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70 本当③
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「ねえ。ジョサイア。離宮に行く前に私が農園に様子を見に行ったりすることを……聞いていた?」
「ああ……気を悪くするかもしれないけど、君の行き先はずっと逐一報告するようにしている」
前に離宮で言った「行かないでくれ」は、カルムとの仲を誤解して?
「私たちって……本当に誤解ばかりしていたのね」
今こうして思うと、ばかばかしくなってしまうくらいに、見事にすれ違ってばかり。
「君が……結婚してからも相手が見つかったら、離婚しましょうと言っていたから」
「そんなこと、言ったかしら?」
私は普通に確認のつもりで聞いたんだけど、ジョサイアは目に見えて驚いていた。
「言ったよ……君が契約結婚を言い出した時に……好きだった女性が、何か大きく誤解をしているようだが、まるで口を挟む隙もなく、これでは時間を掛けてわかってもらうしかないと諦めた僕の気持ちを、今ではわかってくれる?」
まあ、ひどい……今思うと、本当に悪魔の所業だわ。全部私のしたことだけど。
「私。ショーンに自分なんて好きになってくれる人なんて居ないって、呪いを掛けられていたの」
話を変えるように私が言えば、ジョサイアは不思議そうに首を傾げた。
「……呪いですか?」
「そうなの! お前なんか俺以外に結婚してくれる奴なんて居ないって言われすぎてしまったせいで、私なんかと……という気持ちになっていたけど、今では彼が自分を優位に見せたかっただけの嘘だって理解している。けど、私は何回も言われ過ぎたせいで、そうかもしれないって心のどこかでは思うようになっていた」
「本当に許しがたいな……あの男」
「嘘だって教えてくれたのは、ジョサイアだった。本当にありがとう。私のことを好きになってくれて……」
それは、まぎれもなく心からの私の気持ちだった。
ジョサイアが泣いていた私のことを気にしてくれるようになり、奇跡的に好きになってくれたのも、今のこの気持ちを味わうためだったと思えるくらい……。
「レニエラ……ああ。そうでした。覚えています?」
ジョサイアがまた顔を赤らめたので、私は何を言い出したのだろうと思った。
「何かしら?」
「昼も夜も求められて大変……なんでしたっけ? 聞いている人も多かったので、噂もすぐに広まるでしょうね」
そういえば、ジョサイアの背後には多くの兵士がいた……私ったら、本当になんてことをしたの!
「待って。ジョサイア! ……本当にごめんなさい。私ったら……つい、見栄をはりたくて、あんなこと」
「良いですよ。別に……本当にすれば、良いことなので」
彼の顔が間近に近付いたので、二度目の私は心得たように瞼を閉じた。
「ああ……気を悪くするかもしれないけど、君の行き先はずっと逐一報告するようにしている」
前に離宮で言った「行かないでくれ」は、カルムとの仲を誤解して?
「私たちって……本当に誤解ばかりしていたのね」
今こうして思うと、ばかばかしくなってしまうくらいに、見事にすれ違ってばかり。
「君が……結婚してからも相手が見つかったら、離婚しましょうと言っていたから」
「そんなこと、言ったかしら?」
私は普通に確認のつもりで聞いたんだけど、ジョサイアは目に見えて驚いていた。
「言ったよ……君が契約結婚を言い出した時に……好きだった女性が、何か大きく誤解をしているようだが、まるで口を挟む隙もなく、これでは時間を掛けてわかってもらうしかないと諦めた僕の気持ちを、今ではわかってくれる?」
まあ、ひどい……今思うと、本当に悪魔の所業だわ。全部私のしたことだけど。
「私。ショーンに自分なんて好きになってくれる人なんて居ないって、呪いを掛けられていたの」
話を変えるように私が言えば、ジョサイアは不思議そうに首を傾げた。
「……呪いですか?」
「そうなの! お前なんか俺以外に結婚してくれる奴なんて居ないって言われすぎてしまったせいで、私なんかと……という気持ちになっていたけど、今では彼が自分を優位に見せたかっただけの嘘だって理解している。けど、私は何回も言われ過ぎたせいで、そうかもしれないって心のどこかでは思うようになっていた」
「本当に許しがたいな……あの男」
「嘘だって教えてくれたのは、ジョサイアだった。本当にありがとう。私のことを好きになってくれて……」
それは、まぎれもなく心からの私の気持ちだった。
ジョサイアが泣いていた私のことを気にしてくれるようになり、奇跡的に好きになってくれたのも、今のこの気持ちを味わうためだったと思えるくらい……。
「レニエラ……ああ。そうでした。覚えています?」
ジョサイアがまた顔を赤らめたので、私は何を言い出したのだろうと思った。
「何かしら?」
「昼も夜も求められて大変……なんでしたっけ? 聞いている人も多かったので、噂もすぐに広まるでしょうね」
そういえば、ジョサイアの背後には多くの兵士がいた……私ったら、本当になんてことをしたの!
「待って。ジョサイア! ……本当にごめんなさい。私ったら……つい、見栄をはりたくて、あんなこと」
「良いですよ。別に……本当にすれば、良いことなので」
彼の顔が間近に近付いたので、二度目の私は心得たように瞼を閉じた。
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