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09 なんとかジュニア
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「……だ、団長? あの……」
「ああ。聖女様。僕のことは、どうかジュリアスとお呼びください。この国では父が子の名前を受け継ぐことも、良くありますので」
あ。私の世界でも、父親と同じだから息子はなんとかジュニアみたいなお名前もあるものね。この異世界でも、そういう文化はあるらしい。
「ジュリアス……さん?」
おそるおそるで私が名前を呼べば、彼は苦笑して首を横に振った。
「どうか、お気軽にジュリアスとお呼びください。聖女様は尊きご身分ですし、ちょうど僕はこれまで団長と呼ばれていましたから、そのまま名前で呼んで差別化が出来ればと思います」
あ……そっか。若い姿の時に団長って呼んでしまうと良くないから?
「では、ジュリアス……その、何故さっきエセルバード……殿下に私の『祝福』について、何も言わなかったんですか?」
いつも心の中で馬鹿王子を呼び捨てにしていたせいか、ついついそのまま呼びそうになったんだけど、すんでのところで敬称を付けることを思い出した。危ない。
「聖女様。これを今、誰にも明かさない理由ですが……貴女は誰かが怪我をするたびに唇を許せますか?」
「え……そ! それは!! 無理です!」
いくら気の良い騎士団の皆さんでも、怪我を治す度にキスを? それは絶対嫌。私は慌ててぶんぶんと首を横に振ったので、ジュリアスは苦笑して頷いた。
「僕は若返ると同時に、脇腹の怪我も治っています。本日大きな傷を負ったことは、周知の事実です。それが急に完治していれば、こちらが何も言わずとも聖女様の祝福の仕業ではないかと勘繰られることは間違い無いでしょう」
「たっ……確かにそうです。王子を庇って怪我をされたとなれば、あの人も知っているでしょうし」
「ええ。実際のところ……この世界での聖女の祝福とは、道中に役立てるものとしてこちらでも認識されています。もし、今キスをして若返ったり怪我を治せたりする力の有無を知っていれば、自分が負った怪我を治して欲しいと、どうしても期待してしまいますから……これは、内緒にしておきましょう」
唇に人差し指を当てたジュリアスは、自分の役目よりも私への負担を考えて、祝福が何であるかを黙っていることに決めたらしい。
騎士団を率いる彼だって団長でなくなれば、不便になってしまうだろうに。
けど、なんて紳士なの……素敵過ぎる。外見だけでなくて、内側もより素晴らしいなんてチート過ぎない?
「ありがとうございます。私……実はエセルバードにちゃんとした『祝福』があるのよって、さっきだってやり返してやりたかったけど……あの時に言わなくてよかったです……あの馬鹿王子とキスするの、絶対嫌です……あ」
私は慌てて片手を口に当てた。エセルバードのこと、馬鹿王子って呼んでいること、バレちゃった。
ジュリアスは苦笑しつつ、気にしないでと言わんばかりに手を振った。
「今の言葉は、僕は聞かなかったことにします。あれでも、一応仕える王国の王族ですので」
「すみません。ありがとうございます……」
それはそうだ。私にとっては馬鹿王子でも、ジュリアスにとっては大事な王子様だもんね。別名、厄介で高貴なお荷物だけど。
「聖女様。それでは申し訳ないが、ここに副団長のハミルトンを呼んで来てもらえますか。既に聖女召喚の時を終え、魔物復活までに時間があまりない。僕らと彼のみ知る突発的な事態は起こりましたが、このまま旅は続行せざるを得ません。騎士団を率いる団長職は、彼に任せることになりますので」
真剣な眼差しで紡がれる言葉に、私はぽーっと見惚れていたんだけど、ジュリアスが「あれ?」と言わんばかりに首を傾げたから、彼から副団長を呼んで来いと言われていたことをここでようやく認識した。
私、悪くないよ。
真剣に喋っているだけなのにも関わらずジュリアスが、思わず見惚れてしまうくらい格好良いのが悪いんだよ!
「わっ……わかりました!」
普通の大学生にはイケメン騎士様は、刺激が強いんだからね!
「ああ。聖女様。僕のことは、どうかジュリアスとお呼びください。この国では父が子の名前を受け継ぐことも、良くありますので」
あ。私の世界でも、父親と同じだから息子はなんとかジュニアみたいなお名前もあるものね。この異世界でも、そういう文化はあるらしい。
「ジュリアス……さん?」
おそるおそるで私が名前を呼べば、彼は苦笑して首を横に振った。
「どうか、お気軽にジュリアスとお呼びください。聖女様は尊きご身分ですし、ちょうど僕はこれまで団長と呼ばれていましたから、そのまま名前で呼んで差別化が出来ればと思います」
あ……そっか。若い姿の時に団長って呼んでしまうと良くないから?
「では、ジュリアス……その、何故さっきエセルバード……殿下に私の『祝福』について、何も言わなかったんですか?」
いつも心の中で馬鹿王子を呼び捨てにしていたせいか、ついついそのまま呼びそうになったんだけど、すんでのところで敬称を付けることを思い出した。危ない。
「聖女様。これを今、誰にも明かさない理由ですが……貴女は誰かが怪我をするたびに唇を許せますか?」
「え……そ! それは!! 無理です!」
いくら気の良い騎士団の皆さんでも、怪我を治す度にキスを? それは絶対嫌。私は慌ててぶんぶんと首を横に振ったので、ジュリアスは苦笑して頷いた。
「僕は若返ると同時に、脇腹の怪我も治っています。本日大きな傷を負ったことは、周知の事実です。それが急に完治していれば、こちらが何も言わずとも聖女様の祝福の仕業ではないかと勘繰られることは間違い無いでしょう」
「たっ……確かにそうです。王子を庇って怪我をされたとなれば、あの人も知っているでしょうし」
「ええ。実際のところ……この世界での聖女の祝福とは、道中に役立てるものとしてこちらでも認識されています。もし、今キスをして若返ったり怪我を治せたりする力の有無を知っていれば、自分が負った怪我を治して欲しいと、どうしても期待してしまいますから……これは、内緒にしておきましょう」
唇に人差し指を当てたジュリアスは、自分の役目よりも私への負担を考えて、祝福が何であるかを黙っていることに決めたらしい。
騎士団を率いる彼だって団長でなくなれば、不便になってしまうだろうに。
けど、なんて紳士なの……素敵過ぎる。外見だけでなくて、内側もより素晴らしいなんてチート過ぎない?
「ありがとうございます。私……実はエセルバードにちゃんとした『祝福』があるのよって、さっきだってやり返してやりたかったけど……あの時に言わなくてよかったです……あの馬鹿王子とキスするの、絶対嫌です……あ」
私は慌てて片手を口に当てた。エセルバードのこと、馬鹿王子って呼んでいること、バレちゃった。
ジュリアスは苦笑しつつ、気にしないでと言わんばかりに手を振った。
「今の言葉は、僕は聞かなかったことにします。あれでも、一応仕える王国の王族ですので」
「すみません。ありがとうございます……」
それはそうだ。私にとっては馬鹿王子でも、ジュリアスにとっては大事な王子様だもんね。別名、厄介で高貴なお荷物だけど。
「聖女様。それでは申し訳ないが、ここに副団長のハミルトンを呼んで来てもらえますか。既に聖女召喚の時を終え、魔物復活までに時間があまりない。僕らと彼のみ知る突発的な事態は起こりましたが、このまま旅は続行せざるを得ません。騎士団を率いる団長職は、彼に任せることになりますので」
真剣な眼差しで紡がれる言葉に、私はぽーっと見惚れていたんだけど、ジュリアスが「あれ?」と言わんばかりに首を傾げたから、彼から副団長を呼んで来いと言われていたことをここでようやく認識した。
私、悪くないよ。
真剣に喋っているだけなのにも関わらずジュリアスが、思わず見惚れてしまうくらい格好良いのが悪いんだよ!
「わっ……わかりました!」
普通の大学生にはイケメン騎士様は、刺激が強いんだからね!
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