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11 竜に乗った魔法使い①
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「なんだか……妙に浮かない顔をしているね」
なんと、私が居た寮の屋上に居るとんがり屋根に竜は爪を立てて留まり、竜に乗っていた男性は颯爽と飛び降りた。
黒いローブは長くて、まるでマントのように風で翻った。
「……こんばんは」
ここで自分が何を言うべきかと考えた時に、一番無難な時間帯に合った挨拶を口にしてしまった。他に何か名案ある人は、どうか提案して欲しい。
「こんばんは。もしかして、何か悩み事でもあるの? たった一人で……こんな場所で」
深い森の中にある大きな城館の中、アクィラ魔法学園の高等部の女子寮は、張り出した東館の奥まった場所にある。
私はあまり人が来ることのない屋上に居た。
この場所のひと気のなさなのなら、学園一番と言えると思う。
「……貴方は、誰なんですか?」
私が今非常に悩んでいることは、かなりセンシティブと言えて、多くの人の命を左右してしまう問題なのだ。
初対面の人がそれを知るわけもないけど、強い警戒心を込めてそう言えば、彼はにこにこと安心させるような笑顔で言った。
「偶然にここを通りがかった、旅の者だよ。あれは、俺の使い魔のレライエ。君が俺らについて、何か言っていると言い出したのは、あいつだ。誰かに狙われることを防ぐため、自分たちに関する会話は、ある程度の距離の範囲は聞こえるようになっている」
そう言って、彼はこちらに視線を向けている夜の黒に浮き上がる白竜を指差した。
……やっぱり、竜を使い魔に出来るなんて、私と変わらないくらい若く見えるのにすごい。
それに、竜に私のさっきの呟き声が聞こえた?
彼らは高く上空を飛んでいて、ここに居る私とはかなりの距離が離れていたのに……魔力が強い竜ほどの使い魔だと、こんなことも簡単に出来てしまうんだわ。
そんな経緯でやって来た彼をまじまじと見ると、さらりとした真っ直ぐな黒髪を、夜風になびかせた美青年だった。目は珍しい紫色で、それは興味津々できらきらと輝く好奇心に満ち溢れていた。
単なる旅人と言うには、かなり良い身なりをしているように見える。けど、竜を使い魔に出来るほどに魔力が強い魔法使いならば、良い職にだって就いているだろうし、とてもお金持ちなのかもしれない。
……竜に乗って、世界を旅して、回っているのかな……きっと美味しい物も食べ放題だよね。すごく羨ましい。
もう二度と会うこともない人なのなら、別にここで変な女だと思われても構わないかもしれない。魔法界って日本での距離感で言うと、信じられないほどに本当に広いし、偶然にここに来ただけだと言うのなら、変な妄想癖の女によくわからない相談受けたって思うだけかもしれない。
「あの……このままだと、魔法界が終わってしまうの」
私だって、変なことを言っている自覚はあった。
どうせ、こんな事を言っても信じないだろうって思ったし、何か変なことを言い出したぞと、ここでくるりと振り返り、名前も知らない彼は無言で行ってしまうかもしれないなって想像していた。
「へえ……それは、放っておけない。由々しき大問題だね。良かったら、僕に詳しく聞かせてよ」
彼は興味津々で呟き私へ近づくと、座ったままの私の隣へ、するりと軽い動作で腰掛けた。覗き込んだ顔が初対面の人とは思えずとても近いので、私は慌てて後ろへと身体がのけぞらせた。
なんと、私が居た寮の屋上に居るとんがり屋根に竜は爪を立てて留まり、竜に乗っていた男性は颯爽と飛び降りた。
黒いローブは長くて、まるでマントのように風で翻った。
「……こんばんは」
ここで自分が何を言うべきかと考えた時に、一番無難な時間帯に合った挨拶を口にしてしまった。他に何か名案ある人は、どうか提案して欲しい。
「こんばんは。もしかして、何か悩み事でもあるの? たった一人で……こんな場所で」
深い森の中にある大きな城館の中、アクィラ魔法学園の高等部の女子寮は、張り出した東館の奥まった場所にある。
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初対面の人がそれを知るわけもないけど、強い警戒心を込めてそう言えば、彼はにこにこと安心させるような笑顔で言った。
「偶然にここを通りがかった、旅の者だよ。あれは、俺の使い魔のレライエ。君が俺らについて、何か言っていると言い出したのは、あいつだ。誰かに狙われることを防ぐため、自分たちに関する会話は、ある程度の距離の範囲は聞こえるようになっている」
そう言って、彼はこちらに視線を向けている夜の黒に浮き上がる白竜を指差した。
……やっぱり、竜を使い魔に出来るなんて、私と変わらないくらい若く見えるのにすごい。
それに、竜に私のさっきの呟き声が聞こえた?
彼らは高く上空を飛んでいて、ここに居る私とはかなりの距離が離れていたのに……魔力が強い竜ほどの使い魔だと、こんなことも簡単に出来てしまうんだわ。
そんな経緯でやって来た彼をまじまじと見ると、さらりとした真っ直ぐな黒髪を、夜風になびかせた美青年だった。目は珍しい紫色で、それは興味津々できらきらと輝く好奇心に満ち溢れていた。
単なる旅人と言うには、かなり良い身なりをしているように見える。けど、竜を使い魔に出来るほどに魔力が強い魔法使いならば、良い職にだって就いているだろうし、とてもお金持ちなのかもしれない。
……竜に乗って、世界を旅して、回っているのかな……きっと美味しい物も食べ放題だよね。すごく羨ましい。
もう二度と会うこともない人なのなら、別にここで変な女だと思われても構わないかもしれない。魔法界って日本での距離感で言うと、信じられないほどに本当に広いし、偶然にここに来ただけだと言うのなら、変な妄想癖の女によくわからない相談受けたって思うだけかもしれない。
「あの……このままだと、魔法界が終わってしまうの」
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どうせ、こんな事を言っても信じないだろうって思ったし、何か変なことを言い出したぞと、ここでくるりと振り返り、名前も知らない彼は無言で行ってしまうかもしれないなって想像していた。
「へえ……それは、放っておけない。由々しき大問題だね。良かったら、僕に詳しく聞かせてよ」
彼は興味津々で呟き私へ近づくと、座ったままの私の隣へ、するりと軽い動作で腰掛けた。覗き込んだ顔が初対面の人とは思えずとても近いので、私は慌てて後ろへと身体がのけぞらせた。
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