重いと言われても、止められないこの想い。~素敵過ぎる黒獅子騎士団長様への言い尽くせぬ愛~

待鳥園子

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63 振り③

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「それは我が国で、獣人の研究をしている者どもが欲しがっている」

「……獣人の研究ですって? もしかして……」

 私はその時、あの謎の盗賊団がわかった気がしていた。獣人たちの能力を研究し、その上で利用しようとしているから……だから、あんな不完全な獣化をした人たちが居たんだ!

「さあ。アリエル姫が何を思いついたかは、それはわからないが……黒獅子は無理だ。引き渡す先が決まっている」

 淡々とそう言ったルイ様には、とりつく島もないようだ。

 デュークを、研究材料にするですって?

 殺される方がマシなような目に遭わされることがわかっている場所へ連れて行かれるなんて、

「……では、私はここで死ぬわ。人が大勢死ぬ戦争の発端になるのは嫌だけど……それも、仕方ないわね」

 私が居ないとなれば、ユンカナン王国は何も遠慮することなく、ダムギュア王国を焼け野原にしてしまうだろう。

「そんなにも俺の事が好きな人を残して、寝ていられませんね」

 意識を失っていたと思っていたのに、むくりと起き上がったデュークに、私は驚き過ぎて悲鳴をあげてしまった。

「起きてたの!? 寝たふりするなんて、ばかばかばかばか」

 私はあまりの驚きに、咄嗟に子どもっぽい事しか言えなかった。

「ははは。すみません。姫が思っているよりも、割と賢いっすよ」

 軽口を叩いていたデュークは彼が起き上がり形勢が悪いとみたのか、さっさと逃げ去っていくルイ様一行を追い掛けて、簡単に昏倒させてしまっていた。

 そして、捕らえられていた私の護衛騎士たちを解放して、彼らと協力して、縄で縛っていた。

 ああ……なんだかわからないけれど……助かった……? よね。

 私は部屋の中に居たんだけど、部屋の中にある死体が怖くて外で作業していたデュークに近付いた。

「デューク」

「姫。すみません。放って置いてしまって。あそこがとりあえず安全だったもんで。もう安全っすよ。ここは……城から離れた一軒家のようですね」

 私も彼に言われて、外を見ていた。今は朝になっているようで、ダムギュア王国の企んだことと言うよりも、個人的な恨みを持つ王太子一人の暴走の結果のようだ。

「……俺は姫のために、自分を抑えられるようになりました。ありがとうございます」

「え? どういうこと?」

 私の肩を抱いて、外へと歩きながら、デュークは苦笑した。

「俺は幼い頃から、怒ると手が付けられなくなるんす。けど、今は番と自分が定めた姫を傷付けてしまうことを、本能で恐れるようになりました。だから、もう……大丈夫っす」

「番……? 私って、番なの!?」

「むしろ、なんだと思ってたんすか……」

 獣人は番を定めたら、一生番を愛するのだ。それを知っていた私は、こんなにも殺伐とした現場で一人だけ嬉しそうな顔を隠せなかった。
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