8 / 17
08 先輩①
しおりを挟む
「うん。僕が考えるに恋愛が下手な君に指導をするという事は、リンゼイを幸せにしたいという動きの表れだよね?」
「そっ……そうなんですかね? 可哀想とは、言われましたけど」
ただ、出来ない子で可哀想だから、同情してくれているだけだと思っていたけれど……。
「うんうん。何が言いたいかと言うと、最初からそれなりにレオナルドが、リンゼイに好意を持っていることは確実だ。僕のところへ来た回数を考えれば、何度失敗しても根気良く付き合ってくれているといったことになるね。そうだろう?」
「そっ……それは、そうです。何度も何度も付き合って頂いて、レオナルド先輩には、大変申し訳ないとは思っているんですけど……」
レオナルドには、悪いとは思っている……思ってはいるけど……。
「うんうん。けど、レオと一緒に居られるから、誤解されていても、何だって嬉しいんだよね。わかるよ。そして、関係を壊してしまえば、もう会えなくなるかもしれないと思うんだよね?」
「……ブルゴーニュ会長って、もしかして、人の心を読むことが出来たりします?」
私は本当に、もしかしたら、そうかもしれないと思った。
だって、ジョヴァンニは私の気持ちを完全にわかってくれているし、言って欲しい言葉だって心得ているのだ。
苦笑したジョヴァンニは、そういえばという表情になった。
「君って、面白いこと言うね。そういえば、名前は……?」
あ。王太子であるほどの人に話しかけると言うのに、名乗ることを忘れてしまっていた私は慌てた。
「はいっ。私はこの前入学した一年生の、リンゼイ・アシュトンです」
とは言え、学年毎に決められたカラーがあるので、私の胸元にあるリボンと靴のソールの色でジョヴァンニは私のことを一年生だとわかってくれていると思う。
「よろしくね。リンゼイ。僕はジョヴァンニで良いよ。学生の間は身分差なく過ごすというように、この学園では決められているからね」
「ジョヴァンニ、殿下……?」
建前は建前ではなるけれど、本人にそうしてくれと言われれば仕方ない。
彼が王族であるならこう呼ぶべきかと思ったら、ジョヴァンニは苦笑して首を横に振った。
「それは、やめてくれ。先輩で良いよ。レオにだって、そうだろう」
「ジョヴァンニ先輩、ですか」
王子様に先輩……なんだか、変な感じだ。学園内では先輩後輩で、それは間違えてはいないんだけど……。
「それで良い。リンゼイ・アシュトン……平民だけれど、聖魔力が認められて、特例で奨学生になった子だね……レオはフォンタナ公爵家の跡取り息子だけど、君ならば問題なく結婚を認められる可能性があるね」
「それは……あの」
もちろん。前世の記憶を持つ私は王家の血を引いているので、彼らとの身分差の問題はいずれ明らかになるし、大丈夫だろうと思っている。
このジョヴァンニだって、言ってしまえば遠い親戚にあたるのだ。
しかし、それは今現在、私が知っていることになってしまうと、ゲーム進行上どうなってしまうかわからず、何をどう言って良いのかと困ってしまった。
身分については問題ないとわかってはいるけれど、何もわからない振りをした方が良いのかと。
「良し……それでは、僕が特別に君に恋愛指導しよう!」
「そっ……そうなんですかね? 可哀想とは、言われましたけど」
ただ、出来ない子で可哀想だから、同情してくれているだけだと思っていたけれど……。
「うんうん。何が言いたいかと言うと、最初からそれなりにレオナルドが、リンゼイに好意を持っていることは確実だ。僕のところへ来た回数を考えれば、何度失敗しても根気良く付き合ってくれているといったことになるね。そうだろう?」
「そっ……それは、そうです。何度も何度も付き合って頂いて、レオナルド先輩には、大変申し訳ないとは思っているんですけど……」
レオナルドには、悪いとは思っている……思ってはいるけど……。
「うんうん。けど、レオと一緒に居られるから、誤解されていても、何だって嬉しいんだよね。わかるよ。そして、関係を壊してしまえば、もう会えなくなるかもしれないと思うんだよね?」
「……ブルゴーニュ会長って、もしかして、人の心を読むことが出来たりします?」
私は本当に、もしかしたら、そうかもしれないと思った。
だって、ジョヴァンニは私の気持ちを完全にわかってくれているし、言って欲しい言葉だって心得ているのだ。
苦笑したジョヴァンニは、そういえばという表情になった。
「君って、面白いこと言うね。そういえば、名前は……?」
あ。王太子であるほどの人に話しかけると言うのに、名乗ることを忘れてしまっていた私は慌てた。
「はいっ。私はこの前入学した一年生の、リンゼイ・アシュトンです」
とは言え、学年毎に決められたカラーがあるので、私の胸元にあるリボンと靴のソールの色でジョヴァンニは私のことを一年生だとわかってくれていると思う。
「よろしくね。リンゼイ。僕はジョヴァンニで良いよ。学生の間は身分差なく過ごすというように、この学園では決められているからね」
「ジョヴァンニ、殿下……?」
建前は建前ではなるけれど、本人にそうしてくれと言われれば仕方ない。
彼が王族であるならこう呼ぶべきかと思ったら、ジョヴァンニは苦笑して首を横に振った。
「それは、やめてくれ。先輩で良いよ。レオにだって、そうだろう」
「ジョヴァンニ先輩、ですか」
王子様に先輩……なんだか、変な感じだ。学園内では先輩後輩で、それは間違えてはいないんだけど……。
「それで良い。リンゼイ・アシュトン……平民だけれど、聖魔力が認められて、特例で奨学生になった子だね……レオはフォンタナ公爵家の跡取り息子だけど、君ならば問題なく結婚を認められる可能性があるね」
「それは……あの」
もちろん。前世の記憶を持つ私は王家の血を引いているので、彼らとの身分差の問題はいずれ明らかになるし、大丈夫だろうと思っている。
このジョヴァンニだって、言ってしまえば遠い親戚にあたるのだ。
しかし、それは今現在、私が知っていることになってしまうと、ゲーム進行上どうなってしまうかわからず、何をどう言って良いのかと困ってしまった。
身分については問題ないとわかってはいるけれど、何もわからない振りをした方が良いのかと。
「良し……それでは、僕が特別に君に恋愛指導しよう!」
72
お気に入りに追加
219
あなたにおすすめの小説
【完結】みそっかす転生王女の婚活
佐倉えび
恋愛
私は幼い頃の言動から変わり者と蔑まれ、他国からも自国からも結婚の申し込みのない、みそっかす王女と呼ばれている。旨味のない小国の第二王女であり、見目もイマイチな上にすでに十九歳という王女としては行き遅れ。残り物感が半端ない。自分のことながらペットショップで売れ残っている仔犬という名の成犬を見たときのような気分になる。
兄はそんな私を厄介払いとばかりに嫁がせようと、今日も婚活パーティーを主催する(適当に)
もう、この国での婚活なんて無理じゃないのかと思い始めたとき、私の目の前に現れたのは――
※小説家になろう様でも掲載しています。
悪役令嬢は婚約破棄したいのに王子から溺愛されています。
白雪みなと
恋愛
この世界は乙女ゲームであると気づいた悪役令嬢ポジションのクリスタル・フェアリィ。
筋書き通りにやらないとどうなるか分かったもんじゃない。それに、貴族社会で生きていける気もしない。
ということで、悪役令嬢として候補に嫌われ、国外追放されるよう頑張るのだったが……。
王子さま、なぜ私を溺愛してらっしゃるのですか?
悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。
【完結】もったいないですわ!乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢は、今日も生徒会活動に勤しむ~経済を回してる?それってただの無駄遣いですわ!~
鬼ヶ咲あちたん
恋愛
内容も知らない乙女ゲームの世界に転生してしまった悪役令嬢は、ヒロインや攻略対象者たちを放って今日も生徒会活動に勤しむ。もったいないおばけは日本人の心! まだ使える物を捨ててしまうなんて、もったいないですわ! 悪役令嬢が取り組む『もったいない革命』に、だんだん生徒会役員たちは巻き込まれていく。「このゲームのヒロインは私なのよ!?」荒れるヒロインから一方的に恨まれる悪役令嬢はどうなってしまうのか?
この異世界転生の結末は
冬野月子
恋愛
五歳の時に乙女ゲームの世界に悪役令嬢として転生したと気付いたアンジェリーヌ。
一体、自分に待ち受けているのはどんな結末なのだろう?
※「小説家になろう」にも投稿しています。
気だるげの公爵令息が変わった理由。
三月べに
恋愛
乙女ゲーの悪役令嬢に転生したリーンティア。王子の婚約者にはまだなっていない。避けたいけれど、貴族の義務だから縁談は避けきれないと、一応見合いのお茶会に参加し続けた。乙女ゲーのシナリオでは、その見合いお茶会の中で、王子に恋をしたから父に強くお願いして、王家も承諾して成立した婚約だったはず。
王子以外に婚約者を選ぶかどうかはさておき、他の見合い相手を見極めておこう。相性次第でしょ。
そう思っていた私の本日の見合い相手は、気だるげの公爵令息。面倒くさがり屋の無気力なキャラクターは、子どもの頃からもう気だるげだったのか。
「生きる楽しみを教えてくれ」
ドンと言い放つ少年に、何があったかと尋ねたくなった。別に暗い過去なかったよね、このキャラ。
「あなたのことは知らないので、私が楽しいと思った日々のことを挙げてみますね」
つらつらと楽しみを挙げたら、ぐったりした様子の公爵令息は、目を輝かせた。
そんな彼と、婚約が確定。彼も、変わった。私の隣に立てば、生き生きした笑みを浮かべる。
学園に入って、乙女ゲーのヒロインが立ちはだかった。
「アンタも転生者でしょ! ゲームシナリオを崩壊させてサイテー!! アンタが王子の婚約者じゃないから、フラグも立たないじゃない!!」
知っちゃこっちゃない。スルーしたが、腕を掴まれた。
「無視してんじゃないわよ!」
「頭をおかしくしたように喚く知らない人を見て見ぬふりしたいのは当然では」
「なんですって!? 推しだか何だか知らないけど! なんで無気力公爵令息があんなに変わっちゃったのよ!! どうでもいいから婚約破棄して、王子の婚約者になりなさい!! 軌道修正して!!」
そんなことで今更軌道修正するわけがなかろう……頭おかしい人だな、怖い。
「婚約破棄? ふざけるな。王子の婚約者になれって言うのも不敬罪だ」
ふわっと抱き上げてくれたのは、婚約者の公爵令息イサークだった。
(なろうにも、掲載)
元貧乏貴族の大公夫人、大富豪の旦那様に溺愛されながら人生を謳歌する!
楠ノ木雫
恋愛
貧乏な実家を救うための結婚だった……はずなのに!?
貧乏貴族に生まれたテトラは実は転生者。毎日身を粉にして領民達と一緒に働いてきた。だけど、この家には借金があり、借金取りである商会の商会長から結婚の話を出されてしまっている。彼らはこの貴族の爵位が欲しいらしいけれど、結婚なんてしたくない。
けれどとある日、奴らのせいで仕事を潰された。これでは生活が出来ない。絶体絶命だったその時、とあるお偉いさんが手紙を持ってきた。その中に書いてあったのは……この国の大公様との結婚話ですって!?
※他サイトにも投稿しています。
乙女ゲームの悪役令嬢に転生!?
アイアイ
恋愛
も目が覚めたとき、私はベッドの中にいた。だが、それは見慣れた部屋のベッドではなく、まるでヨーロッパの貴族の宮殿のような豪華な寝室だった。金色の装飾が施された高い天井、手触りの良さそうな刺繍入りのカーテン、ふかふかの羽毛布団――現実離れしている。
「……夢?」
そう呟き、自分の手を見た瞬間、私は違和感を覚えた。白く細い指、そして今まで見たことのないピンク色のネイル。慌てて鏡を探し、部屋の片隅に立て掛けられた全身鏡の前に駆け寄る。映ったのは――私じゃない。
「これ……嘘でしょ?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる