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16 彼の言い分②
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黒木くんをパッと見ると、私の手首を離して、目に見てわかるくらいに怯えているようだった。
「……黒木、やっぱりお前も、思い出していたんだろう? どうして、猫塚に何も言わない?」
藤崎くんは怒っているようだ。黒木くんが、何かを隠しているから……?
黒木くんは開き直ったかのように、目の前に居る藤崎くんをキッと睨みつけていた。
「藤崎。猫塚さんは、お前の事を怖がっていた。仕方ないと思わないか。あんな風な最期だったんだ。お前が守れなかったことは事実なんだから」
「……お前は自分のせいでああなったことを、まだ言ってないのか?」
へっ!?
私は二人の会話を聞いていて、物凄く驚いてしまった。なんとおっしゃられました?
黒木くんのせいで私……前世で死んじゃったってこと?
「不可抗力です。あの結果を、僕が望んだ訳では……」
黒木くんは、はぎれ悪くそう言った。
なになに……私は黙って聞いているだけだけど……これだと、悪者は黒木くんだったって事にならない?
「何が不可抗力だ。猫塚の前世の記憶が戻ったことも知っていたな? どうして、何も言わなかった? 俺でなくても、言える人間は居ただろう」
藤崎くんは怒っている。黒木くんが私の記憶について黙っていたから?
……ううん。私には藤崎くんと話したことないって言っていた。私にも危険な男だから、近寄らない方が良いって……けど、藤崎くんは黒木くんのことを知っているみたい。
これだけで嘘だとわかってしまう。
最初黒木くんと話した時に記憶が戻っている人が、この中学校内に他にも居るって言っていた。
けど、それは私にも言えないって……名前がわからないと、私は確認することも出来ないもんね。
最初に前世の記憶が戻ったことを知っている、黒木くんの言い分を信じるだけになってしまう。
「……黒木くん。私には、藤崎くんに近寄らない方が良いって言ったよね?」
私がふるえる声で口を挟めば藤崎くんはより怒ってしまうし、黒木くんの細い目はより細くなった。
前世のことだって……わかっている。私たちは現代を生きる中学生で、前世なんてもう意味は持たないってことはわかっている。
けど、黒木くんが前世の私を裏切って、殺してしまって、それを誤魔化すために藤崎くんについて嘘をついたってこと?
……こんな事をした人を、信じられる訳ないよね。
私が不信感を持って黒木くんを見れば、彼はぶんぶんと首を横に振った。
「そんなつもりはない! そんなつもりはないけど……けど、でも」
「でもって、なんなんだよ。俺は猫塚の記憶が戻る事を待っていたし、それはお前だってわかっていたはずだろう。なんで、俺に近づくなって言うんだ? ちゃんと説明しろよ。もう、これは逃げられないぞ」
藤崎くんは今まで私に見せていた爽やかで優しい対応はどこかに置いてきてしまったのか、怒っている感情をそのままに黒木くんを追い詰めているようだった。
「……猫塚さんが記憶を取り戻したことは、藤崎だってなんとなく気がついていただろう。僕は隠していたつもりはない」
かなりの間無言だった黒木くんは、眉間に皺を寄せてそう言った。
「ああ。そうなのか。けど、なんで猫塚に俺に近づくなって言ったんだ?」
藤崎くんは淡々とした口調で言った。私もそれは知りたい。私は亡くなったあの場面しか覚えていないから、黒木くんの言い分をずっと信じていた。
けど、これだと……。
「……黒木、やっぱりお前も、思い出していたんだろう? どうして、猫塚に何も言わない?」
藤崎くんは怒っているようだ。黒木くんが、何かを隠しているから……?
黒木くんは開き直ったかのように、目の前に居る藤崎くんをキッと睨みつけていた。
「藤崎。猫塚さんは、お前の事を怖がっていた。仕方ないと思わないか。あんな風な最期だったんだ。お前が守れなかったことは事実なんだから」
「……お前は自分のせいでああなったことを、まだ言ってないのか?」
へっ!?
私は二人の会話を聞いていて、物凄く驚いてしまった。なんとおっしゃられました?
黒木くんのせいで私……前世で死んじゃったってこと?
「不可抗力です。あの結果を、僕が望んだ訳では……」
黒木くんは、はぎれ悪くそう言った。
なになに……私は黙って聞いているだけだけど……これだと、悪者は黒木くんだったって事にならない?
「何が不可抗力だ。猫塚の前世の記憶が戻ったことも知っていたな? どうして、何も言わなかった? 俺でなくても、言える人間は居ただろう」
藤崎くんは怒っている。黒木くんが私の記憶について黙っていたから?
……ううん。私には藤崎くんと話したことないって言っていた。私にも危険な男だから、近寄らない方が良いって……けど、藤崎くんは黒木くんのことを知っているみたい。
これだけで嘘だとわかってしまう。
最初黒木くんと話した時に記憶が戻っている人が、この中学校内に他にも居るって言っていた。
けど、それは私にも言えないって……名前がわからないと、私は確認することも出来ないもんね。
最初に前世の記憶が戻ったことを知っている、黒木くんの言い分を信じるだけになってしまう。
「……黒木くん。私には、藤崎くんに近寄らない方が良いって言ったよね?」
私がふるえる声で口を挟めば藤崎くんはより怒ってしまうし、黒木くんの細い目はより細くなった。
前世のことだって……わかっている。私たちは現代を生きる中学生で、前世なんてもう意味は持たないってことはわかっている。
けど、黒木くんが前世の私を裏切って、殺してしまって、それを誤魔化すために藤崎くんについて嘘をついたってこと?
……こんな事をした人を、信じられる訳ないよね。
私が不信感を持って黒木くんを見れば、彼はぶんぶんと首を横に振った。
「そんなつもりはない! そんなつもりはないけど……けど、でも」
「でもって、なんなんだよ。俺は猫塚の記憶が戻る事を待っていたし、それはお前だってわかっていたはずだろう。なんで、俺に近づくなって言うんだ? ちゃんと説明しろよ。もう、これは逃げられないぞ」
藤崎くんは今まで私に見せていた爽やかで優しい対応はどこかに置いてきてしまったのか、怒っている感情をそのままに黒木くんを追い詰めているようだった。
「……猫塚さんが記憶を取り戻したことは、藤崎だってなんとなく気がついていただろう。僕は隠していたつもりはない」
かなりの間無言だった黒木くんは、眉間に皺を寄せてそう言った。
「ああ。そうなのか。けど、なんで猫塚に俺に近づくなって言ったんだ?」
藤崎くんは淡々とした口調で言った。私もそれは知りたい。私は亡くなったあの場面しか覚えていないから、黒木くんの言い分をずっと信じていた。
けど、これだと……。
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