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16 奇跡の大逆転①
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「おはよう。君って……イエルク・アスティという名前なんでしょう? 良い名前ね。新入生よね」
くるくると癖のある黒髪のイエルクは、まるで人形のような端正な顔に、血のような真紅の目を持っていた。
「……」
三人目の攻略対象者イエルクは、話しかけた私を見て居ることを確実に認識をしたはずなのに、特に完納をすることなく、すたすたと先へと進んだ。
「私……二年生で、ロゼッタ・ディリンジャーよ。よろしくね」
「……」
自己紹介しても無言でスタスタと歩きを進めるイエルクは、必死に彼についていく私の話を聞いてくれる気はないみたい。
「……ごめんね。急いでいるのに」
……私。今。心が、ポッキリと折れた。見事に折れた。話掛けても何も返さない人に話掛けるって、メンタル強くないと無理だと思う。
よくよく考えてみると『イエルクは、ヒロインただ一人にしか心を開かない』っていう、あの彼女しか愛せない設定……あったあった。
嘘でしょう……え。なんだか、思っていたよりも、全然無理だった。
そもそも、ゲーム開始から嫌がられている悪役令嬢のロゼッタが、ヒロインの代理で攻略対象者と仲良くなろうと思うこと自体無理があった。
詰んだ……無理だった。
好感度マイナス100とマイナス80と、話したこともない初対面だから多分、好感度0だとしても、これから話を聞いてくれる気もないのなら、マイナス100と同じことだわ。
どうしよう。無理……詰んだ。
とにかく、フローラを守ってくれる存在は、攻略対象者は諦めましょう……私、どうかしてたわ。
そもそも、そんな三人は親しくなることすら、無理だろうと思っていたからこそ『私に魔法界を救うなんて、無理かもしれない』と思って悩んでいたはずなのに。
努力と根性さえあれば、困難を打ち砕けるかもみたいな儚い幻想なんて……ある訳がなかった。
とにかく……今は一度この案件を持ち帰り、再度今ある条件を吟味して改善案を再検討して、魔力の強そうな新たな誰かと仲良くなることを、目指す必要性があるわね。
うう。春なのに、なんだか風が冷たい……。
続けざまに三人の男性に冷たくされた私は、落ち込んでとぼとぼと寮への道を歩いていた。
「……あの」
「え?」
急に背後から、声を掛けられて振り向くと驚いた。
くるくると癖のある黒髪のイエルクは、まるで人形のような端正な顔に、血のような真紅の目を持っていた。
「……」
三人目の攻略対象者イエルクは、話しかけた私を見て居ることを確実に認識をしたはずなのに、特に完納をすることなく、すたすたと先へと進んだ。
「私……二年生で、ロゼッタ・ディリンジャーよ。よろしくね」
「……」
自己紹介しても無言でスタスタと歩きを進めるイエルクは、必死に彼についていく私の話を聞いてくれる気はないみたい。
「……ごめんね。急いでいるのに」
……私。今。心が、ポッキリと折れた。見事に折れた。話掛けても何も返さない人に話掛けるって、メンタル強くないと無理だと思う。
よくよく考えてみると『イエルクは、ヒロインただ一人にしか心を開かない』っていう、あの彼女しか愛せない設定……あったあった。
嘘でしょう……え。なんだか、思っていたよりも、全然無理だった。
そもそも、ゲーム開始から嫌がられている悪役令嬢のロゼッタが、ヒロインの代理で攻略対象者と仲良くなろうと思うこと自体無理があった。
詰んだ……無理だった。
好感度マイナス100とマイナス80と、話したこともない初対面だから多分、好感度0だとしても、これから話を聞いてくれる気もないのなら、マイナス100と同じことだわ。
どうしよう。無理……詰んだ。
とにかく、フローラを守ってくれる存在は、攻略対象者は諦めましょう……私、どうかしてたわ。
そもそも、そんな三人は親しくなることすら、無理だろうと思っていたからこそ『私に魔法界を救うなんて、無理かもしれない』と思って悩んでいたはずなのに。
努力と根性さえあれば、困難を打ち砕けるかもみたいな儚い幻想なんて……ある訳がなかった。
とにかく……今は一度この案件を持ち帰り、再度今ある条件を吟味して改善案を再検討して、魔力の強そうな新たな誰かと仲良くなることを、目指す必要性があるわね。
うう。春なのに、なんだか風が冷たい……。
続けざまに三人の男性に冷たくされた私は、落ち込んでとぼとぼと寮への道を歩いていた。
「……あの」
「え?」
急に背後から、声を掛けられて振り向くと驚いた。
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