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51 守る②

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◇◆◇


「……あの子は、納得したんだな」

 お父様は私から話を聞き、安心して胸を撫でおろしていたようだった。

 オレリーが可愛いのは、私もお父様も一緒だ。わかりやすい嘘でも、あの子を弾劾するような事態にならなくて良かった。

「ええ。ジュストとのことは、嘘だと認めたわ。それに、特効薬を飲んで健康になったあの子には、私はもう甘やかさないと伝えたの。お父様もそうして……それが、家族としてあの子のことを愛するということだと思うわ」

 私たちは命の期限のあるオレリーを、揃ってとても甘やかした。けれど、健康になり普通に生きていくのなら、そういう訳にはいかない。

 私たちは、ずっと傍には居てあげられないのだ。

「わかっている。お前には、本当に苦労をかけた。今回のことについてもだ。ジュストとの結婚を許そう」

 私はその言葉を聞いて、隣に居たジュストと目を合わせた。

 ……これで、私たちの間にある障害はすべて取り除かれた。

「サラクラン伯爵……感謝します。幼かった僕をサラクラン伯爵邸に置いてくれたことも、ミシェルと出会えたことも、すべて感謝しています」

「……お父様。本当にありがとうございます」

 私たち二人から感謝の言葉を聞いて、お父様はどこか照れくさそうだった。お父様だって幼い頃から我が家に居たジュストは、成長を間近で見ていたし可愛かったに違いない。

「ああ……もうここまで来たら、もう仕方ない。私の負けだ。ジュスト。お前は本当に諦めない男だ。誰もが不可能だと思うようなことを、驚くような方法で成し遂げたな。立派だ。それだけ愛されているのならば、必ず娘ミシェルを幸せにしてくれるだろう」

「約束します。命に懸けて」

 ジュストの決意の言葉を聞いて、大きく息をついたお父様は胸元から手紙を取り出した。

「……それと、国王陛下からお前たち二人に、三日後のお茶会の招待状が届いている」

 私たち二人はそれを聞いて、不思議に思い顔を見合わせた。

 ……国王陛下からの招待状?

「この前にあったクロッシュ公爵家のラザール様との婚約解消の王命の件だ。陛下としては婚約解消で臣下たる二つの家にしこりが残るようなことは避けたいと仰って、ラザール様と改めて言葉を交わして欲しいと」

「……僕はもちろん構いません。確かに僕もサラクラン伯爵としても、クロッシュ公爵家と遺恨の残るようなことは避けたいですね」

 クロッシュ公爵家は、ローレシア王国で大きな権力を握っている。

 けれど、婚約解消の王命を下した国王陛下主催のお茶会で、両者腹を割って話せと言うのならば、私たちやラザール様だって表向きは仲直りしたという姿勢を見せることになる。

「わかりました。私もあの場ではあまりお話が出来なかったので、このような機会を与えてくださった陛下に感謝しています」

 娘夫婦となる私たち二人が参加する意志を見せれば、お父様はほっと安堵して頷いていた。

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