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45 発情★①
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はじめはデュークの冷たい唇はお行儀良く、私の唇に当たっていただけだった。
けど、すぐに濡れた舌が唇をこじ開けるようにして、乱暴に口中へと入って来た。私が何かを言おうとした瞬間に、吸い上げられるように舌同士を擦り合わせるような情熱的な動きをした。
あっという間に絡め取られた舌は、私と目を合わせたままのデュークの思うがままに囚われてしまった。本能的に抜け出そうとしてもがいたつもりだけど、逆に呼吸をしようと必死に舌が動いてそれはただ快感を増すだけの抵抗に終わってしまったみたい。
まるで挑むように向けられたデュークの真っ黒な目には、激しい感情が灯って揺れる。私の何もかもを食い尽くしたいと渇望するような、飢えたようなその瞳に吸い込まれそうだった。
「はあっ……はあっ……」
唇を離した途端に、私はやっと空気が吸えて荒い息をついた。そんな私の顔をしげしげと見て、デュークは悪い顔で笑った。それがまたなんとも魅力的なのは、本当に罪に問うべきだと思う。
罪状は、女性を虜にしてしまう無邪気な笑顔を振りまいた件について。
「姫って、やっぱりキスも初めて? そりゃそうか。もし、姫を狙って近付いたら、殿下たちに簡単に殺されてしまう。俺が許された理由は、姫が望んだからだ」
「何、言ってるの? デューク。お兄様たちは、そんな理由で人を殺したりしないと思うわ」
確かにデュークが言う通り私の兄たちは、ただ一人の妹のことをやたらと溺愛する傾向にはある。けど、それは生まれてすぐに私が、母を亡くしてしまったからで、彼らはその代わりをしてくれようとしただけだ。
きっと赤くなっている私の顔を見つめていたデュークは、それを聞いて苦笑した。
「うーん。姫は大事にされて来たから、わかんないか。身体的には生きてても、人を殺す方法なんていくらでもあるよ。心を殺す、それまで生きて来た道を全て閉ざす……全てを奪い、悲しみの底へと叩き落とす」
「ひゃっ……」
彼の言葉に聞き入っていた私はデュークにいきなり首元を噛まれて、思わず高い声を上げた。別に噛まれたことが痛い訳でもない。優しい甘噛みだというのに、彼からの欲望を直接的に感じた。
「ねー……姫。これって破いて良い?」
大きく開いていた胸元に指を差し入れて、デュークは甘えるようにして言った。
これまでに獅子獣人の男性に嵌ってしまった、数多くの女性の気持ちがわかる。おそらく獅子獣人の男性は甘えるのも上手く「私が働いて養ってでも、彼と結婚したい!」と思わせるのが、きっと上手いのだ。
とりあえずデュークには私が降嫁する際には、十分な持参金を持って来るので、何の問題もないからどうか安心してと言いたい。
けれど、そんな話は今はしていなかった。私の答えを待っている様子のデュークに、慌てて口を開いた。
「えっ。このドレスを? ダメ。これは、私のお気に入りなのよ。デュークに会えると思って、着て来たのに」
「そっかー……じゃあ、仕方ない。脱がす」
仕方なさそうに彼はそう言って、軽い動作で私の身体をくるりとうつ伏せにすると、腰のあたりにあるリボンを解き始めた。
しゅるしゅるとした衣擦れの音を聞き、怒涛のように雪崩れ込む状況に一旦時間を置かれた私は、少しだけ冷静になり現実感を取り戻して来た。
「ねえ。デューク。私と結婚してくれるの?」
そうなのだ。私がいくら奥手とは言え、そういう教育はあったので閨の知識はそれなりにあった。デュークとこういったことをしてしまえば、もう由緒正しき家には嫁げなくなってしまう。
うつ伏せの状態で顔は見れないけど、デュークは喉を鳴らして笑ったようだ。
「俺も流石に。ここまで来たら、逃げない。爵位を持つのは、面倒そうだけど……姫は? 俺で良いの?」
「良い! 嬉しい……デュークと結婚出来るんだ……」
服を取り払った背中に、ひやっとした空気が触れたのを感じた。
今日私が着ているドレスは、移動用のものなのでそこまで仰々しいものではない。そして、リボンを解かれたドレスは下から一気に引き抜かれた。
「俺も嬉しい。もう、我慢しなくて良いし」
デュークは私を背中から抱き締めると、首辺りをまた噛んだ。
今回は赤く痕が付きそうなくらいに、少し強めに。ちなみに、私はドレスと共に薄い下着も脱がされたし、彼は獣化してそのままなので裸。
肌と肌が触れ合い、お互いの熱が混じり合うという不思議な感覚。デュークの硬い手のひらが、私の身体をゆっくりとまさぐり始めた。
けど、すぐに濡れた舌が唇をこじ開けるようにして、乱暴に口中へと入って来た。私が何かを言おうとした瞬間に、吸い上げられるように舌同士を擦り合わせるような情熱的な動きをした。
あっという間に絡め取られた舌は、私と目を合わせたままのデュークの思うがままに囚われてしまった。本能的に抜け出そうとしてもがいたつもりだけど、逆に呼吸をしようと必死に舌が動いてそれはただ快感を増すだけの抵抗に終わってしまったみたい。
まるで挑むように向けられたデュークの真っ黒な目には、激しい感情が灯って揺れる。私の何もかもを食い尽くしたいと渇望するような、飢えたようなその瞳に吸い込まれそうだった。
「はあっ……はあっ……」
唇を離した途端に、私はやっと空気が吸えて荒い息をついた。そんな私の顔をしげしげと見て、デュークは悪い顔で笑った。それがまたなんとも魅力的なのは、本当に罪に問うべきだと思う。
罪状は、女性を虜にしてしまう無邪気な笑顔を振りまいた件について。
「姫って、やっぱりキスも初めて? そりゃそうか。もし、姫を狙って近付いたら、殿下たちに簡単に殺されてしまう。俺が許された理由は、姫が望んだからだ」
「何、言ってるの? デューク。お兄様たちは、そんな理由で人を殺したりしないと思うわ」
確かにデュークが言う通り私の兄たちは、ただ一人の妹のことをやたらと溺愛する傾向にはある。けど、それは生まれてすぐに私が、母を亡くしてしまったからで、彼らはその代わりをしてくれようとしただけだ。
きっと赤くなっている私の顔を見つめていたデュークは、それを聞いて苦笑した。
「うーん。姫は大事にされて来たから、わかんないか。身体的には生きてても、人を殺す方法なんていくらでもあるよ。心を殺す、それまで生きて来た道を全て閉ざす……全てを奪い、悲しみの底へと叩き落とす」
「ひゃっ……」
彼の言葉に聞き入っていた私はデュークにいきなり首元を噛まれて、思わず高い声を上げた。別に噛まれたことが痛い訳でもない。優しい甘噛みだというのに、彼からの欲望を直接的に感じた。
「ねー……姫。これって破いて良い?」
大きく開いていた胸元に指を差し入れて、デュークは甘えるようにして言った。
これまでに獅子獣人の男性に嵌ってしまった、数多くの女性の気持ちがわかる。おそらく獅子獣人の男性は甘えるのも上手く「私が働いて養ってでも、彼と結婚したい!」と思わせるのが、きっと上手いのだ。
とりあえずデュークには私が降嫁する際には、十分な持参金を持って来るので、何の問題もないからどうか安心してと言いたい。
けれど、そんな話は今はしていなかった。私の答えを待っている様子のデュークに、慌てて口を開いた。
「えっ。このドレスを? ダメ。これは、私のお気に入りなのよ。デュークに会えると思って、着て来たのに」
「そっかー……じゃあ、仕方ない。脱がす」
仕方なさそうに彼はそう言って、軽い動作で私の身体をくるりとうつ伏せにすると、腰のあたりにあるリボンを解き始めた。
しゅるしゅるとした衣擦れの音を聞き、怒涛のように雪崩れ込む状況に一旦時間を置かれた私は、少しだけ冷静になり現実感を取り戻して来た。
「ねえ。デューク。私と結婚してくれるの?」
そうなのだ。私がいくら奥手とは言え、そういう教育はあったので閨の知識はそれなりにあった。デュークとこういったことをしてしまえば、もう由緒正しき家には嫁げなくなってしまう。
うつ伏せの状態で顔は見れないけど、デュークは喉を鳴らして笑ったようだ。
「俺も流石に。ここまで来たら、逃げない。爵位を持つのは、面倒そうだけど……姫は? 俺で良いの?」
「良い! 嬉しい……デュークと結婚出来るんだ……」
服を取り払った背中に、ひやっとした空気が触れたのを感じた。
今日私が着ているドレスは、移動用のものなのでそこまで仰々しいものではない。そして、リボンを解かれたドレスは下から一気に引き抜かれた。
「俺も嬉しい。もう、我慢しなくて良いし」
デュークは私を背中から抱き締めると、首辺りをまた噛んだ。
今回は赤く痕が付きそうなくらいに、少し強めに。ちなみに、私はドレスと共に薄い下着も脱がされたし、彼は獣化してそのままなので裸。
肌と肌が触れ合い、お互いの熱が混じり合うという不思議な感覚。デュークの硬い手のひらが、私の身体をゆっくりとまさぐり始めた。
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