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32 運命の番①
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デュークは闘技大会の優勝者として会場全体に紹介されて、彼らしくやる気なさそうにではあったものの、きっちりとしたお辞儀をした。
見る人が見れば眉を顰めてしまうような、そんなふざけた態度なのかもしれない。
けれど、普通なら人の多さを見ただけで緊張してしまうようなこんな場所でも、そういう余裕を見せてしまうところも好き。
デュークが属する獣騎士団の騎士服は、光沢のある灰色だ。
それが誰よりもよく似合っていいるように見えてしまうのは、私が素敵すぎる騎士団長様のことが好きだからだけでは、絶対にないと思う。
私は頃合いを見て優雅に見える程度の速さで、デュークの元へと近寄った。
彼はいつもの事だから私が来ても驚きもしないし、周囲の着飾った貴族たちも心得ていてそれとなく居なくなる。
これは、いつものことだった。
「デューク! 優勝おめでとう! とってもとっても、格好良かったわ」
「……ありがとうございます。なんか……今日は、いつにも増して、かわいっすね。いや、お美しい……? すみません。ここが姫を褒めるところなのは、俺もわかってはいるんですけど……」
デュークが貴族が当然のように口にする社交辞令を苦手なことを知っている私は、首を横に振ってから微笑んだ。
「ううん。言葉は、なんだって構わないの。私を褒めてくれて、ありがとう……この生地どうかしら? 獣化したデュークの黒い毛に良く似ているでしょう?」
私がドレスの裾を持ち上げれば、彼は首を傾げて苦笑した。
「俺の毛はこんなに……綺麗な黒ですかね。姫の目からそう見えるのであれば、ありがとうございます」
「ねえ。踊らない? せっかくだから……」
私が踊りに誘えば身分の問題で、デュークは断れない。それがわかりながらも、彼にこう言ってしまう。
私は本当に、自分勝手な王族だ。
「……喜んでお相手します。お誘いして下さって、ありがとうございます」
騎士学校では、ダンスは必須授業だったはずだ。
出自は貴族だけではないし、手柄を立てた騎士となれば、こうした上流階級の夜会にも出席することは十分に予想出来た。
私は既に何度かデュークと踊ったことがある。エスコートはぎこちないけれど、元々の運動神経が良いから、とても踊りやすいのだ。
見る人が見れば眉を顰めてしまうような、そんなふざけた態度なのかもしれない。
けれど、普通なら人の多さを見ただけで緊張してしまうようなこんな場所でも、そういう余裕を見せてしまうところも好き。
デュークが属する獣騎士団の騎士服は、光沢のある灰色だ。
それが誰よりもよく似合っていいるように見えてしまうのは、私が素敵すぎる騎士団長様のことが好きだからだけでは、絶対にないと思う。
私は頃合いを見て優雅に見える程度の速さで、デュークの元へと近寄った。
彼はいつもの事だから私が来ても驚きもしないし、周囲の着飾った貴族たちも心得ていてそれとなく居なくなる。
これは、いつものことだった。
「デューク! 優勝おめでとう! とってもとっても、格好良かったわ」
「……ありがとうございます。なんか……今日は、いつにも増して、かわいっすね。いや、お美しい……? すみません。ここが姫を褒めるところなのは、俺もわかってはいるんですけど……」
デュークが貴族が当然のように口にする社交辞令を苦手なことを知っている私は、首を横に振ってから微笑んだ。
「ううん。言葉は、なんだって構わないの。私を褒めてくれて、ありがとう……この生地どうかしら? 獣化したデュークの黒い毛に良く似ているでしょう?」
私がドレスの裾を持ち上げれば、彼は首を傾げて苦笑した。
「俺の毛はこんなに……綺麗な黒ですかね。姫の目からそう見えるのであれば、ありがとうございます」
「ねえ。踊らない? せっかくだから……」
私が踊りに誘えば身分の問題で、デュークは断れない。それがわかりながらも、彼にこう言ってしまう。
私は本当に、自分勝手な王族だ。
「……喜んでお相手します。お誘いして下さって、ありがとうございます」
騎士学校では、ダンスは必須授業だったはずだ。
出自は貴族だけではないし、手柄を立てた騎士となれば、こうした上流階級の夜会にも出席することは十分に予想出来た。
私は既に何度かデュークと踊ったことがある。エスコートはぎこちないけれど、元々の運動神経が良いから、とても踊りやすいのだ。
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