5 / 17
05 恋愛指導①
しおりを挟む
私は恋愛下手日本代表として手を挙げられてしまうくらいの恋愛弱者なんだけど、好意があるはずのレオナルドと緊張せずに普通に話せているのは『指導者とその生徒』である関係が、二人の間に結べているからだ。
レオナルドからの好感度を上げようと思うと途端に緊張して話せなくなるけれど、彼から恋愛指導を受けて、それを受けての答えならば、すんなりと口にすることが出来る。
実は私は『ここたた』の攻略者たちの中では、実はレオナルドのヴィジュアルが一番好みだった。
けれど、乙女ゲームを進めるために好感度を上げるために三つから適切な選択肢を選ぶことが、まさか自分にとって司法試験に匹敵するくらい難しいとは思わず『ここたた』で攻略した事があるのは、一番簡単なメインヒーロージョヴァンニだけだった。
しかも、攻略サイトを見ながら正しい選択肢をぽちぽちとしていただけで、いわゆる答えを見ながらカンニングしてテストを受けている状態だった。
そんな何の努力も要らない状態で身についた知識が、頭に残っているはずもない。私の知ってる異世界転生したキャラクター、記憶力が良すぎる人が多すぎだと思う。
こうして転生して来た今、ジョヴァンニは選択肢を間違えば一発でバッドエンドに直行エンドがなく、一番攻略が易しいという事しかわからない。細部は正直覚えていない。
『ここたた』には押し間違いで、これまでの好感度を全て無にする破滅直行ルートがあるのだ。今思うと、怖すぎる。
けれど、プレイ中に一秒も気が抜けない乙女ゲームと呼ばれていて、それも『ここたた』の魅力でもあったのだ。
例えるならば、ジョヴァンニは初心者に優しいイージーモード。レオナルドは玄人も唸る、超絶ハードモード。
乙女ゲームヒロインに転生して来た私が好みなんかで考えず、どちらを選ぶか、火を見るより明らかだと思う。
ちなみに『ここたた』を教えてくれた友人曰く、簡単なジョヴァンニルートでの選択肢の正解がわからないなんて、意味がわからないと言っていた。
それほどに、攻略の簡単なヒーローらしい。発言の裏なんて読まなくて良いし、女の子の言いたいことも先回りして言ってくれるし、やって欲しい事は率直に伝えてくれるし、本当にやりやすい攻略対象者らしい。
しかし、私が好きになってしまったレオナルドは、最難関攻略対象者で、一番バッドエンドに近いヒーローなのだ。
つまり、恋に生きるか楽に生きるか……そういった話になってしまう。この二つの選択肢は人生の難問過ぎて、いまだにはっきりと選ぶことは出来ていない。
気持ちではどうにかして、レオナルドルートに切り替えたいけれど、ジョヴァンニルートを彼が手伝ってくれるルートに居るなんて、我ながら意味がわからなすぎて……どうしたら良いのか、本当にわからない。
「……リンゼイ。挨拶をして生徒会に興味がある会話をすると、二段階を踏まなければならなくなるだろう?」
「はい」
授業の終わった放課後、いつものように私たち二人は空き教室に集まって、これからどうすべきかと恋愛指導を受けていた。
ちなみにレオナルドは教師さながらカツカツと白いチョークで、これから検討すべき方法について黒板に箇条書きにしてくれている。
あまりないとは思うけど、他の誰かが入って来て見られたら、恥ずかしすぎて死ねる。
もし、レオナルドが教師だったら、生徒からの禁断の恋が量産されてしまうので、教育委員会は彼が教師免許を取得出来ないようにするべきだと思う……。
妄想しつつ神妙な顔をして頷いた私に満足してか、レオナルドは『生徒会に興味がある会話』をコツコツとチョークで叩いた。
「次は、挨拶はなしだ。会話だけに集中しよう」
「わかりました」
今朝の失敗を踏まえての、改善策の提案だ。
そんなレオナルドの指導のおかげで、私はジョヴァンニに近づくことも出来ているし、挨拶も出来ている。その前までの悲しい状況は、推して知るべし。
「ジョヴァンニに話し掛ける時に、開口一番に『私は生徒会に興味があるんです』と言えば、人手が必要な時にはリンゼイに声を掛けてくれるはずだ」
「はい。レオナルド先輩。質問があります」
質問事項がある時は、挙手することになっているため、私は右手をスッと挙げた。
「なんだ。リンゼイ」
「生徒会は人気があり、他にも入りたい女の子は沢山居るはずです。興味があるからと言って、ブルゴーニュ会長は私に声を掛けてくださるでしょうか?」
ジョヴァンニ以外にも人気がある攻略対象者が集中して所属しているため、生徒会に入りたいと望む女の子は多い。
ちなみに、生徒会に居る攻略対象者の個別ルートに入る場合、ヒーローが推薦してくれるという裏技で、ヒロインリンゼイは生徒会入りする。
生徒会として一緒に居ることになれば、学年は違ったとしても、会う機会が多くなるし、イベント毎の度に協力し合う。
つまり、接触回数が多くなり、好感度だって上がりやすくなるのだ。男女が恋愛するしかない仕様だった。
レオナルドは生徒会ではないので、彼は違う何かで好感度を上げることになるんだろう。
最難易度攻略対象者だし……もしかしたら、特別な何かが用意されているのかもしれない。裏ボスにもなれるくらいだもんね。
レオナルドからの好感度を上げようと思うと途端に緊張して話せなくなるけれど、彼から恋愛指導を受けて、それを受けての答えならば、すんなりと口にすることが出来る。
実は私は『ここたた』の攻略者たちの中では、実はレオナルドのヴィジュアルが一番好みだった。
けれど、乙女ゲームを進めるために好感度を上げるために三つから適切な選択肢を選ぶことが、まさか自分にとって司法試験に匹敵するくらい難しいとは思わず『ここたた』で攻略した事があるのは、一番簡単なメインヒーロージョヴァンニだけだった。
しかも、攻略サイトを見ながら正しい選択肢をぽちぽちとしていただけで、いわゆる答えを見ながらカンニングしてテストを受けている状態だった。
そんな何の努力も要らない状態で身についた知識が、頭に残っているはずもない。私の知ってる異世界転生したキャラクター、記憶力が良すぎる人が多すぎだと思う。
こうして転生して来た今、ジョヴァンニは選択肢を間違えば一発でバッドエンドに直行エンドがなく、一番攻略が易しいという事しかわからない。細部は正直覚えていない。
『ここたた』には押し間違いで、これまでの好感度を全て無にする破滅直行ルートがあるのだ。今思うと、怖すぎる。
けれど、プレイ中に一秒も気が抜けない乙女ゲームと呼ばれていて、それも『ここたた』の魅力でもあったのだ。
例えるならば、ジョヴァンニは初心者に優しいイージーモード。レオナルドは玄人も唸る、超絶ハードモード。
乙女ゲームヒロインに転生して来た私が好みなんかで考えず、どちらを選ぶか、火を見るより明らかだと思う。
ちなみに『ここたた』を教えてくれた友人曰く、簡単なジョヴァンニルートでの選択肢の正解がわからないなんて、意味がわからないと言っていた。
それほどに、攻略の簡単なヒーローらしい。発言の裏なんて読まなくて良いし、女の子の言いたいことも先回りして言ってくれるし、やって欲しい事は率直に伝えてくれるし、本当にやりやすい攻略対象者らしい。
しかし、私が好きになってしまったレオナルドは、最難関攻略対象者で、一番バッドエンドに近いヒーローなのだ。
つまり、恋に生きるか楽に生きるか……そういった話になってしまう。この二つの選択肢は人生の難問過ぎて、いまだにはっきりと選ぶことは出来ていない。
気持ちではどうにかして、レオナルドルートに切り替えたいけれど、ジョヴァンニルートを彼が手伝ってくれるルートに居るなんて、我ながら意味がわからなすぎて……どうしたら良いのか、本当にわからない。
「……リンゼイ。挨拶をして生徒会に興味がある会話をすると、二段階を踏まなければならなくなるだろう?」
「はい」
授業の終わった放課後、いつものように私たち二人は空き教室に集まって、これからどうすべきかと恋愛指導を受けていた。
ちなみにレオナルドは教師さながらカツカツと白いチョークで、これから検討すべき方法について黒板に箇条書きにしてくれている。
あまりないとは思うけど、他の誰かが入って来て見られたら、恥ずかしすぎて死ねる。
もし、レオナルドが教師だったら、生徒からの禁断の恋が量産されてしまうので、教育委員会は彼が教師免許を取得出来ないようにするべきだと思う……。
妄想しつつ神妙な顔をして頷いた私に満足してか、レオナルドは『生徒会に興味がある会話』をコツコツとチョークで叩いた。
「次は、挨拶はなしだ。会話だけに集中しよう」
「わかりました」
今朝の失敗を踏まえての、改善策の提案だ。
そんなレオナルドの指導のおかげで、私はジョヴァンニに近づくことも出来ているし、挨拶も出来ている。その前までの悲しい状況は、推して知るべし。
「ジョヴァンニに話し掛ける時に、開口一番に『私は生徒会に興味があるんです』と言えば、人手が必要な時にはリンゼイに声を掛けてくれるはずだ」
「はい。レオナルド先輩。質問があります」
質問事項がある時は、挙手することになっているため、私は右手をスッと挙げた。
「なんだ。リンゼイ」
「生徒会は人気があり、他にも入りたい女の子は沢山居るはずです。興味があるからと言って、ブルゴーニュ会長は私に声を掛けてくださるでしょうか?」
ジョヴァンニ以外にも人気がある攻略対象者が集中して所属しているため、生徒会に入りたいと望む女の子は多い。
ちなみに、生徒会に居る攻略対象者の個別ルートに入る場合、ヒーローが推薦してくれるという裏技で、ヒロインリンゼイは生徒会入りする。
生徒会として一緒に居ることになれば、学年は違ったとしても、会う機会が多くなるし、イベント毎の度に協力し合う。
つまり、接触回数が多くなり、好感度だって上がりやすくなるのだ。男女が恋愛するしかない仕様だった。
レオナルドは生徒会ではないので、彼は違う何かで好感度を上げることになるんだろう。
最難易度攻略対象者だし……もしかしたら、特別な何かが用意されているのかもしれない。裏ボスにもなれるくらいだもんね。
58
お気に入りに追加
218
あなたにおすすめの小説
【完結】溺愛?執着?転生悪役令嬢は皇太子から逃げ出したい~絶世の美女の悪役令嬢はオカメを被るが、独占しやすくて皇太子にとって好都合な模様~
うり北 うりこ@ざまされ書籍化決定
恋愛
平安のお姫様が悪役令嬢イザベルへと転生した。平安の記憶を思い出したとき、彼女は絶望することになる。
絶世の美女と言われた切れ長の細い目、ふっくらとした頬、豊かな黒髪……いわゆるオカメ顔ではなくなり、目鼻立ちがハッキリとし、ふくよかな頬はなくなり、金の髪がうねるというオニのような見た目(西洋美女)になっていたからだ。
今世での絶世の美女でも、美意識は平安。どうにか、この顔を見られない方法をイザベルは考え……、それは『オカメ』を装備することだった。
オカメ狂の悪役令嬢イザベルと、
婚約解消をしたくない溺愛・執着・イザベル至上主義の皇太子ルイスのオカメラブコメディー。
※執着溺愛皇太子と平安乙女のオカメな悪役令嬢とのラブコメです。
※主人公のイザベルの思考と話す言葉の口調が違います。分かりにくかったら、すみません。
※途中からダブルヒロインになります。
イラストはMasquer様に描いて頂きました。

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました
宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。
しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。
断罪まであと一年と少し。
だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。
と意気込んだはいいけど
あれ?
婚約者様の様子がおかしいのだけど…
※ 4/26
内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
【本編完結・番外編不定期更新】
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます

転生先は推しの婚約者のご令嬢でした
真咲
恋愛
馬に蹴られた私エイミー・シュタットフェルトは前世の記憶を取り戻し、大好きな乙女ゲームの最推し第二王子のリチャード様の婚約者に転生したことに気が付いた。
ライバルキャラではあるけれど悪役令嬢ではない。
ざまぁもないし、行きつく先は円満な婚約解消。
推しが尊い。だからこそ幸せになってほしい。
ヒロインと恋をして幸せになるならその時は身を引く覚悟はできている。
けれども婚約解消のその時までは、推しの隣にいる事をどうか許してほしいのです。
※「小説家になろう」にも掲載中です
悪役令嬢と転生ヒロイン
みおな
恋愛
「こ、これは・・・!」
鏡の中の自分の顔に、言葉をなくした。
そこに映っていたのは、青紫色の髪に瞳をした、年齢でいえば十三歳ほどの少女。
乙女ゲーム『タンザナイトの乙女』に出てくるヒロイン、そのものの姿だった。
乙女ゲーム『タンザナイトの乙女』は、平民の娘であるヒロインが、攻略対象である王太子や宰相の息子たちと交流を深め、彼らと結ばれるのを目指すという極々ありがちな乙女ゲームである。
ありふれた乙女ゲームは、キャラ画に人気が高まり、続編として小説やアニメとなった。
その小説版では、ヒロインは伯爵家の令嬢となり、攻略対象たちには婚約者が現れた。
この時点で、すでに乙女ゲームの枠を超えていると、ファンの間で騒然となった。
改めて、鏡の中の姿を見る。
どう見ても、ヒロインの見た目だ。アニメでもゲームでも見たから間違いない。
問題は、そこではない。
着ているのがどう見ても平民の服ではなく、ドレスだということ。
これはもしかして、小説版に転生?

悪役令息の婚約者になりまして
どくりんご
恋愛
婚約者に出逢って一秒。
前世の記憶を思い出した。それと同時にこの世界が小説の中だということに気づいた。
その中で、目の前のこの人は悪役、つまり悪役令息だということも同時にわかった。
彼がヒロインに恋をしてしまうことを知っていても思いは止められない。
この思い、どうすれば良いの?

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました
かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中!
そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……?
可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです!
そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!?
イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!!
毎日17時と19時に更新します。
全12話完結+番外編
「小説家になろう」でも掲載しています。
【完結】もったいないですわ!乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢は、今日も生徒会活動に勤しむ~経済を回してる?それってただの無駄遣いですわ!~
鬼ヶ咲あちたん
恋愛
内容も知らない乙女ゲームの世界に転生してしまった悪役令嬢は、ヒロインや攻略対象者たちを放って今日も生徒会活動に勤しむ。もったいないおばけは日本人の心! まだ使える物を捨ててしまうなんて、もったいないですわ! 悪役令嬢が取り組む『もったいない革命』に、だんだん生徒会役員たちは巻き込まれていく。「このゲームのヒロインは私なのよ!?」荒れるヒロインから一方的に恨まれる悪役令嬢はどうなってしまうのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる