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15 別問題①

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 最近はお忍びをすることもなく、久しぶりに見たユンカナン王国王都は、とても賑わっていた。

 大通りの人波のせいで、とても広い道が見えないほど。

 私はまだ王族として課せられた義務を、成し遂げれてはいないけど……ユンカナン王国国民すべてが飢えることなく、自分の生活が豊かで日々笑顔であれば良いと願う。

 我が国ユンカナン王国は、建国当初は貧しくてとても大変だったらしい。

 王都がここまでに多くの人を集め栄え、今この目に見える国民が普通の生活を送られているのも、すべて長年この国を守り支えてくれた先人たちの努力の賜物だ。

 彼らの子孫である私はそんな彼らに愛され生かされていることを、決して忘れてはならない。王都で生き生きとした人たちを見るたびに、私はそう感じていた。

 国民たちが笑顔のまま誰にも脅かされることがないように、先祖と同じようにこの国を守りたいって。

 そして、本日のお忍びは、特例中の特例だった。

 これまではお忍びとは言え、王族の一人の私の行く先は何度も慎重に検討されて調査されていた。

 そして、決められたルートに沿って動き、気まぐれや例外などは許されなかった。

 何故かと言うと、二年前悪戯心を出して護衛から逃げ出した私が危ない目に遭いそうだったことが今になっても尾を引いているからだ。

 ええ。そうなの。不便な処遇は、すべては、私の自業自得なんです。

 けど、今回は王族の警備責任者になれるぐらい地位も高く強さも折り紙付きのデュークがすぐ傍に居た。

 警備責任者だから当たり前なのだけど、彼さえ良いと頷けば、私は行きたい場所へと行かせて貰えた。

 しかも、私の正体を知らせてしまう訳にはいかないので、わかりにくく周囲を固める部下に小声で指示を出すデュークが格好良くて仕方ない。

「……姫。俺のこと、本当に好きっすね」

「あら。それは、確かにその通りだけど。どうして、今それを言うの」

 確かにそう。でなければ、彼を守ろうと動いたりしないもの。

「さっきから姫の視線で顔に穴が開きそうなくらい、ずっと見られてるんで。なんだか、怖いっす」

 私は普通にしていたつもりだったんだけど、彼から見ればそうだったかと、慌ててデュークから目を逸らした。

 せっかくのお忍びの日だと言うのに、私はデュークしか見ていなかったことに、その時ようやく気がついた。

 視線を向けた目に入る王都の大通りは、所狭しと人で溢れていた。人が集まり、街が栄える。

 それは、お父様である現王の政り事が、上手く機能しているという非常に喜ばしい証拠っだった。

 けど、こうして久々に街に遊びに来ているのに、珍しい私服のデュークばかり見ていた。

 本当に……もう私はデュークが好き過ぎて、彼が言っていたようにどこかがおかしくなっているのかもしれない。

「不快にさせて、ごめんなさい……だって、デュークと長時間一緒に居られることって、私にはあまりないから」

 怖いと言われて流石に落ち込みしゅんとして肩を落としたら、これは言い過ぎたと彼は思ったのかもしれない。

 デュークは私の右肩へと大きな手を置いた。

「……いや、俺が少し言い過ぎました。すみません。けど、俺の顔を見るんなら、城でも出来るんで……せっかく来たんで、街歩きを楽しんでくださいよ」

「ええ。そうだったわ。デュークの言う通りよね……えっ!」

 私は彼の言葉に答えつつ目の前の光景を見てから、すぐに走り出した。

 だって、その瞬間にはもう既に一刻の猶予も許されず、すぐ隣に居たデュークと相談しようという気も起こらないくらいに、状況は逼迫して差し迫っていたからだ。

 小さな男の子が走っている馬車の前に飛び出し、跳ねられる直前だった。

 私は男の子の身体に向けて、懸命に手を伸ばした。なんとか、彼の小さな手をぎゅっと握った。

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