(総愛され予定の)悪役令嬢は、私利私欲で魔法界滅亡を救いたい!

待鳥園子

文字の大きさ
上 下
12 / 55

12 竜に乗った魔法使い②

しおりを挟む
「近い。近いですっ……もう少し、離れて」

「ごめんごめん! 君の話が、本当に興味深くてさ。ついつい……で、どうして、世界が終わってしまうの?」

「私は本気なんです。もしかして、揶揄っています?」

 あまりにも食いつきの良すぎる彼の対応に、なんだか心の奥から不信感がむくむくと押し寄せて来た。

「そんな事はない。誤解だよ」

 っていうか……この事態を、完全に面白がってる? 私の話は前世のこともあって何もかもは明かせないけれど、全部本当のことなのに。

「私一人だけが、とある教師の犯罪行為を知っているんだけど……それを、防ぐ解決法がわからないの。自然と解決するはずだった道も、今では訳あって閉ざされてしまった。けど、ほんの少しの情報しか知らない私は……これから、どうすれば良いかわからなくて」

 随分とふんわりした事情説明になったけど、これ以上話すと、前世がどうの乙女ゲームがどうのという話になるし話せない。

「うーん。そうだね。ここはひとつ魔法警察に、通報する?」

 人差し指を上げて提案した彼だって、どうしようと悩んでいた私と同じように、それが当然だろうと思ったみたいだ。私は首を横に振って、それは出来ないと否定を示した。

「それは駄目。犯人はとても警戒心が強いし、彼が計画を実行するタイミングがわからない。もし、捕縛するのに証拠が足りず一度失敗してしまえば、もっと用心深くなってしまう。そうなってしまえば、もう何の手も打てなくなってしまう」

「……その教師の名前は、僕には教えられる? 君がやりづらいというのなら、僕が代わろう。犯人の名前とどんな犯罪をしているか、それを教えてくれたなら、君はもうこれからは心配もせす何も考えなくて良い」

 すべて自分に任せろと言わんばかりに、私をじっと見つめる彼の綺麗な目は、真剣だった。もしかしたら、自分で調べてくれようとしてくれている?

 けれど、私は首を横に振った。それはあまりにも、リスクが高すぎる気がして。

「……こうして会ったばかりで、貴方の名前も知らないのに、そこまで信用出来ない」

 彼が私を助けてくれる存在なら、それで良いかもしれない。

 ……もし、逆の立場だったとしたら? それこそ、目も当てられない事態になってしまう。

「はは。それは、当然だなー……うーん。なんとなく感じるんだけど、君には覚悟が足りないみたいだ。自分で調べるにしても、誰かに助けを求めるにしても……それをどうにか防ぎたいと思っているけど、積極的に事を起こすための覚悟をまだ決めかねているように俺は思うよ」

 きらきらとした光が灯る紫の目にはくもりなく、何の悪意も見えなくて、私はついつい何もかも打ち明けたくなってしまった。

 ……けど、まだこの彼を信用なんて、出来ない。今の時点でも、名前すら知らないのに。

「その通りよ。自分がそれをして、成功しているビジョンを、想像しづらいっていうか……とにかく今のところ、目に見える何もかもがマイナス要素ばかりだし、動くにしても……必死で闇雲にやるしかないもの」

「……手探りだとしてもやるしかないけど、君は自分で解決したいんだね?」

 なんだかんだ言っても、そうだと思う。誰かの手を借りるとなったとしても、どうなったか気になって眠れないだろうし……それならば、自分が当事者であった方がまだましだろう。

「そうなの。けど、私には、全然勇気が足りなくて……とても嫌われている人に、また親しくなるように働きかけたり……周囲から見れば意味のわからない事をしないといけなくなるの。唯一、それを知っている私が、何かやらないといけないことはわかっている……けど、まだ勇気が出ない」

 私自身がやるしかないんだけど、こうしてうじうじと二の足を踏んでいる。自分でもわかってはいるんだけど……一歩目がどうしても重くて。

「では、君が世界を救ってくれたら、俺が君の願いを叶えると約束するよ。何でも。報酬があればやる気も出やすいだろう」

 え。今……何でもって、言った?

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話

みっしー
恋愛
 病弱な公爵令嬢のフィリアはある日今までにないほどの高熱にうなされて自分の前世を思い出す。そして今自分がいるのは大好きだった乙女ゲームの世界だと気づく。しかし…「藍色の髪、空色の瞳、真っ白な肌……まさかっ……!」なんと彼女が転生したのはヒロインでも悪役令嬢でもない、ゲーム開始前に死んでしまう攻略対象の王子の婚約者だったのだ。でも前世で長生きできなかった分今世では長生きしたい!そんな彼女が長生きを目指して乙女ゲームの舞台に突然参加するお話です。 *番外編も含め完結いたしました!感想はいつでもありがたく読ませていただきますのでお気軽に!

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました

かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中! そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……? 可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです! そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!? イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!! 毎日17時と19時に更新します。 全12話完結+番外編 「小説家になろう」でも掲載しています。

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

【完結】悪役令嬢のトゥルーロマンスは断罪から☆

白雨 音
恋愛
『生まれ変る順番を待つか、断罪直前の悪役令嬢の人生を代わって生きるか』 女神に選択を迫られた時、迷わずに悪役令嬢の人生を選んだ。 それは、その世界が、前世のお気に入り乙女ゲームの世界観にあり、 愛すべき推し…ヒロインの義兄、イレールが居たからだ! 彼に会いたい一心で、途中転生させて貰った人生、あなたへの愛に生きます! 異世界に途中転生した悪役令嬢ヴィオレットがハッピーエンドを目指します☆  《完結しました》

【完結】攻略を諦めたら騎士様に溺愛されました。悪役でも幸せになれますか?

うり北 うりこ@ざまされ書籍化決定
恋愛
メイリーンは、大好きな乙女ゲームに転生をした。しかも、ヒロインだ。これは、推しの王子様との恋愛も夢じゃない! そう意気込んで学園に入学してみれば、王子様は悪役令嬢のローズリンゼットに夢中。しかも、悪役令嬢はおかめのお面をつけている。 これは、巷で流行りの悪役令嬢が主人公、ヒロインが悪役展開なのでは? 命一番なので、攻略を諦めたら騎士様の溺愛が待っていた。

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。 思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。 何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

処理中です...