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07 信じられない
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副団長は、間接的に自分と団長のせいで私の婚期が遅れるかもしれないと、男女の熱烈なラブストーリーのみを用意してくれたようだ。
なんだか彼には誤解があるようだけど、美男同士を見ると自動的に妄想してしまう私だって、妄想とリアルの区別くらいつきますよっと。
それはそれで、これはこれ。私だって、いつかは身の丈にあった男性と結婚して子どもを持って……いずれはベッドで眠るようにあの世へと旅立ちたい。
けれど、若い内に素敵な上司二人相手に妄想してしまうことは、割と良くあることだと思う。
だって、絶対に自分には振り向かない人だし。
はーっと大きくため息をついて窓を見れば、もう夜だった。部屋に閉じこもってだらだらしていると、昼夜の感覚や時間の感覚を忘れてしまう。
え。待って。今日って、何曜日だっけ。わからない。やばい。人間失格になってしまう。
もうそろそろ、一月経つし、団長の惚れ薬の効果だってなくなるだろう。
ひと月もこんなことをして、社会復帰、大丈夫かな……ひと月引きこもるだけでもらえる大金は大事だし、あるに越したことはないけど……。
ルドルフ団長……元気にしてるかなぁ……。
あくまで惚れ薬の効果でしかないんだけど。あの人、今私に会うと私の事好きになるんだよなぁ……。
なんだか、夢みたいな話だけど……叶わない夢は、夢のままの方が良い。
だって、惚れ薬で好きになってもらうなんて、何の意味もないからだ。
駄目だ駄目だ。人とも会わずに部屋に閉じこもっていると、暗い方向へと思考は進んでいく。
鬱々としそうになった私は澱んでいる部屋の中の空気を入れ替えようと思い立ち、窓を開けてから何気なく外を見た。
「……え?!」
私はそこで自分が見たものが信じられなくて、慌てて部屋の中へ入り、窓に背中を付けた。
やばい。あれは、団長だった!! この私がルドルフ団長を、見間違うわけが無いもん!!
え。待って。私と目が合っちゃったってことは、惚れ薬の効果が発動してしまったはずで……。
「し、しまった!!」
あわあわと慌ててしまった時、ガンガンと扉を叩く音がしたので、私は扉越しに団長にお引き取り頂くことにした。
「おい! ここを開けろ!!」
「団長!! 私のことを良く思えるかもしれませんが、それは惚れ薬による作用です!! その気持ちは間違いなので、お早くお帰りください!!」
「なんで……お前が俺の気持ちを間違いだと、判断するんだよ!」
「とにかく、落ち着いてください! 我に返ったら、絶対に後悔します! どうか、帰ってくださいー!!」
私はそう言い放つと玄関にはがっちりと鍵を掛け、寝室の鍵も閉めた。
両手で耳を塞いで蹲っていたら、扉を叩く音もなくなった。
「夜なのに。近所から苦情来る……もう……信じられない」
なんだか彼には誤解があるようだけど、美男同士を見ると自動的に妄想してしまう私だって、妄想とリアルの区別くらいつきますよっと。
それはそれで、これはこれ。私だって、いつかは身の丈にあった男性と結婚して子どもを持って……いずれはベッドで眠るようにあの世へと旅立ちたい。
けれど、若い内に素敵な上司二人相手に妄想してしまうことは、割と良くあることだと思う。
だって、絶対に自分には振り向かない人だし。
はーっと大きくため息をついて窓を見れば、もう夜だった。部屋に閉じこもってだらだらしていると、昼夜の感覚や時間の感覚を忘れてしまう。
え。待って。今日って、何曜日だっけ。わからない。やばい。人間失格になってしまう。
もうそろそろ、一月経つし、団長の惚れ薬の効果だってなくなるだろう。
ひと月もこんなことをして、社会復帰、大丈夫かな……ひと月引きこもるだけでもらえる大金は大事だし、あるに越したことはないけど……。
ルドルフ団長……元気にしてるかなぁ……。
あくまで惚れ薬の効果でしかないんだけど。あの人、今私に会うと私の事好きになるんだよなぁ……。
なんだか、夢みたいな話だけど……叶わない夢は、夢のままの方が良い。
だって、惚れ薬で好きになってもらうなんて、何の意味もないからだ。
駄目だ駄目だ。人とも会わずに部屋に閉じこもっていると、暗い方向へと思考は進んでいく。
鬱々としそうになった私は澱んでいる部屋の中の空気を入れ替えようと思い立ち、窓を開けてから何気なく外を見た。
「……え?!」
私はそこで自分が見たものが信じられなくて、慌てて部屋の中へ入り、窓に背中を付けた。
やばい。あれは、団長だった!! この私がルドルフ団長を、見間違うわけが無いもん!!
え。待って。私と目が合っちゃったってことは、惚れ薬の効果が発動してしまったはずで……。
「し、しまった!!」
あわあわと慌ててしまった時、ガンガンと扉を叩く音がしたので、私は扉越しに団長にお引き取り頂くことにした。
「おい! ここを開けろ!!」
「団長!! 私のことを良く思えるかもしれませんが、それは惚れ薬による作用です!! その気持ちは間違いなので、お早くお帰りください!!」
「なんで……お前が俺の気持ちを間違いだと、判断するんだよ!」
「とにかく、落ち着いてください! 我に返ったら、絶対に後悔します! どうか、帰ってくださいー!!」
私はそう言い放つと玄関にはがっちりと鍵を掛け、寝室の鍵も閉めた。
両手で耳を塞いで蹲っていたら、扉を叩く音もなくなった。
「夜なのに。近所から苦情来る……もう……信じられない」
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