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13 裏切り者①

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「ねえ。デューク……私。お忍びで、街歩きに行きたいんだけど。良かったら付いて来て貰えないかしら?」

 この前、私の宮で昼寝をしていたデュークは愛を受け取ってくれはしないものの、私のことをそう悪くは思っていないはずだと知った。

 だから、思い切って王都へのお忍びに一緒に行ってもらえないかと、直接お願いすることにした。

 そして、彼が忘れてしまっている二年前の記憶も、それをきっかけにして思い出したりしないかないう、そういう下心なんかも込めた期待なども込めて。

「俺。忙しいんで、無理っす」

 書類を読んでいたらしいデュークに、私のお願いは何の躊躇もなくすげなく断られてしまった。

 意中の男性に誘いを断られるという傷を心に負ってしまったものの、これで諦めてしまっていたら、これまでデュークと一緒に居られる訳もない。

「お願いお願いお願い」

 両手をぎゅっと握り締めて彼を見つめれば、強い想いを込めた視線の効果なのか、ようやく彼はこっちを見てくれた。

「俺。色々と忙しいんすよ。姫は知らないと思うんすけど。代わりに、マティアスではダメなんすか」

 隣に立っていた猫っぽい吊り目を持つマティアスをチラッと見れば、上司に代理で名指しをされた彼は無表情で目を細め、裁判官が判決を下す時のように淡々と言った。

「姫様。団長のスケジュールでしたら、とても珍しいことに、半日ほど空いておりますよ。とてもお強い団長と一緒に居れば大丈夫だとは思いますが、どうぞ気をつけていってらっしゃいませ」

「……裏切者が」

 いつもより低い声でデュークが批難しても上司の脅すような声には慣れているのか白猫獣人マティアスは、平然として肩を竦めた。

「何を言っているんですか。仕事だと言うのに、可愛いお姫様と、街でデート出来るんですよ。役得ですよ。お洒落して張り切って行って来て下さい。という訳で、姫様。何時に何処に待ち合わせをすればよろしいですかね?」


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