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07 ご提案

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「ああ……そうそう。先程、父が叙爵された話をしたと思うんですが、貴族となった父は、とある夜会で未亡人と恋に落ちて結婚しましてね」

「あら、そうなの」

 嘆かわしいことだけど、大きな権力を持つ高齢男性は死に際に若く美しい女性を、まるで買うようにして伴侶に選ぶこともあるようだ。

 だから、うら若き女性だと言うのに、莫大な財産と爵位を遺されることがままある。

 ジュストのお父様なら中年になっても美男だろうし、きっとそんな女性の一人と恋に落ちたんだろう。

「ええ。そちらが侯爵位にある方で、義理の息子となった僕に、彼女がお持ちの従属爵位のひとつアシュラム伯爵を頂けることになりました」

「そうなの……凄いわ」

 力ある高位貴族がいくつも爵位を持っていることは、別に珍しいことではない。高位貴族の嫡男が、後を継ぐまで従属爵位のひとつを名乗ることだって良くあることだった。

 けれど、ただ義理の息子になったジュストに継がせるということは、かなり義母に好かれているのかもしれない。

「だから、どうします? ミシェルお嬢様」

「え?」

「選んでください。ラザールと結婚するか、僕と結婚するか……公爵位には届きませんが、伯爵令嬢の貴女に求婚出来る地位は得たので、今ならばどちらか選べますよ」

 編み上げのリボンを結び終わったのか、彼はトンと背中を軽く押して離れた。

 私は振り向いて、彼に何かを言うべきだ。

 けど、それはあまりにも大きな人生の決断過ぎて、自然と熱くなった両頬を押さえて立ち尽くすしかなかった。
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