死亡フラグ立ち済悪役令嬢ですけど、ここから助かる方法を教えて欲しい。

待鳥園子

文字の大きさ
上 下
1 / 9

01 断罪

しおりを挟む
「……ヴィクトリア・エインズワース ! 君とは婚約破棄だ!」

 だいぶ前から、幼い頃からの婚約者である第二王子チャールズより、このように婚約破棄されるだろうことは私にだってわかっていた。

 学園内でも密やかに囁かれる、身に覚えのない数々の黒い噂。

 婚約者チャールズとただ話しているだけの何の罪もないご令嬢に嫌がらせを繰り返し、あまつさえ彼女を亡き者にしようと企んだと……。

———ええ。何もかも、全て無実なのですけど。

「何か言いたいことがあるのなら、言ってみろ」

 私は何も言えずに、チャールズ殿下を見た。

 この諦めきった目を見ても真実の愛に酔う彼にしてみれば、この展開が気に入らない女が自分を睨んでいると思っているだろう。

「……この期に及んでここで一言も言い訳もせぬとは、なんという女だ。命を取られようとしていたミゼルが可哀想だ。連れて行け! 刑は追って言い渡す!」

 何かを発言するように促されても無言のままでいた私を睨み、チャールズ殿下は吐き捨てるようにそう言った。

 命令通り二人の兵士が、両側から私の腕を無遠慮に掴んだ。

 そして、振り返るその瞬間、チャールズに腰を抱かれた男爵令嬢ミゼルがニヤリとほくそ笑む表情が見えた。

 ……ああ。思い出した。待って。もしかして、ここは、前世プレイしていた乙女ゲームの世界ではない?

 周囲の人たちの顔も見覚えがあったし、初対面でも名前も聞き覚えがあったはずだわ。

 私は転生した乙女ゲームの世界で記憶を取り戻すことなく、役割としては悪役令嬢として過ごし、誰かを虐めることも破滅させることもなかったけれど、同じように記憶を持っているヒロインに陥れられた?

 嘘でしょう……記憶が戻るなら、もっと早くして欲しかった。

 私が処刑されてしまう死亡フラグは、さっき立ってしまったというのに。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた

菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…? ※他サイトでも掲載中しております。

そのハッピーエンドに物申します!

あや乃
恋愛
社畜OLだった私は過労死後、ガチ恋相手のいる乙女ゲームに推しキャラ、悪役令嬢として異世界転生した。 でも何だか様子が変……何と私が前世を思い出したのは大好きな第一王子が断罪されるざまあの真っ最中!  そんなことはさせない! ここから私がざまあをひっくり返して見せる!  と、転生ほやほやの悪役令嬢が奮闘する(でも裏では王子も相当頑張っていた)お話。 ※「小説家になろう」さまにも掲載中 初投稿作品です。よろしくお願いします!

婚約破棄の、その後は

冬野月子
恋愛
ここが前世で遊んだ乙女ゲームの世界だと思い出したのは、婚約破棄された時だった。 身体も心も傷ついたルーチェは国を出て行くが… 全九話。 「小説家になろう」にも掲載しています。

悪役令嬢は天然

西楓
恋愛
死んだと思ったら乙女ゲームの悪役令嬢に転生⁉︎転生したがゲームの存在を知らず天然に振る舞う悪役令嬢に対し、ゲームだと知っているヒロインは…

悪役令嬢ですが、どうやらずっと好きだったみたいです

朝顔
恋愛
リナリアは前世の記憶を思い出して、頭を悩ませた。 この世界が自分の遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気がついたのだ。 そして、自分はどうやら主人公をいじめて、嫉妬に狂って殺そうとまでする悪役令嬢に転生してしまった。 せっかく生まれ変わった人生で断罪されるなんて絶対嫌。 どうにかして攻略対象である王子から逃げたいけど、なぜだか懐つかれてしまって……。 悪役令嬢の王道?の話を書いてみたくてチャレンジしました。 ざまぁはなく、溺愛甘々なお話です。 なろうにも同時投稿

悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。

倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。 でも、ヒロイン(転生者)がひどい!   彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉ シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり! 私は私の望むままに生きます!! 本編+番外編3作で、40000文字くらいです。 ⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。

悪役令息の婚約者になりまして

どくりんご
恋愛
 婚約者に出逢って一秒。  前世の記憶を思い出した。それと同時にこの世界が小説の中だということに気づいた。  その中で、目の前のこの人は悪役、つまり悪役令息だということも同時にわかった。  彼がヒロインに恋をしてしまうことを知っていても思いは止められない。  この思い、どうすれば良いの?

処理中です...