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18 勉強を教えて①
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「……そうなんですか。ディリンジャー先輩は、生徒会にどうしても入りたかったんですね。確かに先輩の言う通りに内申も良くなりますし、卒業後の就職先には困らないですよね」
「う、うん」
イエルクの純真な真っ直ぐな視線は、あの謎行動を説明する理由を並べた私のことをすごいすごいと言わんばかりで、なんだか心が痛む。
ここで、少々私の事情を誤魔化してしまったところで、別に投獄される訳もないんだけど……嘘をつくのは、前世から苦手だ。
素直な性格のイエルクは『私は出来れば、二年生では監督生になりたくて、実力テストで一番になりたいから、神童と呼ばれているイエルクくんに勉強を教えて欲しいんだよね』という、私が作った苦し紛れの嘘を、すんなりと受け入れてくれた。
高等部になって、ようやく魔法学園に入ったイエルクは色々と事情あり田舎暮らしを続け集団生活に慣れてなく、人馴れをしていないから誰かの言葉を疑うことをまだ知らない。
魔法界の義務教育は、中等部までは自由で高等部の三年間のみなのだ。あとは、魔法大学に進むのも就職するのも、その子の自由になる。
そういえば、イエルクはゲーム内ではフローラと仲良くなった後も、彼女以外とは仲良くならなかった。
きっと、純真な彼女と初めて仲良くなって、周囲からイエルクを見る目が変わり、色々とあって警戒することを覚えたからなのもしれない。
だから、多分……私に向けるイエルクの好感度って、10くらい? それ以下? まだまだわからない。うーん。さっき名前を知った程度だもんね。
イエルクという希望は奇跡的に繋がったんだから、これから、どんどん好感度を上げていきたい!
「そうそう! そうなの。変なお願いしたのに、引き受けてくれて、ありがとう。イエルクくん。私、勉強苦手て……けど、同級生に教えても言えないでしょう? 困ってたから、助かる……!」
最後の困っていたは、本当に本音。困ってたの。本当に、助かるー!
もう無理だし、絶望でしかないと思ってからの、まさかの救いの手だったから、九死に一生スペシャル並みの奇跡だよ!
実際のところ、私と同じ学年には、万年首位のエルネストが居るから、たったひと月で彼から首位を奪い取るということは不可能に近い。
正攻法で生徒会に入るのは、絶対に無理なんだと思う……でも、勉強を教えてとお願いしてイエルクと親しくなれるなら、とりあえず……このラインで、どんどん攻めて行きたい。
「いいえ。大丈夫ですよ。実力テストの結果次第ですが、僕ももしかしたら生徒会に入るかもしれないので……ディリンジャー先輩と一緒ならとても心強いです」
はにかみながらそう言ったイエルクの笑顔が可愛い。
……え。待って。今、ときめいたかもしれない。さすが、乙女ゲームの攻略者。
けど、入試の成績が首位で入学生代表を務めたイエルクの言葉をもう一度噛み締めて、ここまでそれに気が付かなかった私が間抜けすぎて、自分の頭をぽこぽこと叩きたくなった。
っ……私の馬鹿ー!
イエルクは当然のように生徒会入りするし、そつなく優秀なヒロインフローラだって、ゲーム関係なくそうなる可能性も高い。
だとしたら、私だって生徒会に入れば、仲良くなりたい二人と行動も共に出来るし、良いことづくめなのでは?
それが目的の乙女ゲームだから、アクィラ魔法学園生徒会入りさえしてしまえば、生徒会のみの特別な行事だったりも多く、そこでイエルクとフローラの好感度だって上げることが出来る!
エルネストとオスカーの二人は、私が生徒会入りすればとても嫌がるだろうけど、そこはもう貴方たちには一切興味ないですからと引いて、可愛い年下のイエルクとフローラを延々構っていれば良いのよね。
二人だって、彼の意向を尊重することもなく手段を選ばすロゼッタがエルネストに熱烈に迫っていたから嫌だった訳で、今の私の関心がフローラとイエルクの二人と仲良くなりたいということなら、彼らにはもう関係ないはず。
そもそも、エルネストとオスカーは攻略対象者になるくらい素敵な人なのだ。もうロゼッタの目的が違うと知れば、きっとわかってくれるだろう。
そうだよ。生徒会入り……頑張ってみようかな。
「う、うん」
イエルクの純真な真っ直ぐな視線は、あの謎行動を説明する理由を並べた私のことをすごいすごいと言わんばかりで、なんだか心が痛む。
ここで、少々私の事情を誤魔化してしまったところで、別に投獄される訳もないんだけど……嘘をつくのは、前世から苦手だ。
素直な性格のイエルクは『私は出来れば、二年生では監督生になりたくて、実力テストで一番になりたいから、神童と呼ばれているイエルクくんに勉強を教えて欲しいんだよね』という、私が作った苦し紛れの嘘を、すんなりと受け入れてくれた。
高等部になって、ようやく魔法学園に入ったイエルクは色々と事情あり田舎暮らしを続け集団生活に慣れてなく、人馴れをしていないから誰かの言葉を疑うことをまだ知らない。
魔法界の義務教育は、中等部までは自由で高等部の三年間のみなのだ。あとは、魔法大学に進むのも就職するのも、その子の自由になる。
そういえば、イエルクはゲーム内ではフローラと仲良くなった後も、彼女以外とは仲良くならなかった。
きっと、純真な彼女と初めて仲良くなって、周囲からイエルクを見る目が変わり、色々とあって警戒することを覚えたからなのもしれない。
だから、多分……私に向けるイエルクの好感度って、10くらい? それ以下? まだまだわからない。うーん。さっき名前を知った程度だもんね。
イエルクという希望は奇跡的に繋がったんだから、これから、どんどん好感度を上げていきたい!
「そうそう! そうなの。変なお願いしたのに、引き受けてくれて、ありがとう。イエルクくん。私、勉強苦手て……けど、同級生に教えても言えないでしょう? 困ってたから、助かる……!」
最後の困っていたは、本当に本音。困ってたの。本当に、助かるー!
もう無理だし、絶望でしかないと思ってからの、まさかの救いの手だったから、九死に一生スペシャル並みの奇跡だよ!
実際のところ、私と同じ学年には、万年首位のエルネストが居るから、たったひと月で彼から首位を奪い取るということは不可能に近い。
正攻法で生徒会に入るのは、絶対に無理なんだと思う……でも、勉強を教えてとお願いしてイエルクと親しくなれるなら、とりあえず……このラインで、どんどん攻めて行きたい。
「いいえ。大丈夫ですよ。実力テストの結果次第ですが、僕ももしかしたら生徒会に入るかもしれないので……ディリンジャー先輩と一緒ならとても心強いです」
はにかみながらそう言ったイエルクの笑顔が可愛い。
……え。待って。今、ときめいたかもしれない。さすが、乙女ゲームの攻略者。
けど、入試の成績が首位で入学生代表を務めたイエルクの言葉をもう一度噛み締めて、ここまでそれに気が付かなかった私が間抜けすぎて、自分の頭をぽこぽこと叩きたくなった。
っ……私の馬鹿ー!
イエルクは当然のように生徒会入りするし、そつなく優秀なヒロインフローラだって、ゲーム関係なくそうなる可能性も高い。
だとしたら、私だって生徒会に入れば、仲良くなりたい二人と行動も共に出来るし、良いことづくめなのでは?
それが目的の乙女ゲームだから、アクィラ魔法学園生徒会入りさえしてしまえば、生徒会のみの特別な行事だったりも多く、そこでイエルクとフローラの好感度だって上げることが出来る!
エルネストとオスカーの二人は、私が生徒会入りすればとても嫌がるだろうけど、そこはもう貴方たちには一切興味ないですからと引いて、可愛い年下のイエルクとフローラを延々構っていれば良いのよね。
二人だって、彼の意向を尊重することもなく手段を選ばすロゼッタがエルネストに熱烈に迫っていたから嫌だった訳で、今の私の関心がフローラとイエルクの二人と仲良くなりたいということなら、彼らにはもう関係ないはず。
そもそも、エルネストとオスカーは攻略対象者になるくらい素敵な人なのだ。もうロゼッタの目的が違うと知れば、きっとわかってくれるだろう。
そうだよ。生徒会入り……頑張ってみようかな。
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