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57 返り討ち②
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「……まあ、それは、確かにそうだけどねえ……君は本当に悪知恵が働く子になってしまって、誰に似たのか」
呆れたように言ったドレイク様に、ジュストは鼻で笑って言い返した。
「父さんだよ。父さんに決まっている。父さんだって、研究のためには、寝食忘れて手段を選ばないだろう? 僕はそれが、ミシェルを愛することだったってだけだ。ラザール・クロッシュが自分の仕掛けた罠踏んで居なくなれば、もう変なことも頼むこともなくなるよ」
ジュストはドレイク様の差し出した緑の小瓶をもらい、少しだけ口に含んで嫌な顔をした。
「不味いね」
「そりゃまあ、美味しく作ってない薬だからね。けど、どうするつもりだい? 毒を飲んだ振りをして、倒れたが、それは病気だったことにするって聞いたけど?」
病気だったことにするって、どういうことなの?
「うん。僕が軽い肺炎であれば、こうして血を吐いてもおかしくないだろう? 治療中で飲んでいる薬だから、こうして減らしておかないとおかしいからね。今頃、あの場に居たラザールが意気揚々と、陛下なんかに何があったか事情説明している頃だろうからね。ははは。あいつの用意した毒なんて、もう何処にもないのにさ」
「え……? どういうこと?」
私はぽかんとしていた。ジュストが私に黙って色々計画して実行する人って知っているけどでも……毒を飲んだ振りをして病気だったことにするって、本当に意味がわからないわ。
「ああ。ミシェルお嬢様。僕は少し前から患っていた肺炎で喉を傷つけ血を吐き、この薬を飲んで治療中なんですけど……」
じっと目を見つめられ真剣に言われて、そうだったのかもと思ってから、そんなはずないと思い直す。
「えっと……そういうことに、しろってこと……?」
「勘の良いミシェルは、大好きです。そうなんです。けれど、僕たちの飲んでいたお茶や茶器からは毒が出てきていないのに、おそらく毒が入っていたことになっているんですね。とても不思議ですけどね」
「……え?」
毒が無いけど、毒があったことになっている……?
「そうそう。つまり、あのお茶会で、僕かミシェルが死なない程度の毒を飲み、王家がせっかく僕らのためにと主催してくれたお茶会を、話題になりたい目立ちたがり屋だから台無しにしてしまうことになるんですけど……というか、それがラザールが作った筋書きだったんですけど」
「そんなこと! ……いいえ。ラザールは、そうするつもりだったのね。証拠も揃えていたんだわ。だから、私には余裕の顔を向けていたのね」
「ええ……ええ。確かにこの世界には、実際ご自分で自作自演した悲劇の主人公になりたい方もいらっしゃいますから。僕らもそういう良くわからない思考の持ち主にされてしまうところだったんですけど……」
「けど?」
もったい振ったジュストの口振りにじれったくなって、私は先を促した。
「あの時に飲んだお茶からも茶器からも、毒は検出されませんし、僕は少し前にかかった肺炎の治療中なので、少し吐血してしまっただけ……なのに、何故か毒を飲んだと自作自演したという証拠が何個か出て来るようですよ。不思議ですよね。仕掛け人たちも証言を脅されて強制されていて僕が奴の倍額払ったら、すんなりラザール裏切りましたね。ああ……あのお茶には、どうやら甘い砂糖は入っていたようですが」
「毒と砂糖を入れ替えたの……ジュスト。また、ラザールに罠を仕掛けたの?」
「いえいえ。ミシェル。それは、人聞きが悪いですよ。こちらは返り討ちと申しまして、僕たちに攻撃を仕掛けなければ何もされなかったはずなのに、という悲しき報復です」
ジュストは清々しい爽やかな笑顔でそう言い、私はやっぱりすべてを知っていて、これをした彼のことが少しだけ怖くなり抱きしめられていたはずなのに少しだけ後退ってしまった。
「ミシェル、どうしました?」
「もしかして……私はとんでもない人を、好きになってしまったのではないかと思ったの」
「え……今、気が付きました?」
にこにこと微笑んだジュストは、さりげなく私の身体を引き寄せた。
呆れたように言ったドレイク様に、ジュストは鼻で笑って言い返した。
「父さんだよ。父さんに決まっている。父さんだって、研究のためには、寝食忘れて手段を選ばないだろう? 僕はそれが、ミシェルを愛することだったってだけだ。ラザール・クロッシュが自分の仕掛けた罠踏んで居なくなれば、もう変なことも頼むこともなくなるよ」
ジュストはドレイク様の差し出した緑の小瓶をもらい、少しだけ口に含んで嫌な顔をした。
「不味いね」
「そりゃまあ、美味しく作ってない薬だからね。けど、どうするつもりだい? 毒を飲んだ振りをして、倒れたが、それは病気だったことにするって聞いたけど?」
病気だったことにするって、どういうことなの?
「うん。僕が軽い肺炎であれば、こうして血を吐いてもおかしくないだろう? 治療中で飲んでいる薬だから、こうして減らしておかないとおかしいからね。今頃、あの場に居たラザールが意気揚々と、陛下なんかに何があったか事情説明している頃だろうからね。ははは。あいつの用意した毒なんて、もう何処にもないのにさ」
「え……? どういうこと?」
私はぽかんとしていた。ジュストが私に黙って色々計画して実行する人って知っているけどでも……毒を飲んだ振りをして病気だったことにするって、本当に意味がわからないわ。
「ああ。ミシェルお嬢様。僕は少し前から患っていた肺炎で喉を傷つけ血を吐き、この薬を飲んで治療中なんですけど……」
じっと目を見つめられ真剣に言われて、そうだったのかもと思ってから、そんなはずないと思い直す。
「えっと……そういうことに、しろってこと……?」
「勘の良いミシェルは、大好きです。そうなんです。けれど、僕たちの飲んでいたお茶や茶器からは毒が出てきていないのに、おそらく毒が入っていたことになっているんですね。とても不思議ですけどね」
「……え?」
毒が無いけど、毒があったことになっている……?
「そうそう。つまり、あのお茶会で、僕かミシェルが死なない程度の毒を飲み、王家がせっかく僕らのためにと主催してくれたお茶会を、話題になりたい目立ちたがり屋だから台無しにしてしまうことになるんですけど……というか、それがラザールが作った筋書きだったんですけど」
「そんなこと! ……いいえ。ラザールは、そうするつもりだったのね。証拠も揃えていたんだわ。だから、私には余裕の顔を向けていたのね」
「ええ……ええ。確かにこの世界には、実際ご自分で自作自演した悲劇の主人公になりたい方もいらっしゃいますから。僕らもそういう良くわからない思考の持ち主にされてしまうところだったんですけど……」
「けど?」
もったい振ったジュストの口振りにじれったくなって、私は先を促した。
「あの時に飲んだお茶からも茶器からも、毒は検出されませんし、僕は少し前にかかった肺炎の治療中なので、少し吐血してしまっただけ……なのに、何故か毒を飲んだと自作自演したという証拠が何個か出て来るようですよ。不思議ですよね。仕掛け人たちも証言を脅されて強制されていて僕が奴の倍額払ったら、すんなりラザール裏切りましたね。ああ……あのお茶には、どうやら甘い砂糖は入っていたようですが」
「毒と砂糖を入れ替えたの……ジュスト。また、ラザールに罠を仕掛けたの?」
「いえいえ。ミシェル。それは、人聞きが悪いですよ。こちらは返り討ちと申しまして、僕たちに攻撃を仕掛けなければ何もされなかったはずなのに、という悲しき報復です」
ジュストは清々しい爽やかな笑顔でそう言い、私はやっぱりすべてを知っていて、これをした彼のことが少しだけ怖くなり抱きしめられていたはずなのに少しだけ後退ってしまった。
「ミシェル、どうしました?」
「もしかして……私はとんでもない人を、好きになってしまったのではないかと思ったの」
「え……今、気が付きました?」
にこにこと微笑んだジュストは、さりげなく私の身体を引き寄せた。
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