重いと言われても、止められないこの想い。~素敵過ぎる黒獅子騎士団長様への言い尽くせぬ愛~

待鳥園子

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11 想いが重い①

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「……姫。起きるっす」

「ん……」

 目を開いた瞬間に驚きのあまり悲鳴を叫びそうになった私は、慌てて両手で口を塞いだ。

 美しくて大きな黒い獅子の顔が、私を黒曜石のような大きな目で見つめていたからだ。

 私が眠ってしまう前に寝顔を見ていたあの人の獣型で、間違えていない……と思う。

「……デュークなの?」

「ええ。姫。その通り、俺っす。なんで、一緒に姫が寝てるんすか。俺は自分の執務室にまで戻るの面倒だったから、夕方の会議の時間まで時間潰ししようとしただけっすよ」

 とても呆れた黒獅子の低い声は、いつもより少々くぐもっては聞こえているものの確かに人の言葉を話している。

 私が思った通りにこの黒獅子がデュークが獣化した後の姿だ。

————-なんて、美しいの。

 通常な獅子の毛は金色だし、百獣の王の名に相応しい勇壮な姿は画家にも好まれて有名な絵画にも良く描かれている。

 けれど、今のデュークの姿は、まるで明るい光を吸い込むような漆黒の毛を持つ獣だった。

 デュークは私が想像していた以上に、素晴らしい別の姿を持っていた。

「……それって、デュークがお仕事をサボってた訳ではないの?」

「そういう訳じゃないですって。だから、次の会議までの必要な時間潰しっす。城の会議室から、俺の執務室まで遠過ぎるんすよ。立場の近い同僚と同じように、その辺の部屋でお茶でも飲んで、近隣国の政治について語らうと思います?」

「あら。それならば、薔薇の離宮に、貴方の執務室を移すようにお願いしましょうか?」

「それは、誠に光栄ながら、謹んで遠慮するっす。ところで、姫」

「え? 何。デューク」

 私はその時、デュークの手触りの良さそうな艶やかな黒い毛の中に彼が着ていたであろう騎士服が破れているらしい生地を見つけた。

 私には良くわからないけど、服を脱ぐ間もなく彼は何かの理由があって慌てて獣化をしてしまったのかもしれない。

「……俺が、怖くないんすか」

 言いづらそうに言ったデュークの言葉を聞いて、私には彼が何を気にしているのかと、すごく不思議になった。

「どうして。こんなにも美しい姿をしている獣を、怖いと思うの? 私はちっとも怖くないわ。それに……だって、どんな姿でも中身はデュークだもの」

「俺の本当の姿は、こうした恐ろしい肉食獣です。姫のことを、この牙で引き裂いて食い殺すことだって……簡単に出来んすよ」

 まるで自分は凄く危険なのだということを表すように、私を脅かす意図でか低い唸り声をあげた。

 それすらも可愛く思えて、つい笑い声をあげてしまった。

「ふふ。そうね。それでは、私はデュークになら食べられても構わないわ」

 微笑んだ私はあくまで自分なりの面白い冗談を言ったつもりだったんだけど、獣の姿なのに見るからに引いて困った様子を見せているデュークとは、心の距離がかなり開いてしまったようだった。

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