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15 彼の言い分①
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「それは……その」
「うん。何?」
早く聞きたい。早く教えて欲しい。そんな思いで黒木くんを見つめると、彼はなぜか照れている様子だった。
「実は……猫塚さんと僕は、付き合っていたんですけど……覚えていません?」
私はそれを聞いて、ぽかんとしてしまった。
何々……そういう雰囲気なんて、今までひとかけらもなかったよね?
「え。だって、そんな訳ないよ。あのお姫様……前世の婚約者のことが、好きだったからずっと信じてて、それで最期に裏切られたんだよね?」
そんな人が違う人と付き合ったりするだろうか……絶対、おかしいよ。
私は彼女の中に居たから、わかる……お姫様は婚約者のことを愛していたし、彼を信じていた。信じていたのに裏切られた……すごく傷ついていた。
私ではないから、まるで他人事のようではあるけれど、生々しい感情は伝わって来たので、そんな状態の彼女に他の人と付き合う余裕なんて、あるはずがない。
「いや、それは……」
黒木くんは言い返したことに対して、すごく動揺しているようだった。
私はそんな彼を見て、なんだかおかしいと感じていた。
今までずっとなんとなく、黒木くんって私の味方だと思っていたけど……前世の記憶では、黒木くんっぽい前世の彼に対して、どういう感情を持っていたんだろう。
確か夢の中では、お姫様に婚約者の彼が裏切ったと伝えていたはずだ。
お姫様の心の中は、婚約者の事で満たされていたから……彼女が彼を裏切るはずはない……。
だから、付き合っていた関係でないことは確かだと思う。
……けど、黒木くんはここで嘘をついた。
どうして?
私が不審の眼差しを向けていると、黒木くんは目に見えて動揺していた。
……前世の話を聞いていたのは、彼一人だった。他にも記憶が戻った人も居るらしいけれど、私は黒木くんしか知らないから、彼の言うことを鵜呑みにしていた。
全部そのまま信じていたけど、藤崎くんの話だってもしかして、嘘が混じっていたとしたら……?
「……私。もう帰る」
黒木くんが変な態度になってしまっている今、彼の話を聞くこともためらわれて、私は振り返って立ち去ろうとした。
けれど、手首をつかまれて動けなくなった。
「待ってください。猫塚さん。僕の話を聞いてください」
「……聞けません。だって、前世の黒木くんとあのお姫様が付き合っていたなんて、思えないもの。婚約者のことを愛していたから、信じていて……裏切られて殺されたのに、どうして、他の人と付き合ったりするの」
振り向いた私は真っ直ぐに黒木くんのことを見た。黒木くんだって、矛盾していると自分でも思って居たのか、にがい表情を顔に浮かべていた。
「それは、色々事情があるんです。話を聞いてくれれば、わかってくれるはずです」
「嫌って言ってるでしょう。だって、今思うと黒木くんが藤崎くんを危ない男だから近付くなって言って居たでしょう。私は亡くなる一歩手前しか思い出していないから、わからないけど……どうして、そんな事を言ったの?」
前世は前世で、藤崎くんは何も思って居ないかもしれない。
けれど、やたらと藤崎くんに警戒心が湧いてしまったのも、そういえば黒木くんの話を聞いてからだ。
「それはね……この男が、隠していることがあるからだよ」
声が聞こえた方向を見ると、そこには藤崎くんが居た。
見るからに怒っていて……多分彼が怒っている対象ではない私も、逃げ出したいくらい怖い。
「うん。何?」
早く聞きたい。早く教えて欲しい。そんな思いで黒木くんを見つめると、彼はなぜか照れている様子だった。
「実は……猫塚さんと僕は、付き合っていたんですけど……覚えていません?」
私はそれを聞いて、ぽかんとしてしまった。
何々……そういう雰囲気なんて、今までひとかけらもなかったよね?
「え。だって、そんな訳ないよ。あのお姫様……前世の婚約者のことが、好きだったからずっと信じてて、それで最期に裏切られたんだよね?」
そんな人が違う人と付き合ったりするだろうか……絶対、おかしいよ。
私は彼女の中に居たから、わかる……お姫様は婚約者のことを愛していたし、彼を信じていた。信じていたのに裏切られた……すごく傷ついていた。
私ではないから、まるで他人事のようではあるけれど、生々しい感情は伝わって来たので、そんな状態の彼女に他の人と付き合う余裕なんて、あるはずがない。
「いや、それは……」
黒木くんは言い返したことに対して、すごく動揺しているようだった。
私はそんな彼を見て、なんだかおかしいと感じていた。
今までずっとなんとなく、黒木くんって私の味方だと思っていたけど……前世の記憶では、黒木くんっぽい前世の彼に対して、どういう感情を持っていたんだろう。
確か夢の中では、お姫様に婚約者の彼が裏切ったと伝えていたはずだ。
お姫様の心の中は、婚約者の事で満たされていたから……彼女が彼を裏切るはずはない……。
だから、付き合っていた関係でないことは確かだと思う。
……けど、黒木くんはここで嘘をついた。
どうして?
私が不審の眼差しを向けていると、黒木くんは目に見えて動揺していた。
……前世の話を聞いていたのは、彼一人だった。他にも記憶が戻った人も居るらしいけれど、私は黒木くんしか知らないから、彼の言うことを鵜呑みにしていた。
全部そのまま信じていたけど、藤崎くんの話だってもしかして、嘘が混じっていたとしたら……?
「……私。もう帰る」
黒木くんが変な態度になってしまっている今、彼の話を聞くこともためらわれて、私は振り返って立ち去ろうとした。
けれど、手首をつかまれて動けなくなった。
「待ってください。猫塚さん。僕の話を聞いてください」
「……聞けません。だって、前世の黒木くんとあのお姫様が付き合っていたなんて、思えないもの。婚約者のことを愛していたから、信じていて……裏切られて殺されたのに、どうして、他の人と付き合ったりするの」
振り向いた私は真っ直ぐに黒木くんのことを見た。黒木くんだって、矛盾していると自分でも思って居たのか、にがい表情を顔に浮かべていた。
「それは、色々事情があるんです。話を聞いてくれれば、わかってくれるはずです」
「嫌って言ってるでしょう。だって、今思うと黒木くんが藤崎くんを危ない男だから近付くなって言って居たでしょう。私は亡くなる一歩手前しか思い出していないから、わからないけど……どうして、そんな事を言ったの?」
前世は前世で、藤崎くんは何も思って居ないかもしれない。
けれど、やたらと藤崎くんに警戒心が湧いてしまったのも、そういえば黒木くんの話を聞いてからだ。
「それはね……この男が、隠していることがあるからだよ」
声が聞こえた方向を見ると、そこには藤崎くんが居た。
見るからに怒っていて……多分彼が怒っている対象ではない私も、逃げ出したいくらい怖い。
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