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02 オープニング②
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本当に衝撃的過ぎて呆然として私が見ている間に、ぼとんと緑色の毛虫が木から道に落ちて、そして、落ちてしまった木の下へとゆっくりとした移動速度で必死で這っていた。
……遅いよー! ここ一番の大事な出番だったのに、何してたの?
私がゲームプレイ中に見ていた通りの展開にならなかった。
あまりの動揺に混乱してしまって、必死で草むらに姿を隠そうとしている毛虫へと心の中で話し掛けてしまう私……落ち着けない自覚はある。
……そうよ。フローラもエルネストも、二人とも、全くお互いを全く認識しない、見事な素通りだった。
あの二人の出会いの、すっごく……大事な場面だったのに……。
私の知っている乙女ゲーム『恋色★魔法学園』は、始まることもなく、今終わってしまったの……?
開始するかもしれないという、大きな期待だけさせてしまい、本当に申し訳ありません。ご愛顧ありがとうございました。乙女ゲーム制作チームの次回作に、ご期待ください!
……みたいな?
なんて……そんな訳に、いかないでしょ! この魔法界に転生してしまった私には、これがこれからも続く現実なのよ。え。嘘でしょう。
……だって!
ヒロインフローラは、まずは最初の関門、生徒会入りを目指して攻略に必要な各パラメーターを上げたり、そこでの数値が足りない場合は敗者復活戦が用意されたりと、特殊条件発生イベントをこなすことになる。
パラメーターが上手く上がり、ひと月後に開催される実力テストで優秀な成績を取ることが出来れば、ほんの数人の学生しかなれない監督生に選ばれることになる。
そして、学年の代表として、生徒会入りすることになる。
生徒会でのイベントはフローラが二年生になってから、各ヒーローへの分岐する前に辿る共通ルートなので、その前にだってヒーローへの好感度が上下するイベントは発生する。
つまり、現在二年生で生徒会長のエルネストから、度々『おい、そこの要注意人物』などと、気になっている様子でちょっかいをかけられることになって、好感度を左右するようなエピソードに繋がっていくはずなのに。
エルネスト以外の攻略対象者だって、生徒会に居るんだから、二人が出会わなければ、これでは何も始まらない……よね?
二人がもう去ってしまった桜並木には、重要なところで遅刻した毛虫も居なくなって、私は取り残された。
ただただ、暖かくなって来た春風にふわりと桜が舞った。
これで、近い未来、花開くはずの恋は、蕾すら芽吹くこともなく、終わってしまった。
……という事で、合っているよね?
……遅いよー! ここ一番の大事な出番だったのに、何してたの?
私がゲームプレイ中に見ていた通りの展開にならなかった。
あまりの動揺に混乱してしまって、必死で草むらに姿を隠そうとしている毛虫へと心の中で話し掛けてしまう私……落ち着けない自覚はある。
……そうよ。フローラもエルネストも、二人とも、全くお互いを全く認識しない、見事な素通りだった。
あの二人の出会いの、すっごく……大事な場面だったのに……。
私の知っている乙女ゲーム『恋色★魔法学園』は、始まることもなく、今終わってしまったの……?
開始するかもしれないという、大きな期待だけさせてしまい、本当に申し訳ありません。ご愛顧ありがとうございました。乙女ゲーム制作チームの次回作に、ご期待ください!
……みたいな?
なんて……そんな訳に、いかないでしょ! この魔法界に転生してしまった私には、これがこれからも続く現実なのよ。え。嘘でしょう。
……だって!
ヒロインフローラは、まずは最初の関門、生徒会入りを目指して攻略に必要な各パラメーターを上げたり、そこでの数値が足りない場合は敗者復活戦が用意されたりと、特殊条件発生イベントをこなすことになる。
パラメーターが上手く上がり、ひと月後に開催される実力テストで優秀な成績を取ることが出来れば、ほんの数人の学生しかなれない監督生に選ばれることになる。
そして、学年の代表として、生徒会入りすることになる。
生徒会でのイベントはフローラが二年生になってから、各ヒーローへの分岐する前に辿る共通ルートなので、その前にだってヒーローへの好感度が上下するイベントは発生する。
つまり、現在二年生で生徒会長のエルネストから、度々『おい、そこの要注意人物』などと、気になっている様子でちょっかいをかけられることになって、好感度を左右するようなエピソードに繋がっていくはずなのに。
エルネスト以外の攻略対象者だって、生徒会に居るんだから、二人が出会わなければ、これでは何も始まらない……よね?
二人がもう去ってしまった桜並木には、重要なところで遅刻した毛虫も居なくなって、私は取り残された。
ただただ、暖かくなって来た春風にふわりと桜が舞った。
これで、近い未来、花開くはずの恋は、蕾すら芽吹くこともなく、終わってしまった。
……という事で、合っているよね?
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