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07 香り
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「何を言う。僕とミゼルが……こうして距離が近付いたのは、ヴィクトリアと婚約破棄してからだ」
わかりやすく目を逸らしたチャールズに、ナザイレはくくっとくぐもった笑いを漏らした。
「ですが、公爵令嬢に呪いを掛けた件は詳しく調査する必要があるようです。おい。あの女を地下牢へ」
ナザイレは後ろに控えていた部下の騎士たちに命令をし、ミゼルを捕える為に彼らは動き出した。
「なっ……なんですって!」
今まで余裕の表情だったミゼルは、慌てて立ち上がった。
「落ち着け。ミゼル。そのような言いがかりのようなよく分からぬ容疑、すぐに晴れる。終わったら、直々に迎えに行こう」
チャールズは私がナザイレと共に居て、彼らが調査すると言うならば従うべきと判断したのか、ミゼルに宥めるように言った。
「やっ……止めて……チャールズ様ぁ……私、何もしてないんです! 地下牢なんて、行きたくないー!!」
騎士たちに取り囲まれ、絶望の表情でみっともない程に泣き喚くミゼルを見て、私はほっと息をついた。良かった。彼女が私に何かをしている事がわかれば、全ての容疑は晴れて失った名誉も取り戻せるかもしれない。
「……チャールズ殿下。お気分は、どうですか?」
「気分? 気分……? いや、何だろう。変な気分だ」
チャールズはナザイレの問いに不思議そうな表情を浮かべ、頭を押さえていた。
「あの女からは、甘ったるい匂いがしました。あれが殿下を操っていたかもしれません」
「……なんだと!? ああ、だが……なんだか、頭の中がスッキリするような……」
何度か頭を横に振っていたチャールズを見て、ナザイレは微笑んだ。
「ああ。お助け出来て、良かったです。悪い魔女のような、そんな存在だったのでしょう」
「あっ……ああ。そうか……僕は操られていたのか。ヴィクトリア……すまない」
チャールズが私に近寄ろうとしたので、ナザイレがその前へと立ちはだかった。
「殿下……僕の婚約者に近寄るのは、ご遠慮ください」
「なんだと? しかし、僕が婚約破棄を宣言して、まだ一日も経っていない」
チャールズは戸惑っているようだ。けれど、操られていたとわかっても、私にとってみればミゼルと虐めるなと迫る彼は恐怖の対象だった。
「ですから、求婚しました。ヴィクトリアは、僕と結婚します。既にそう約束しておりますので」
「なんだと? 本当なのか。ヴィクトリア」
私にはまだチャールズとミゼルの事を話せない呪いが発動しているようなので、必死で何度も頷いた。
そんな私を見たチャールズは、とても悲しそうだった。
胸が痛むけれど、そういう約束で助けてもらっているし、チャールズ本人から婚約破棄を宣言された事だって事実だった。
「そう言う事ですので……ヴィクトリアは我が家へ連れ帰ります。彼女に仕える使用人も怪しい。全て調査を終えましたら、陛下と共に殿下にも報告を」
騎士として跪いたナザイレはそう言い、両手で頭を押さえていたチャールズは一言だけ「わかった」と呟いた。
わかりやすく目を逸らしたチャールズに、ナザイレはくくっとくぐもった笑いを漏らした。
「ですが、公爵令嬢に呪いを掛けた件は詳しく調査する必要があるようです。おい。あの女を地下牢へ」
ナザイレは後ろに控えていた部下の騎士たちに命令をし、ミゼルを捕える為に彼らは動き出した。
「なっ……なんですって!」
今まで余裕の表情だったミゼルは、慌てて立ち上がった。
「落ち着け。ミゼル。そのような言いがかりのようなよく分からぬ容疑、すぐに晴れる。終わったら、直々に迎えに行こう」
チャールズは私がナザイレと共に居て、彼らが調査すると言うならば従うべきと判断したのか、ミゼルに宥めるように言った。
「やっ……止めて……チャールズ様ぁ……私、何もしてないんです! 地下牢なんて、行きたくないー!!」
騎士たちに取り囲まれ、絶望の表情でみっともない程に泣き喚くミゼルを見て、私はほっと息をついた。良かった。彼女が私に何かをしている事がわかれば、全ての容疑は晴れて失った名誉も取り戻せるかもしれない。
「……チャールズ殿下。お気分は、どうですか?」
「気分? 気分……? いや、何だろう。変な気分だ」
チャールズはナザイレの問いに不思議そうな表情を浮かべ、頭を押さえていた。
「あの女からは、甘ったるい匂いがしました。あれが殿下を操っていたかもしれません」
「……なんだと!? ああ、だが……なんだか、頭の中がスッキリするような……」
何度か頭を横に振っていたチャールズを見て、ナザイレは微笑んだ。
「ああ。お助け出来て、良かったです。悪い魔女のような、そんな存在だったのでしょう」
「あっ……ああ。そうか……僕は操られていたのか。ヴィクトリア……すまない」
チャールズが私に近寄ろうとしたので、ナザイレがその前へと立ちはだかった。
「殿下……僕の婚約者に近寄るのは、ご遠慮ください」
「なんだと? しかし、僕が婚約破棄を宣言して、まだ一日も経っていない」
チャールズは戸惑っているようだ。けれど、操られていたとわかっても、私にとってみればミゼルと虐めるなと迫る彼は恐怖の対象だった。
「ですから、求婚しました。ヴィクトリアは、僕と結婚します。既にそう約束しておりますので」
「なんだと? 本当なのか。ヴィクトリア」
私にはまだチャールズとミゼルの事を話せない呪いが発動しているようなので、必死で何度も頷いた。
そんな私を見たチャールズは、とても悲しそうだった。
胸が痛むけれど、そういう約束で助けてもらっているし、チャールズ本人から婚約破棄を宣言された事だって事実だった。
「そう言う事ですので……ヴィクトリアは我が家へ連れ帰ります。彼女に仕える使用人も怪しい。全て調査を終えましたら、陛下と共に殿下にも報告を」
騎士として跪いたナザイレはそう言い、両手で頭を押さえていたチャールズは一言だけ「わかった」と呟いた。
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