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24 婚約者②

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 ラザール様はこちらへとより近づき、開かれていたページの新聞を見ようとしたので、私はパタンと分厚い新聞を保存してあったバインダーを閉めた。

 ……思ったより大きな音がして、ラザール様は不快そうな表情になった。

「……そっ、それには及びません……スデニカイケツシマシタノデ」

 迫りくる彼の圧力に負け思わずカタコトになってしまった私へ、ラザール様は不機嫌そうな視線を向けた。

 ……ここでは、こうするしかない。こうするしかないけど! 怖いよー!! ジュスト、助けてー!!

 いつもはこんな事になる前に、すぐにそれとなく理由をつけて私を助けてくれたジュストは居ない。

 傍に居ることが当たり前だった彼が居なくなったらこんなにも喪失感を覚えるだなんて、思っても居なかった。

「……ふーん。それは、婚約者の僕にも、話せない事なのか?」

 ……やっぱり、ラザール様、何か勘づいてる? 気が付いてる?

 ……というか、もしかして、全部知っている? 知っているけど、試している? ……私がジュストと結婚したいと、思っていることに。

 誤魔化すように曖昧に微笑んだ私は背中にたらりと冷や汗が流れて、不審げな視線を向けられていることに気が付き慌てて私は言った。

「これはお忙しいラザール様のお手を煩わせるほどのことでは、ありません!」

 はきはきと言った私の顔を見て軽く顔を顰めると、ラザール様は大きく溜め息をついた。

「……そうか。まぁ、良いよ。君が何もなく無事で良かった。家出するなんて何があったのか知らないが、ご両親に心配は掛けない方が良いよ。ミシェル」

「はい……申し訳ございません」

 ラザール様は私から離れて、扉へと歩いて行く。公爵令息の彼は日々多忙だし、急遽ここに来てくれたのも私が帰って来たと聞いたからだろう。

「ミシェル。君が結婚するのは僕なんだから、あの護衛騎士がまだここに居たら、僕が始末しようと思っていた。気の迷いは誰にもあることだから、気にしなくて良いよ……ではね。おやすみ」

 パタンと扉は閉まり、私はラザール様の言ったことを考えていた。

 えっ……? あれだと、私がジュストと結婚したいと言ったこと、知っているよね? けど、知らない振りをして私を試したんだ!

 何なの! 性格悪すぎるんだけど!

 しかも、自分がオレリーに婚約者を替えようとしたことは、問題にしていないよね……! 信じられない!

 私は涼しい顔をして帰っていく婚約者ラザール様に、拳を握り人知れず闘志を燃やしていた。
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