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03 好みの顔は罪深い。
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旅の出立時に真っ先に紹介された彼、エセルバード・ヘーリオスは王子様然とした金髪碧眼の見目の良い男性ではあった。
「おいおい。今回の女はまるでお荷物だな。いや、置物か。一応は、聖女ではあるからな」
紹介されて早々いきなり浴びせられた暴言にぽかんとしてしまった私を馬鹿にしたようにして鼻で笑い、エセルバードは自分用の馬車へとさっさと入って行った。
え。うわ最悪。絶対ときめかないよ。あんなの。
勇者とされる王子様があれだなんて、夢も希望もないんだけど……こんな奴がヒーローだったら、異世界ものに憧れる女の子は居なくなると思う。
異世界から勝手に喚んでおいて、その言い草はなんなのよ! と、産まれた時から民主主義国家日本で生まれ育った私には、王国における王族の尊さなどを知る訳もなく鼻息荒く馬車の扉を叩いて抗議してやろうかと頭を過った。
というか、私は居なくては魔物が倒せない聖女なんだから、あいつより重要度高いよね……?
「申し訳ありません。聖女様。殿下には私が後で言って聞かせますので、どうかお許しください」
馬鹿王子の代わりに謝罪した彼をパッと見た私の顔はその時、見るからに怒っていたのかもしれない。
けれど「この人が神官の言っていたとても強い騎士団長様ね」とすんなり納得してしまえるくらいに、重厚な威厳を纏った中年男性がそこに居た。
鍛えられた身体も立派で美形なおじ様だけど、出来ればあと二十年早く会いたかったと残念に思う。
あんな王子より、騎士団長の方が絶対に礼儀正しくて格好良いのに!
周囲を見回しても一人だけやたらと長いマントを羽織っているし、絶対この人が噂の騎士団長だと思う。
……まあ、この人がそう言うなら、私も彼の顔を立てて怒りを収めてあげようかしら。
女の子の行動の基準なんてそんなもの。好みの顔は罪深い。
「あのっ……もしかして、騎士団長様ですか? 私は朝倉由真(あさくらゆま)です。この旅は四回目のベテランの貴方が居るから、絶対大丈夫って聞いています。これからどうぞ、よろしくお願いします」
私が名乗りつつ挨拶に頭を下げれば、彼は苦笑して胸に手を当てて地面に膝をつきつつ頭を下げた。
「光栄です。私は討伐隊を務めます第一騎士団を任された、ジュリアス・アルジェントと申します。聖女様。どうぞ、今回の旅のお付き合いをよろしくお願いします」
この時の私はせっかく名前を名乗ったのに、わざわざここで聖女様と呼ぶからには、何か理由があるのかもしれないとは、一瞬だけそう思った。
けれど、産まれて初めて跪いた騎士に手の甲にキスする振りをされてしまって、(これが!! 本物の騎士様なのね!!)と、心が浮かれて空高く舞い上がってしまい、そんなことはすぐにどうでも良くなってしまったのだった。
「おいおい。今回の女はまるでお荷物だな。いや、置物か。一応は、聖女ではあるからな」
紹介されて早々いきなり浴びせられた暴言にぽかんとしてしまった私を馬鹿にしたようにして鼻で笑い、エセルバードは自分用の馬車へとさっさと入って行った。
え。うわ最悪。絶対ときめかないよ。あんなの。
勇者とされる王子様があれだなんて、夢も希望もないんだけど……こんな奴がヒーローだったら、異世界ものに憧れる女の子は居なくなると思う。
異世界から勝手に喚んでおいて、その言い草はなんなのよ! と、産まれた時から民主主義国家日本で生まれ育った私には、王国における王族の尊さなどを知る訳もなく鼻息荒く馬車の扉を叩いて抗議してやろうかと頭を過った。
というか、私は居なくては魔物が倒せない聖女なんだから、あいつより重要度高いよね……?
「申し訳ありません。聖女様。殿下には私が後で言って聞かせますので、どうかお許しください」
馬鹿王子の代わりに謝罪した彼をパッと見た私の顔はその時、見るからに怒っていたのかもしれない。
けれど「この人が神官の言っていたとても強い騎士団長様ね」とすんなり納得してしまえるくらいに、重厚な威厳を纏った中年男性がそこに居た。
鍛えられた身体も立派で美形なおじ様だけど、出来ればあと二十年早く会いたかったと残念に思う。
あんな王子より、騎士団長の方が絶対に礼儀正しくて格好良いのに!
周囲を見回しても一人だけやたらと長いマントを羽織っているし、絶対この人が噂の騎士団長だと思う。
……まあ、この人がそう言うなら、私も彼の顔を立てて怒りを収めてあげようかしら。
女の子の行動の基準なんてそんなもの。好みの顔は罪深い。
「あのっ……もしかして、騎士団長様ですか? 私は朝倉由真(あさくらゆま)です。この旅は四回目のベテランの貴方が居るから、絶対大丈夫って聞いています。これからどうぞ、よろしくお願いします」
私が名乗りつつ挨拶に頭を下げれば、彼は苦笑して胸に手を当てて地面に膝をつきつつ頭を下げた。
「光栄です。私は討伐隊を務めます第一騎士団を任された、ジュリアス・アルジェントと申します。聖女様。どうぞ、今回の旅のお付き合いをよろしくお願いします」
この時の私はせっかく名前を名乗ったのに、わざわざここで聖女様と呼ぶからには、何か理由があるのかもしれないとは、一瞬だけそう思った。
けれど、産まれて初めて跪いた騎士に手の甲にキスする振りをされてしまって、(これが!! 本物の騎士様なのね!!)と、心が浮かれて空高く舞い上がってしまい、そんなことはすぐにどうでも良くなってしまったのだった。
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