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05 卒業式
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◇◆◇
「……それでは、これより、今年度の卒業式を執り行う!」
ランベルト様の宣言により、乙女ゲーム舞台だった貴族学校の卒業式は始まった。
ここ三年間ほど私は普通の貴族令嬢として普通の学生生活を過ごし、特に取り巻きなども作ることなく健全な友人関係を作って、悪役令嬢であったならあり得ないほどに楽しい学生生活を謳歌していた。
「……あら。イリーナ様。飲み物がなくなっているのではなくて?」
私の隣に居たエリサは聖女と呼ばれている、銀髪碧眼の美しい美女だ。今日は卒業式なので、彼女は美しい青いドレスを着ていた。
今はまだ少女の面影を残しているものの、匂い立つように美しいというのは彼女のためのあるような、不思議な色気ある女性だった。
乙女ゲームヒロインはこんなにも美しかったら、好感度の上下なんて関係ないし、一目惚れしてすべて終わってしまうような気もする。
それほどに清楚で儚げで、美しい容姿を彼女は持っていた。
「あら。エリサ様。ありがとうございます。いよいよ卒業式ですわね」
私は彼女が手渡してくれた果実水が注がれたグラスを受け取り、空になったグラスを通りがかった給仕の盆の上へ置いた。
「ええ。イリーナ様のおかげで……何もなくて、済みましたわ」
私がランベルト様にぶち撒けた乙女ゲームのすべての情報は、エリサや攻略対象者たちに共有されて、すべての悲劇は事前に回避しているそうだ。
バッドエンドフラグが立つも何も、旗そのものがすべてないのだから、彼らが苦労するものは何もなかった。
そして、イージーモードも最たるイージーモード。
すべての悲劇の芽を摘み取った状態で、最終的にラスボスをエリサが封印して、今ここにあるのは何の曇りもないハッピーエンディング。
後は、最後のダンスをランベルト様とエリサが踊って終わりかしら。
「まあ。何を言っていらっしゃるの。エリサ様が居なければ、私たちだってどうなっていたか……本当に感謝しております」
「私だって。イリーナ様から先んじて情報を得ていなかったら、大変だったと思います。本当にありがとうございます」
私たち二人はお礼を言い合って、何の危険もなく学校を卒業出来ることを喜んだ。
「それにしても、エリサ様。こんな所に居て、大丈夫なのですか? そろそろダンスの時間ですし、ランベルト様のところに行かれなくてもよろしいのですか?」
「……え?」
私がそう聞くとエリサは、とても驚いた表情になっていた。
「え?」
何かおかしな事を聞いたかしら。エリサが驚いた表情になったことに、私だって驚いていた。
私は情報をすべてぶち撒けた後、乙女ゲーム進行のすべてをランベルト様に任せていたから、私とエリサと話すのは、たまに世間話をする程度。
彼女が誰かに恋人自慢(マウント)する女性でもないから、ランベルト様とどうなっているか、全く知らなかったのだ。
もしかしたら、ランベルト様とは違う攻略対象者とハッピーエンドを迎えるのかしら……?
「あの、イリーナ様……何も、聞いていないのですか?」
おそるおそるといった調子で、エリサはそう言い、私は混乱してますますわからなくなった。
「一体、何のお話ですか?」
「イリーナ・アラゴン公爵令嬢!」
その瞬間、背後からランベルト様の声が響いた。
「……それでは、これより、今年度の卒業式を執り行う!」
ランベルト様の宣言により、乙女ゲーム舞台だった貴族学校の卒業式は始まった。
ここ三年間ほど私は普通の貴族令嬢として普通の学生生活を過ごし、特に取り巻きなども作ることなく健全な友人関係を作って、悪役令嬢であったならあり得ないほどに楽しい学生生活を謳歌していた。
「……あら。イリーナ様。飲み物がなくなっているのではなくて?」
私の隣に居たエリサは聖女と呼ばれている、銀髪碧眼の美しい美女だ。今日は卒業式なので、彼女は美しい青いドレスを着ていた。
今はまだ少女の面影を残しているものの、匂い立つように美しいというのは彼女のためのあるような、不思議な色気ある女性だった。
乙女ゲームヒロインはこんなにも美しかったら、好感度の上下なんて関係ないし、一目惚れしてすべて終わってしまうような気もする。
それほどに清楚で儚げで、美しい容姿を彼女は持っていた。
「あら。エリサ様。ありがとうございます。いよいよ卒業式ですわね」
私は彼女が手渡してくれた果実水が注がれたグラスを受け取り、空になったグラスを通りがかった給仕の盆の上へ置いた。
「ええ。イリーナ様のおかげで……何もなくて、済みましたわ」
私がランベルト様にぶち撒けた乙女ゲームのすべての情報は、エリサや攻略対象者たちに共有されて、すべての悲劇は事前に回避しているそうだ。
バッドエンドフラグが立つも何も、旗そのものがすべてないのだから、彼らが苦労するものは何もなかった。
そして、イージーモードも最たるイージーモード。
すべての悲劇の芽を摘み取った状態で、最終的にラスボスをエリサが封印して、今ここにあるのは何の曇りもないハッピーエンディング。
後は、最後のダンスをランベルト様とエリサが踊って終わりかしら。
「まあ。何を言っていらっしゃるの。エリサ様が居なければ、私たちだってどうなっていたか……本当に感謝しております」
「私だって。イリーナ様から先んじて情報を得ていなかったら、大変だったと思います。本当にありがとうございます」
私たち二人はお礼を言い合って、何の危険もなく学校を卒業出来ることを喜んだ。
「それにしても、エリサ様。こんな所に居て、大丈夫なのですか? そろそろダンスの時間ですし、ランベルト様のところに行かれなくてもよろしいのですか?」
「……え?」
私がそう聞くとエリサは、とても驚いた表情になっていた。
「え?」
何かおかしな事を聞いたかしら。エリサが驚いた表情になったことに、私だって驚いていた。
私は情報をすべてぶち撒けた後、乙女ゲーム進行のすべてをランベルト様に任せていたから、私とエリサと話すのは、たまに世間話をする程度。
彼女が誰かに恋人自慢(マウント)する女性でもないから、ランベルト様とどうなっているか、全く知らなかったのだ。
もしかしたら、ランベルト様とは違う攻略対象者とハッピーエンドを迎えるのかしら……?
「あの、イリーナ様……何も、聞いていないのですか?」
おそるおそるといった調子で、エリサはそう言い、私は混乱してますますわからなくなった。
「一体、何のお話ですか?」
「イリーナ・アラゴン公爵令嬢!」
その瞬間、背後からランベルト様の声が響いた。
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