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34 港町②
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物思いにふけっていたら、移動時間は短く感じシュラハトへの到着はすぐだった。
「……奥様。シュラハトへ到着いたしました」
「わかりました。私は知り合いに会いに行って来るわ……貴方たちはここで、待機していて。時間がかかるかもしれないし、夕飯でも好きに食べて来なさい」
共用の車止めに馬車を置いているので、私は彼らに指示をした。
二人の御者は顔を見合わせて、私の気を使った指示に困惑しているようだ。
……どうしてかしら。私は以前にもオフィーリア様の情報を求めてこの街に来たけど、その時はすんなりと今の指示で従ってくれたけど。
「奥様。申し訳ございません。ご主人様より、奥様をお一人にしないようにと伺っております」
「まあ! そんなことを……ジョサイアが言ったの?」
二人は女主人の私に逆らうことを恐れているのか、何度か頷き、大きな身体を縮こめた。
……確かにモーベット侯爵ジョサイアの指示なら、私より優先されるべきだわ。二人の困った顔を見るに、私がここで我を押し通す訳にもいかない。
「申し訳ありません。奥様」
「いいえ。貴方たちが謝ることはないわ。夫からの指示なら、仕方ないわね。一緒にいらっしゃい。行き先は高級宿だから、貴方たちの夕飯は、そこで食べられないかもしれないけど……」
彼らは御者なので、あの高級宿の客にはなり得ない。ドレスコードがあるからだ。私が心配してそう言えば、二人は競うように大丈夫だと頷いた。
そういえば、ジョサイアは私が誰と会うのかを気にしていたから、私の交友関係を把握しておきたのかもしれない。
彼は王の側近で、宰相補佐だもの。妻の社交での情報漏洩などにも、細心の注意を払っているかしら。
オフィーリア様の居るという高級宿は、前にも確認したことがあった。私は迷うことなく、辿り着くことが出来た。
宿屋の受付で彼女を訪ねてきたと言えば、確認を経てすんなりと部屋へと案内され、逆に上手く行き過ぎて戸惑ってしまった。
私は豪華な応接間にあるソファへと座り、緊張しながらオフィーリア様を待った。
まずは、何を話せば良いかしら……とにかく、ジョサイアの気持ちはまだ彼女にあると伝えねば。
唐突に扉が開いて、私は驚いて目を見張った。あら……考え込んでいて、彼女のノックの音に気がつかなかったかもしれない。
想像していたよりも、断然に美しい女性だった。絹糸のような金色の髪に、輝く緑色の目。人形のような顔には、不機嫌そうな警戒が見えている。
「あ……はじめまして。私は……」
「知っているわ。はじめまして。ジョサイアの奥様。私に何の用?」
こんな風に自己紹介をしようとしてぶしつけに遮られたのは、初めてのことだった。戸惑いを隠せずに、私は用件を口にした。
「あの……ジョサイアのことで」
「ジョサイアのことって……私に、何を聞きたいの? けど、貴女と結婚したと聞いて、安心したわ。臆病者の意気地なしも、結婚したい人に結婚したいと言えたのね」
「……え? あの?」
彼女の言葉の意味がわからずに私が驚いて言葉を失っていると、オフィーリア様は私の胸の辺りを見て眉を寄せ嫌そうに言った。
「正直に言えば、私は無関係になったジョサイアのことなんて、どうでも良いの。私がイラつくのは、その胸よ! 一体何を食べたら、そんな風になるの?」
私は確かに、同世代の女性の中では胸は大きめだ。オフィーリア様は妖精のように細身の体型なので、胸が大きいとは言えない。
「え? ふっ……普通です……」
思わぬ話の展開に、戸惑うしかない。夫の元婚約者に会いに来て、胸が気に入らないって言われるなんて思わないもの。
「……奥様。シュラハトへ到着いたしました」
「わかりました。私は知り合いに会いに行って来るわ……貴方たちはここで、待機していて。時間がかかるかもしれないし、夕飯でも好きに食べて来なさい」
共用の車止めに馬車を置いているので、私は彼らに指示をした。
二人の御者は顔を見合わせて、私の気を使った指示に困惑しているようだ。
……どうしてかしら。私は以前にもオフィーリア様の情報を求めてこの街に来たけど、その時はすんなりと今の指示で従ってくれたけど。
「奥様。申し訳ございません。ご主人様より、奥様をお一人にしないようにと伺っております」
「まあ! そんなことを……ジョサイアが言ったの?」
二人は女主人の私に逆らうことを恐れているのか、何度か頷き、大きな身体を縮こめた。
……確かにモーベット侯爵ジョサイアの指示なら、私より優先されるべきだわ。二人の困った顔を見るに、私がここで我を押し通す訳にもいかない。
「申し訳ありません。奥様」
「いいえ。貴方たちが謝ることはないわ。夫からの指示なら、仕方ないわね。一緒にいらっしゃい。行き先は高級宿だから、貴方たちの夕飯は、そこで食べられないかもしれないけど……」
彼らは御者なので、あの高級宿の客にはなり得ない。ドレスコードがあるからだ。私が心配してそう言えば、二人は競うように大丈夫だと頷いた。
そういえば、ジョサイアは私が誰と会うのかを気にしていたから、私の交友関係を把握しておきたのかもしれない。
彼は王の側近で、宰相補佐だもの。妻の社交での情報漏洩などにも、細心の注意を払っているかしら。
オフィーリア様の居るという高級宿は、前にも確認したことがあった。私は迷うことなく、辿り着くことが出来た。
宿屋の受付で彼女を訪ねてきたと言えば、確認を経てすんなりと部屋へと案内され、逆に上手く行き過ぎて戸惑ってしまった。
私は豪華な応接間にあるソファへと座り、緊張しながらオフィーリア様を待った。
まずは、何を話せば良いかしら……とにかく、ジョサイアの気持ちはまだ彼女にあると伝えねば。
唐突に扉が開いて、私は驚いて目を見張った。あら……考え込んでいて、彼女のノックの音に気がつかなかったかもしれない。
想像していたよりも、断然に美しい女性だった。絹糸のような金色の髪に、輝く緑色の目。人形のような顔には、不機嫌そうな警戒が見えている。
「あ……はじめまして。私は……」
「知っているわ。はじめまして。ジョサイアの奥様。私に何の用?」
こんな風に自己紹介をしようとしてぶしつけに遮られたのは、初めてのことだった。戸惑いを隠せずに、私は用件を口にした。
「あの……ジョサイアのことで」
「ジョサイアのことって……私に、何を聞きたいの? けど、貴女と結婚したと聞いて、安心したわ。臆病者の意気地なしも、結婚したい人に結婚したいと言えたのね」
「……え? あの?」
彼女の言葉の意味がわからずに私が驚いて言葉を失っていると、オフィーリア様は私の胸の辺りを見て眉を寄せ嫌そうに言った。
「正直に言えば、私は無関係になったジョサイアのことなんて、どうでも良いの。私がイラつくのは、その胸よ! 一体何を食べたら、そんな風になるの?」
私は確かに、同世代の女性の中では胸は大きめだ。オフィーリア様は妖精のように細身の体型なので、胸が大きいとは言えない。
「え? ふっ……普通です……」
思わぬ話の展開に、戸惑うしかない。夫の元婚約者に会いに来て、胸が気に入らないって言われるなんて思わないもの。
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