22 / 66
22 再会③
しおりを挟む
「きっと、ジュストのことだから、何か考えがあるのよ。あの子は幼い頃からとっても頭が良くて要領も良かったから、私やミシェルが考えつかないような再会の仕方をすると思うわ」
「……お母様も、そう思います?」
付き合いの長い私も、あのジュストのことだから、きっと何か作戦があって出て行ったとは思っていた。けれど、どうしても不安だったのだ。
これまでずっと一緒に居た私から離れてしまうというのに、ジュストは何の抵抗もなさそうだったから。
「貴女と結婚するためだけに、学問一筋のお父様を叙爵されるように仕向け、義理の息子になる自分へ従属爵位をくれるような高位貴族の未亡人と結婚させたんでしょう。そんなジュストが何も考えずにここを出て行くなんて、考える方が難しいわ」
お母様はなんだか、愛を誓ったはずの恋人に置いて行かれた娘の現状を聞いて楽しそうだった。
「お父様が功績を挙げられたことは、別にジュストが仕掛けた訳ではないでしょう?」
私はお母様が誤解をしていそうだから正そうと思って言ったんだけど、お母様は呆れた顔をしていた。
「ミシェル……貴女ったら、何を言っているの。勉強一筋の学者が、叙爵されるための根回しなんて出来る訳ないでしょう。すべて息子のジュストが代わりにしたことに決まっているわ。陛下の耳にまで功績が届くように調整し、平民が貴族になれるのよ。そんな器用な人なら、そもそも一人息子と離れたりしないわ」
「そっ……それは、そうですけど」
確かに学問しか能の無い生活不能者だと、ジュストは苦笑して言っていた。だから、彼は心配した親戚に連れられて、このサラクラン伯爵家にやって来たと。
「お母様。ジュストは本当に、私のために……そこまでしたんでしょうか?」
結果的にそうなっている訳だけど、その事がどうしても信じがたい。
「状況を見れば、そうよ。私は本音を言えばジュストを応援したいけれど、ラザール様の件は色々と面倒だものね。あの子はどうやってそれを解決するのかしら。楽しみね」
お母様はお父様と十何年も経った今でも語り継がれるくらいの大恋愛結婚をしたし、私だって二人を身近で見ていて愛し合う夫婦は素晴らしいと思っていた。
自分だって、そんな人と結婚したいと。
「ラザール様が健康になったオレリーを好きになったのは、ただの偶然ですけど……」
「ねえ。ミシェル……世の中には、偶然に起こることなんて、実は少ないのよ……ジュストのお父様がどんな功績を認められて叙爵されたのか、調べてみれば良いと思うわ」
お母様の意味ありげな微笑みを見て、私はその時にもしかしたらと思った。
「……お母様も、そう思います?」
付き合いの長い私も、あのジュストのことだから、きっと何か作戦があって出て行ったとは思っていた。けれど、どうしても不安だったのだ。
これまでずっと一緒に居た私から離れてしまうというのに、ジュストは何の抵抗もなさそうだったから。
「貴女と結婚するためだけに、学問一筋のお父様を叙爵されるように仕向け、義理の息子になる自分へ従属爵位をくれるような高位貴族の未亡人と結婚させたんでしょう。そんなジュストが何も考えずにここを出て行くなんて、考える方が難しいわ」
お母様はなんだか、愛を誓ったはずの恋人に置いて行かれた娘の現状を聞いて楽しそうだった。
「お父様が功績を挙げられたことは、別にジュストが仕掛けた訳ではないでしょう?」
私はお母様が誤解をしていそうだから正そうと思って言ったんだけど、お母様は呆れた顔をしていた。
「ミシェル……貴女ったら、何を言っているの。勉強一筋の学者が、叙爵されるための根回しなんて出来る訳ないでしょう。すべて息子のジュストが代わりにしたことに決まっているわ。陛下の耳にまで功績が届くように調整し、平民が貴族になれるのよ。そんな器用な人なら、そもそも一人息子と離れたりしないわ」
「そっ……それは、そうですけど」
確かに学問しか能の無い生活不能者だと、ジュストは苦笑して言っていた。だから、彼は心配した親戚に連れられて、このサラクラン伯爵家にやって来たと。
「お母様。ジュストは本当に、私のために……そこまでしたんでしょうか?」
結果的にそうなっている訳だけど、その事がどうしても信じがたい。
「状況を見れば、そうよ。私は本音を言えばジュストを応援したいけれど、ラザール様の件は色々と面倒だものね。あの子はどうやってそれを解決するのかしら。楽しみね」
お母様はお父様と十何年も経った今でも語り継がれるくらいの大恋愛結婚をしたし、私だって二人を身近で見ていて愛し合う夫婦は素晴らしいと思っていた。
自分だって、そんな人と結婚したいと。
「ラザール様が健康になったオレリーを好きになったのは、ただの偶然ですけど……」
「ねえ。ミシェル……世の中には、偶然に起こることなんて、実は少ないのよ……ジュストのお父様がどんな功績を認められて叙爵されたのか、調べてみれば良いと思うわ」
お母様の意味ありげな微笑みを見て、私はその時にもしかしたらと思った。
422
お気に入りに追加
1,317
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
追放された悪役令嬢は辺境にて隠し子を養育する
3ツ月 葵(ミツヅキ アオイ)
恋愛
婚約者である王太子からの突然の断罪!
それは自分の婚約者を奪おうとする義妹に嫉妬してイジメをしていたエステルを糾弾するものだった。
しかしこれは義妹に仕組まれた罠であったのだ。
味方のいないエステルは理不尽にも王城の敷地の端にある粗末な離れへと幽閉される。
「あぁ……。私は一生涯ここから出ることは叶わず、この場所で独り朽ち果ててしまうのね」
エステルは絶望の中で高い塀からのぞく狭い空を見上げた。
そこでの生活も数ヵ月が経って落ち着いてきた頃に突然の来訪者が。
「お姉様。ここから出してさし上げましょうか? そのかわり……」
義妹はエステルに悪魔の様な契約を押し付けようとしてくるのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】彼の瞳に映るのは
たろ
恋愛
今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。
優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。
そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。
わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。
★ 短編から長編へ変更しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄されて追放された私、今は隣国で充実な生活送っていますわよ? それがなにか?
鶯埜 餡
恋愛
バドス王国の侯爵令嬢アメリアは無実の罪で王太子との婚約破棄、そして国外追放された。
今ですか?
めちゃくちゃ充実してますけど、なにか?
本日、貴方を愛するのをやめます~王妃と不倫した貴方が悪いのですよ?~
なか
恋愛
私は本日、貴方と離婚します。
愛するのは、終わりだ。
◇◇◇
アーシアの夫––レジェスは王妃の護衛騎士の任についた途端、妻である彼女を冷遇する。
初めは優しくしてくれていた彼の変貌ぶりに、アーシアは戸惑いつつも、再び振り向いてもらうため献身的に尽くした。
しかし、玄関先に置かれていた見知らぬ本に、謎の日本語が書かれているのを見つける。
それを読んだ瞬間、前世の記憶を思い出し……彼女は知った。
この世界が、前世の記憶で読んだ小説であること。
レジェスとの結婚は、彼が愛する王妃と密通を交わすためのものであり……アーシアは王妃暗殺を目論んだ悪女というキャラで、このままでは断罪される宿命にあると。
全てを思い出したアーシアは覚悟を決める。
彼と離婚するため三年間の準備を整えて、断罪の未来から逃れてみせると……
この物語は、彼女の決意から三年が経ち。
離婚する日から始まっていく
戻ってこいと言われても、彼女に戻る気はなかった。
◇◇◇
設定は甘めです。
読んでくださると嬉しいです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。
秋月一花
恋愛
「お前はいつものろまで、クズで、私の引き立て役なのよ、お姉様」
私を蔑む視線を向けて、双子の妹がそう言った。
「本当、お前と違ってジュリーは賢くて、裁縫も刺繍も天才的だよ」
愛しそうな表情を浮かべて、妹を抱きしめるお父様。
「――あなたは、この家に要らないのよ」
扇子で私の頬を叩くお母様。
……そんなに私のことが嫌いなら、消えることを選びます。
消えた先で、私は『愛』を知ることが出来た。
【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す
おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」
鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。
え?悲しくないのかですって?
そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー
◇よくある婚約破棄
◇元サヤはないです
◇タグは増えたりします
◇薬物などの危険物が少し登場します
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
この婚約は白い結婚に繋がっていたはずですが? 〜深窓の令嬢は赤獅子騎士団長に溺愛される〜
氷雨そら
恋愛
婚約相手のいない婚約式。
通常であれば、この上なく惨めであろうその場所に、辺境伯令嬢ルナシェは、美しいベールをなびかせて、毅然とした姿で立っていた。
ベールから、こぼれ落ちるような髪は白銀にも見える。プラチナブロンドが、日差しに輝いて神々しい。
さすがは、白薔薇姫との呼び名高い辺境伯令嬢だという周囲の感嘆。
けれど、ルナシェの内心は、実はそれどころではなかった。
(まさかのやり直し……?)
先ほど確かに、ルナシェは断頭台に露と消えたのだ。しかし、この場所は確かに、あの日経験した、たった一人の婚約式だった。
ルナシェは、人生を変えるため、婚約式に現れなかった婚約者に、婚約破棄を告げるため、激戦の地へと足を向けるのだった。
小説家になろう様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる