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11 二度目の放課後①
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「……猫塚さん。待たせた?」
放課後、私はドキドキしながらA組の藤崎くんを待っていた。
教室の中には私一人。今はテスト前だから、県大会へ進んだ運動部以外の部活だって、ほぼ休みなのだ。
「待ってないよ。ありがとう。今日もよろしくお願いします」
私は走って逃げたい気持ちを抑えつつ、待っていた。
だって、数学を頼まれて教えてくれているだけで、本当にありがたいという気持ちしかないんだよ。
……私の心の中にある微妙な問題は、まあ置いておくにしても。何。前世の記憶って。自分でも意味わかんなくて、説明しづらいこの気持ち。
藤崎くんの実力は、今日の数学の時間で実証済み。先生も正直『まさか解けると思ってなかった』みたいな、失礼な表情をしていたもん!
すっごく頼りになる家庭教師であることは、間違いない。頼んだのはこっちだし、今更断るのもおかしい。
だとしたら、家庭教師してくれる時間を有意義に使わせていただきます!
「……それじゃあ、今日も始める?」
私は机の上に教科書参考書などを開いて、鞄を近くの机の上に置いた藤崎くん待ちの体勢になった。
え。近付いて来た藤崎くん良い匂いする……香水とかでもない……なんだろう。この匂い。なんだか、懐かしいような……。
「猫塚さんって、部活入ってないの?」
藤崎くんは筆記用具を出しながら、なんでもない世間話を切り出した。藤崎くんは昼休みバスケをして楽しんでいることからわかる通り、バスケをずっとしているらしいんだよね。
ということを、私が知っているというのもおかしいのかもしれないけど、藤崎くんは人気者なのでそういう情報を集めていなくても集まるのだ。
「え! ……あ。うん。入ってない。帰宅部だよ」
「へーっ……そうなんだ。実は俺実は、階段で猫塚さんが落ちそうになった時、助けた事あるんだけど……覚えている?」
その時に私たちは、視線が合った。
なんとも言えない、探るような眼差しだ。何かを知りたがっているような……ハイライトの消えた黒い瞳。
「うんっ……覚えているよ! そうそう。入学したばかりの時だったよね。私は覚えているけど、藤崎くんが覚えているなんて……思わなかった。あの時はありがとうございました」
これは本当に思って居なかった。私が階段から落ちそうになって、藤崎くんが引き上げてくれる代わりに階段の壁に頭をぶつけていたのだ。
あの時、ごめんなさいって平謝りはしたんだけど、感謝の言葉が言えてなくて、ずっと気になっていた。
「いや……それは全然……良いよ。猫塚さんって、この前に階段落ちたって聞いたけど、大丈夫だった?」
何……何なの……その探るような言葉に、私の様子をつぶさに観察しているような視線。
良くわからない緊張感に襲われた。
前世の記憶が戻ったか、確認している? え。けど、そういうことだとすると……。
ううん。もしかしなくても……藤崎くんって、私の婚約者だった時の記憶、思い出してない!?
放課後、私はドキドキしながらA組の藤崎くんを待っていた。
教室の中には私一人。今はテスト前だから、県大会へ進んだ運動部以外の部活だって、ほぼ休みなのだ。
「待ってないよ。ありがとう。今日もよろしくお願いします」
私は走って逃げたい気持ちを抑えつつ、待っていた。
だって、数学を頼まれて教えてくれているだけで、本当にありがたいという気持ちしかないんだよ。
……私の心の中にある微妙な問題は、まあ置いておくにしても。何。前世の記憶って。自分でも意味わかんなくて、説明しづらいこの気持ち。
藤崎くんの実力は、今日の数学の時間で実証済み。先生も正直『まさか解けると思ってなかった』みたいな、失礼な表情をしていたもん!
すっごく頼りになる家庭教師であることは、間違いない。頼んだのはこっちだし、今更断るのもおかしい。
だとしたら、家庭教師してくれる時間を有意義に使わせていただきます!
「……それじゃあ、今日も始める?」
私は机の上に教科書参考書などを開いて、鞄を近くの机の上に置いた藤崎くん待ちの体勢になった。
え。近付いて来た藤崎くん良い匂いする……香水とかでもない……なんだろう。この匂い。なんだか、懐かしいような……。
「猫塚さんって、部活入ってないの?」
藤崎くんは筆記用具を出しながら、なんでもない世間話を切り出した。藤崎くんは昼休みバスケをして楽しんでいることからわかる通り、バスケをずっとしているらしいんだよね。
ということを、私が知っているというのもおかしいのかもしれないけど、藤崎くんは人気者なのでそういう情報を集めていなくても集まるのだ。
「え! ……あ。うん。入ってない。帰宅部だよ」
「へーっ……そうなんだ。実は俺実は、階段で猫塚さんが落ちそうになった時、助けた事あるんだけど……覚えている?」
その時に私たちは、視線が合った。
なんとも言えない、探るような眼差しだ。何かを知りたがっているような……ハイライトの消えた黒い瞳。
「うんっ……覚えているよ! そうそう。入学したばかりの時だったよね。私は覚えているけど、藤崎くんが覚えているなんて……思わなかった。あの時はありがとうございました」
これは本当に思って居なかった。私が階段から落ちそうになって、藤崎くんが引き上げてくれる代わりに階段の壁に頭をぶつけていたのだ。
あの時、ごめんなさいって平謝りはしたんだけど、感謝の言葉が言えてなくて、ずっと気になっていた。
「いや……それは全然……良いよ。猫塚さんって、この前に階段落ちたって聞いたけど、大丈夫だった?」
何……何なの……その探るような言葉に、私の様子をつぶさに観察しているような視線。
良くわからない緊張感に襲われた。
前世の記憶が戻ったか、確認している? え。けど、そういうことだとすると……。
ううん。もしかしなくても……藤崎くんって、私の婚約者だった時の記憶、思い出してない!?
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