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57 懐かしい顔②
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「オフィーリア様は、素敵な女性でしたわ。私もあんな風になりたいです」
自分がやりたいことをして輝いている人だし、世間からどんな非難を受けようとも、絶対に凹んだりしない人だと知っている。
「……レニエラが彼女になりたいと思うことは止めませんが、出来れば態度より言葉で言ってくれれば助かります。今までのように」
ジョサイアはオフィーリア様に何も言われずに、いきなり逃げ出されたことを言いたいのかもしれない。
何か言いたいことがあるのなら……言葉で伝えなければ、伝わらないと。
「もちろんです。あの私……ジョサイアのこと、好きなんです。結婚式前に言ったことを、取り消させてください」
愛して欲しいなどと望んでおりません、なんて……そんな訳はなかった。ただの強がりだ。
彼に愛されたいし、望まれるのならずっと傍に居たいと思った。
私が顔を熱くしてそういうと、ジョサイアは嬉しそうに頷いた。
「そう言って貰えると嬉しいです。僕らは一年後には、離婚しなくて済みそうですね」
そう言って、ジョサイアは私のことを抱きしめた。私も遠慮がちにだけど、彼の背中に手を伸ばして抱き返せば、耳元で掠れた声が聞こえた。
「良かった……本当に嬉しいです」
顔合わせをした当初からジョサイアは私になんて、もったいないくらいの人だと思っていた。だって、あまりに揃い過ぎていて、パッと話を聞けば胡散くさい話だと思ってしまうくらいだもの。
強がってしまうのも、仕方ないとは思う。ただの言い訳だけど。
また、いつ捨てられるか怯えるよりも、自分の方が先に諦めて仕舞えば……その方が楽だもの。
けど、ジョサイアは私が良いと思って求婚してくれたと知った。結婚式はひと月前だけど、やっと私たちは夫婦の道を歩み出したのだ。
ちょうどその時、扉を叩く音がして私たちは慌てて離れた。
「入ってきても良い……なんだ?」
「旦那様、城からの呼び出しです」
城からの呼び出しであれば、恐らく陛下だろう。一度帰ったはずの彼を呼び出すなんて、何かとんでもないことがあったのかもしれない。
空気の読める若い執事は邪魔をされたと思っている様子のジョサイアの不機嫌を感じ取ったのか、慌てて扉を閉めた。
「すみません。レニエラ。先に眠っていてください」
ジョサイアは事態を察したのか、ため息をついてそう言ったけど、私は微笑んで首を横に振った。
「いいえ。謝ることはありません。お仕事ですもの。仕方ないですわ」
「ええ。これから、僕らにはいくらでも時間はありますからね」
そう言ってジョサイアは自然に近づき、私に結婚式以来のキスをした。
自分がやりたいことをして輝いている人だし、世間からどんな非難を受けようとも、絶対に凹んだりしない人だと知っている。
「……レニエラが彼女になりたいと思うことは止めませんが、出来れば態度より言葉で言ってくれれば助かります。今までのように」
ジョサイアはオフィーリア様に何も言われずに、いきなり逃げ出されたことを言いたいのかもしれない。
何か言いたいことがあるのなら……言葉で伝えなければ、伝わらないと。
「もちろんです。あの私……ジョサイアのこと、好きなんです。結婚式前に言ったことを、取り消させてください」
愛して欲しいなどと望んでおりません、なんて……そんな訳はなかった。ただの強がりだ。
彼に愛されたいし、望まれるのならずっと傍に居たいと思った。
私が顔を熱くしてそういうと、ジョサイアは嬉しそうに頷いた。
「そう言って貰えると嬉しいです。僕らは一年後には、離婚しなくて済みそうですね」
そう言って、ジョサイアは私のことを抱きしめた。私も遠慮がちにだけど、彼の背中に手を伸ばして抱き返せば、耳元で掠れた声が聞こえた。
「良かった……本当に嬉しいです」
顔合わせをした当初からジョサイアは私になんて、もったいないくらいの人だと思っていた。だって、あまりに揃い過ぎていて、パッと話を聞けば胡散くさい話だと思ってしまうくらいだもの。
強がってしまうのも、仕方ないとは思う。ただの言い訳だけど。
また、いつ捨てられるか怯えるよりも、自分の方が先に諦めて仕舞えば……その方が楽だもの。
けど、ジョサイアは私が良いと思って求婚してくれたと知った。結婚式はひと月前だけど、やっと私たちは夫婦の道を歩み出したのだ。
ちょうどその時、扉を叩く音がして私たちは慌てて離れた。
「入ってきても良い……なんだ?」
「旦那様、城からの呼び出しです」
城からの呼び出しであれば、恐らく陛下だろう。一度帰ったはずの彼を呼び出すなんて、何かとんでもないことがあったのかもしれない。
空気の読める若い執事は邪魔をされたと思っている様子のジョサイアの不機嫌を感じ取ったのか、慌てて扉を閉めた。
「すみません。レニエラ。先に眠っていてください」
ジョサイアは事態を察したのか、ため息をついてそう言ったけど、私は微笑んで首を横に振った。
「いいえ。謝ることはありません。お仕事ですもの。仕方ないですわ」
「ええ。これから、僕らにはいくらでも時間はありますからね」
そう言ってジョサイアは自然に近づき、私に結婚式以来のキスをした。
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