた。

 今日は三頭とも機嫌良いみたいで、帰寮が遅くなったのに、ねちねちと嫌味は言われなかった。良かった。

 とは言え、生徒会に入るための条件としては①実力テストで学年一位になる②同じように闘技大会で学年一位になる③学年主任の先生から推薦を貰う、の3つしかない。

 私の学年には、エルネストとオスカーが居るので①②は、もう絶対無理だとすると、裏ルートとも言える③しかない。

 実はゲーム内でのロゼッタは来年、フローラがエルネストルートを選んだ時のみ、③を使って生徒会入りすることになる。

 三年生になった時の学年主任は、賄賂の利く先生なので、ロゼットはディリンジャー家の両親に頼み『必ず殿下と親しくなるから』と約束をして先生に巨額の賄賂を渡すのだ。

 けど、二年生の学年担当は、規律については厳格で知られる魔法薬担当のエッセル先生。

 各パラメーターが足りなかった場合は、③を敗者復活戦で使える学年の違うフローラとは、違う学年主任の先生。

 もし、エッセル先生の推薦をどうにかして受けたいなら、どんな条件かはわからないけど、彼に「生徒会に入りたいから推薦してください」と、頼み込んでみるしかない……。

「ロゼッタ様、おかえりなさい」

「……ステファニー。こんばんは」

 私が二年生になってから、ほぼ話していない元取り巻きステファニーに話しかけられ、私は微笑んで彼女へ挨拶をした。

「最近は、エルネスト様とは、お話されないんですね」

 今日、挨拶だけしたら瞬殺されたけどね。絶妙にイラつく質問をされて、私はにっこり微笑んだ。

 イラついても、何も良いことはない。平常心よ平常心。

「ええ。私もそろそろ大人になったのよ。報われない恋は、諦めるべきではないかと考えたの」

「もしかして……誰か違う方が、居るということですか?」

 あ。私がエルネストを諦めた様子だから、ステファニーは何が原因なのかと、気になったというところかしら?

 関係ない私なんて放って置けば良いのに、魔法学園の学生って、ずいぶんと暇なのね。

「そうなの! 入学したばかりの年下の男の子なんだけど、すごく可愛いのよ。エルネスト様は王族で第二王子だし、私も高望みをし過ぎてしまっていたわ。身近な男の子の方が、話しやすくて良いわね」

 イエルクのことを好きかと言われると、それは微妙なんだけど私は、これから周囲から見てそういう行動を取っていると思われると思うし。

 ……それはそれで、彼女たちにも、誤解されても良いことにしよう。

「えっ……本当なのですか。あんなにもお好きな様子だったのに、ロゼッタ様はエルネスト様のことを、完全に諦められたのですか?」

 いくら好きでも、好感度マイナス数値MAX100スタートなんて、そうそう頑張れないわよ。

「ええ。その通りよ」

「っ……おやすみなさい。ロゼッタ様」

 ステファニーは、一瞬口ごもり動揺した後挨拶もそこそこに、廊下を走って行った。

「おやすみなさい……ステファニー」

 彼女にはもう聞こえていないと思うけど、一応挨拶を返した私は、何をそんなに動揺したの……? と、首を捻るしかない。

 ステファニーは、何かに驚いていた……? 元々取り巻きをしていた私が、180度の方向転換をはかったと思って、驚いただけよね?

 まあ……良いわ。

 とにかく、私は生徒会顧問エッセル先生から、生徒会に推薦して貰える条件を聞き出さなければ……!

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