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12 竜に乗った魔法使い②

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「近い。近いですっ……もう少し、離れて」

「ごめんごめん! 君の話が、本当に興味深くてさ。ついつい……で、どうして、世界が終わってしまうの?」

「私は本気なんです。もしかして、揶揄っています?」

 あまりにも食いつきの良すぎる彼の対応に、なんだか心の奥から不信感がむくむくと押し寄せて来た。

「そんな事はない。誤解だよ」

 っていうか……この事態を、完全に面白がってる? 私の話は前世のこともあって何もかもは明かせないけれど、全部本当のことなのに。

「私一人だけが、とある教師の犯罪行為を知っているんだけど……それを、防ぐ解決法がわからないの。自然と解決するはずだった道も、今では訳あって閉ざされてしまった。けど、ほんの少しの情報しか知らない私は……これから、どうすれば良いかわからなくて」

 随分とふんわりした事情説明になったけど、これ以上話すと、前世がどうの乙女ゲームがどうのという話になるし話せない。

「うーん。そうだね。ここはひとつ魔法警察に、通報する?」

 人差し指を上げて提案した彼だって、どうしようと悩んでいた私と同じように、それが当然だろうと思ったみたいだ。私は首を横に振って、それは出来ないと否定を示した。

「それは駄目。犯人はとても警戒心が強いし、彼が計画を実行するタイミングがわからない。もし、捕縛するのに証拠が足りず一度失敗してしまえば、もっと用心深くなってしまう。そうなってしまえば、もう何の手も打てなくなってしまう」

「……その教師の名前は、僕には教えられる? 君がやりづらいというのなら、僕が代わろう。犯人の名前とどんな犯罪をしているか、それを教えてくれたなら、君はもうこれからは心配もせす何も考えなくて良い」

 すべて自分に任せろと言わんばかりに、私をじっと見つめる彼の綺麗な目は、真剣だった。もしかしたら、自分で調べてくれようとしてくれている?

 けれど、私は首を横に振った。それはあまりにも、リスクが高すぎる気がして。

「……こうして会ったばかりで、貴方の名前も知らないのに、そこまで信用出来ない」

 彼が私を助けてくれる存在なら、それで良いかもしれない。

 ……もし、逆の立場だったとしたら? それこそ、目も当てられない事態になってしまう。

「はは。それは、当然だなー……うーん。なんとなく感じるんだけど、君には覚悟が足りないみたいだ。自分で調べるにしても、誰かに助けを求めるにしても……それをどうにか防ぎたいと思っているけど、積極的に事を起こすための覚悟をまだ決めかねているように俺は思うよ」

 きらきらとした光が灯る紫の目にはくもりなく、何の悪意も見えなくて、私はついつい何もかも打ち明けたくなってしまった。

 ……けど、まだこの彼を信用なんて、出来ない。今の時点でも、名前すら知らないのに。

「その通りよ。自分がそれをして、成功しているビジョンを、想像しづらいっていうか……とにかく今のところ、目に見える何もかもがマイナス要素ばかりだし、動くにしても……必死で闇雲にやるしかないもの」

「……手探りだとしてもやるしかないけど、君は自分で解決したいんだね?」

 なんだかんだ言っても、そうだと思う。誰かの手を借りるとなったとしても、どうなったか気になって眠れないだろうし……それならば、自分が当事者であった方がまだましだろう。

「そうなの。けど、私には、全然勇気が足りなくて……とても嫌われている人に、また親しくなるように働きかけたり……周囲から見れば意味のわからない事をしないといけなくなるの。唯一、それを知っている私が、何かやらないといけないことはわかっている……けど、まだ勇気が出ない」

 私自身がやるしかないんだけど、こうしてうじうじと二の足を踏んでいる。自分でもわかってはいるんだけど……一歩目がどうしても重くて。

「では、君が世界を救ってくれたら、俺が君の願いを叶えると約束するよ。何でも。報酬があればやる気も出やすいだろう」

 え。今……何でもって、言った?

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