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37 誤解②

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「信じられないみたいだけど、そうなの! だとすれば、自分から好きな人が出来たから婚約解消してくれと私や親に頭を下げるべきなのに、自分の結婚すら役目や仕事の一部だと思っていたんでしょうね。特に現王アルベルト陛下は若年で即位したばかり、側近の自分が、婚約解消して本当に好きな人と……なんて、そんな理由で問題を起こすのは得策ではないと思って居たのかもしれないわね」

「あ……確かに、そうかもしれないです……」

 ジョサイアは、真面目な性格だ。だから、仕えるアルベルト様の治世が不安定なのに、身近な自分の何かで世間を騒がせたくないと考えていたのかもしれない。

「けど、それって、ジョサイアの問題でしょ? 私には、一切関係ないもの」

「そ……それは、確かにそうです」

 それは、ごもっとも過ぎて何も言えない。婚約者なのだから、ジョサイアの仕事の事情は理解すべきとは言っても、二人の問題なのだから、それは彼女が決めることだ。

「親に決められた婚約者だからと、他の女性を想い続ける男に一生愛している振りをされるなんて、絶対に嫌なの。私は愛する人に愛されて、そして、そんな結婚するのに値する人なの」

「……はい。そうですね。確かに、そう思います」

 彼女の言い分を聞いて、私は自然とそう言っていた。

 オフィーリア様は確かに、私が当初から思っていた通り、我が儘な自分勝手な部分を持っている女性なのかもしれない。

 ……けど、彼女が誰にどう思われても自分の望む幸せを欲したいと思うことに、誰が文句を言えるというの?

「ふふ。ありがとう……けど、別にレニエラ様にここで自信過剰だの、なんと思われようが、どうでも良いわ。だって、自分がどれだけの価値を持っているかを決めるのは、他の誰かでもなくて……私、ただ一人だけだもの」

「すごく……素敵です。私は、婚約破棄されてから……自分の価値がなくなったと思いました。だから、自分で仕事を持って、一人で生きて行こうと」

 オフィーリア様は強くて、自分の芯を持っている。自分の価値は自分で決めると言った通り、もはや、社交界で下される評価なんか、どうでも良いのだと思う。

 私はそれを失ってそれこそどん底まで絶望したというのに、彼女はだからそれが何? と軽く笑い飛ばして、好きな人生を生きようとしている。

 それに、私はオフィーリア様という人と、これまでにちゃんと話したこともなかった。それなのに、誰かから話を聞いただけで……彼女はわがままで自分勝手で、嫌な女性なのではないかという決めつけをしていたのだと思う。

 だって……彼女が愛し合ってたはずのジョサイアとの結婚式直前に何故駆け落ちをしようとしたのかという理由を、一度でも深く考えようとしたことはあっただろうか?

「あら……何を言っているの。たった一人の男に失礼な態度を取られたからと、だから何よ。婚約破棄を言い出した婚約者の顔にホールケーキをぶつけた話を聞いた時は、私もやってやったわね! と、楽しく思ったわ」

「あ……ありがとうございます……」

 それは……知っているわよね。大騒ぎになったらしいもの。
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