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35 演技②
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私は単なる未婚の貴族令嬢で、王族なんて社交界デビューの時に、国王陛下より声を掛けられた程度。
本来ならば年齢の釣り合う王太子や第二王子がデビュタントたちと踊るんだけど、即位が早まってしまったために、私がデビューした年は国王陛下と王弟殿下が、その役目を務められていたのだ。
「しっ……ミシェル様は、黙って傍に居てくださいね……ここが僕が用意した、一番大事なところです」
直前まで来ているというのに、ジュストは私に何も教えてくれる気はないらしい。
私たち二人は国王陛下と王妃陛下に正式な礼をして、彼らの許しを待った。
「顔をあげなさい。アシュラム伯爵……サラクラン伯爵令嬢」
私たちは二人揃って顔をあげ、何故か嬉しそうな表情の王妃様を見てとても不思議になった。
な、何なの……? 本当に意味がわからない。
それに、ジュストったら、何をどうしたら、ローレシア王国の至高の存在とも言える王妃様に、ここまで気に入られてしまうの?
これまでにも、ジュストは信じがたいくらいに様々なことをやり遂げていたけれど、こんな風に王妃様に気に入られてしまうなんて何がどうなっているのか、とっても気になる。
「貴方が……私に手紙をくれた、ジュスト・リュシオールね? ……いえ。今ではアシュラム伯爵なのかしら。フィオーラの義理の息子と、聞いているけれど。従属爵位のひとつを貰ったのね。届け出は出ていたわ」
王妃様はトリアノン女侯爵の名前を言って、もしかしたら義母から紹介して貰ったのかもしれないと思った。それに、早業なジュストは、すでに伯爵位を得ているようだ。
いえ。私に求婚するならばと手に入れた地位なのだから、今ここで彼が手にしていないとおかしくなってしまうのかしら。
「はい。その通りです。こうしてお目通り叶いまして光栄です。陛下」
「……そして、そのサラクラン伯爵令嬢が、貴方の言っていた女の子ね?」
ええ。私です。どういう反応を返せば良いかわからずに、私は無言でカーテシーするに留めた。こんな場所に連れて来るのなら、細かく指示して欲しかったわ。
「ええ。そうです。手紙に書いた通り、叶わぬ恋に落ち、このままでは駆け落ちせざるを得ないところまで、僕たちは追い詰められてしまいました」
……え?
「まぁ! そんな……駄目よ。アシュラム伯爵。貴方がいくら有能でも、身一つで逃げれば出来ることは限りがあるわ」
「……ですが、このままではミシェルと僕との仲は、無理やりに引き裂かれてしまいます。愛し合っているというのに、それなのに」
……隣ではらはらと涙を流し、哀れな涙声で王妃様に訴えている男性は、何処の誰なの?
私。きっと、名前も知らない人だと思うわ。こんなジュスト、見たことないもの。中身がどこかで入れ替わってしまったのかしら。
突然始まった芝居に、私は呆然と見守ることしか出来なかった。
「まぁ……まぁ! まぁ……駆け落ちなんて、駄目よ! この私が、絶対にさせないわ! こんなに可愛いご令嬢に、何かあったら……!」
どうして、王妃様はそんなにもヒートアップして涙を流してしまっているの……?
その隣に居る国王陛下は『仕方ないなぁ』と言わんばかりに、愛する王妃様を優しく見つめているし、ここでぽかんとしているのは私だけだわ。
本来ならば年齢の釣り合う王太子や第二王子がデビュタントたちと踊るんだけど、即位が早まってしまったために、私がデビューした年は国王陛下と王弟殿下が、その役目を務められていたのだ。
「しっ……ミシェル様は、黙って傍に居てくださいね……ここが僕が用意した、一番大事なところです」
直前まで来ているというのに、ジュストは私に何も教えてくれる気はないらしい。
私たち二人は国王陛下と王妃陛下に正式な礼をして、彼らの許しを待った。
「顔をあげなさい。アシュラム伯爵……サラクラン伯爵令嬢」
私たちは二人揃って顔をあげ、何故か嬉しそうな表情の王妃様を見てとても不思議になった。
な、何なの……? 本当に意味がわからない。
それに、ジュストったら、何をどうしたら、ローレシア王国の至高の存在とも言える王妃様に、ここまで気に入られてしまうの?
これまでにも、ジュストは信じがたいくらいに様々なことをやり遂げていたけれど、こんな風に王妃様に気に入られてしまうなんて何がどうなっているのか、とっても気になる。
「貴方が……私に手紙をくれた、ジュスト・リュシオールね? ……いえ。今ではアシュラム伯爵なのかしら。フィオーラの義理の息子と、聞いているけれど。従属爵位のひとつを貰ったのね。届け出は出ていたわ」
王妃様はトリアノン女侯爵の名前を言って、もしかしたら義母から紹介して貰ったのかもしれないと思った。それに、早業なジュストは、すでに伯爵位を得ているようだ。
いえ。私に求婚するならばと手に入れた地位なのだから、今ここで彼が手にしていないとおかしくなってしまうのかしら。
「はい。その通りです。こうしてお目通り叶いまして光栄です。陛下」
「……そして、そのサラクラン伯爵令嬢が、貴方の言っていた女の子ね?」
ええ。私です。どういう反応を返せば良いかわからずに、私は無言でカーテシーするに留めた。こんな場所に連れて来るのなら、細かく指示して欲しかったわ。
「ええ。そうです。手紙に書いた通り、叶わぬ恋に落ち、このままでは駆け落ちせざるを得ないところまで、僕たちは追い詰められてしまいました」
……え?
「まぁ! そんな……駄目よ。アシュラム伯爵。貴方がいくら有能でも、身一つで逃げれば出来ることは限りがあるわ」
「……ですが、このままではミシェルと僕との仲は、無理やりに引き裂かれてしまいます。愛し合っているというのに、それなのに」
……隣ではらはらと涙を流し、哀れな涙声で王妃様に訴えている男性は、何処の誰なの?
私。きっと、名前も知らない人だと思うわ。こんなジュスト、見たことないもの。中身がどこかで入れ替わってしまったのかしら。
突然始まった芝居に、私は呆然と見守ることしか出来なかった。
「まぁ……まぁ! まぁ……駆け落ちなんて、駄目よ! この私が、絶対にさせないわ! こんなに可愛いご令嬢に、何かあったら……!」
どうして、王妃様はそんなにもヒートアップして涙を流してしまっているの……?
その隣に居る国王陛下は『仕方ないなぁ』と言わんばかりに、愛する王妃様を優しく見つめているし、ここでぽかんとしているのは私だけだわ。
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