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15 イエスしか言えない質問

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「……僕は聖女様を、避けていた訳ではないですよ」

 さっきのハミルトンさんは、私の言ったことをそのままこの人に伝えたみたい。恋愛相談には向かない人であることは、よくよく理解した。

「……目に見えて、私を避けていたと思いますけど?」

 拗ねたように私が言えば、ジュリアスは首を横に振った。

「いえ。聖女様に祝福を与えて貰った後から、力が強くなったようで……少し試してみたくて、その辺の魔物を倒していました。ですが、弱くてあまり手応えがなくて……わかりにくいですね」

「……え?」

「単に今までの僕が衰えていただけで、若返った効果だけかもしれないので……わかりませんがね。ああ、聖女様。お願いがあるんですが」

 そう言ってすぐ近くでジュリアスは余裕を見せて微笑んだので、私は微妙な気持ちになった。なんだか、彼のことで気持ちの乱高下が激しい。

 けど、それって私だけだ。彼は人生経験豊富で多分、このこともなんとも思って居ない。

「なんですか? この救世の旅を無事に終わらせるためなら、私はなんでも協力しますよ?」

 なんたって、無事に終わらないと世界が滅びてしまう。

「ああ。ちょうど良かったです。僕にまた聖女様の『祝福』を与えてもらえないかと思っていたんで」

 言い終わってすぐに素早く唇に温かな唇が軽く触れたので、私は驚いた顔のままで固まって居た。

 真顔のジュリアスはそんな私が動き出すのをじっと待っていたのか、とても顔が近い。告白を断わろうとしている人の近さでは……ないように思うんですけど。

「……どうして?」

「すみません。何度も何度も戦闘を続けていると、身体の消耗が激しく最初はなかった衰えを感じていたんです。気がつけば肌も徐々に艶がなくなり、元の姿に戻ろうとしていたのだとわかりました……ですが、こうして『祝福』を受けて理解しました。ほら。若返ったでしょう?」

 そう言ってジュリアスが大きな手を開いて見せて来たけど、不意打ちのキス前にそんなところは見ていなかった。

「……と、言うと……」

 さっきの驚きで思考停止に近い状態がまだ続いている私は、ジュリアスの言わんとしていることが未だに理解出来ていない。

「ええ。申し訳ありませんが、僕は旅の間、聖女様にこうして何度か『祝福』を与えて貰わねばなりません……よろしいですか?」

 待って……待って。これって私がどちらかを選択出来るように見せかけて、イエスしか言えない質問だよ!

 だって、団長は城へと既に帰って、息子のジュリアスが代理でここに来ていますよっていう話になってしまっているもの。ここで団長が居たらまた大混乱で、色々と不具合が出てしまう。

 それに元の姿に戻ると、私の能力がなんであるかを言うしかなく……っていうか、彼のことが好きな私にノーを言う必要性もまるでなく……。

「わっ……わかりました」

 こくこくと頷いて肯定したら、ジュリアスは安心したのかほっと息をついた。

「すみません……これはどうしても必要のあることなので、嫌だと思いますがどうか我慢してくださいね」

 そう言ってジュリアスは真面目な顔をしてとてもすまなそうにしたけど、薄い緑の目がなんとなく面白そうだったことを私は見逃していない。
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