心がきゅんする契約結婚~貴方の(君の)元婚約者って、一体どんな人だったんですか?~

待鳥園子

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11 契約締結②

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「ジョサイア。我慢しなければいけないのは、これから一年間だけです。そうすれば、私の方に非があるという適当な理由で別れましょう」

「え? 何を言い出して……」

「気にしなくても構いません。公衆の面前で婚約破棄されて底辺まで落ちてしまった私の評判に、一度離婚したという事実が加わるだけですから」

 ただの事実なのにジョサイアは、それを聞いて唖然としてから、とても困った顔になっていた。

 彼は優しくて紳士的だから、たとえそれがまぎれもない事実だとしても、これには安易に同意は出来ないと思ったのかもしれない。

 けど、先方に何か理由があったとしても、私がある男性に夜会中婚約破棄されたという悲劇的な過去は、事実あったことなので消せない。

 私はこれまでに、忘れがたい過去を乗り越えるための努力をして来て、一人だとしても実業家として前を向いて生きていくと決めた。

 ジョサイアだって、それは理解してくれているはずだ。

「……その、例えばですが、レニエラ。もし、君がその時に僕を愛してくれていたら、一年経っても、結婚生活を続けてくれますか」

 慎重な口調で話を切り出したジョサイアに、私は笑って首を横に振った。

「まあ。ジョサイア……私に気を使ってくれて、本当にありがとう。けれど、大丈夫よ。貴方は愛する女性に突然去られたばかりで、大きな傷を癒すのはそうそう簡単ではないことを……私だって理解しているわ」

 とは言え、彼の事情とは違って、私は元婚約者を愛してはいなかったけど、幼い頃からの婚約が駄目になって傷ついたことは一緒のはずよ。

 ジョサイアは私の言葉を聞いて、とても悲しそうな表情になり、何かを飲み込むようにして間をおいた。

「……わかりました。一年後に僕が君を愛していて、君も僕を愛してくれれば、それでもう、僕たち二人の結婚生活の継続には、何の問題もないということですね?」

「ええ。それは、そうだけど」

 そんなこと、あるはずがないわ。私は言いかけて止めた。なんだか、ここで言ってはいけない気がしたからだ。

 ジョサイアは……いきなり、何を言い出したんだろう。私が出した契約結婚の条件には、彼側は何の不利益もないはずだけど。

「レニエラ。僕たちは、あまりお互いのことを知らない。急に夫婦になったところから関係を始めることになるけど、これからゆっくりと、知り合っていきたい。僕が今ここで言葉を重ねて何を言ったところで、君に嘘だと判断されれば、それには何の意味もないと思う」

「そうね。まだ私たちは、初対面で挨拶し合って二週間だもの。けど、別に同情したり気を使わなくて良いわ……私は、一人でも大丈夫だから」

 そろそろこの話を切り上げようと、私がソファから立ち上がれば、ジョサイアは礼儀正しく酔ってよろめきつつも立ち上がった。
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