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04 様子のおかしいクラスメイト②
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やっと昼休み……週末が待ち遠しい気持ちが極みの火曜日。
昨日、階段から落ちた私を助けてくれたらしい黒木くんにお礼を言いに行こうかと思ったら、彼は友達何人かと連れだって教室を出て行くところだった。
黒木くんたちは、何処でお昼食べているんだろう……お弁当持っていないってことは、購買組なのかもしれない。
もしかしたら何処かで見掛けたことがあるかもしれないけど、正直に言ってしまうと、好きな人以外の情報は頭を素通りする。
なかなか、お礼を言うタイミングが見つからない。けど、同じクラスメイトって言っても、黒木くんと話したことなんて、数回あるかないかなんだけど。
「美波ちゃん。今日も校庭行く? そろそろ暑いよね」
確かに気温が上がりだして外は暑い。暑いけど、藤崎くんを見るためなら耐えられる。
けど、友人絵里香ちゃんは私に付き合ってくれているだけで、優しい彼女に暑い思いをさせたい訳でもなかった。
「どうしようかな……あ! あの屋根の下なら影になるしあの場所はどう?」
私が指さして示した渡り廊下の隅は、日向になるとじりじりと肌をあぶられる太陽光から私たちを守ってくれそう。
「うん。そうだね。ちょうど座れそうな段差あるし、良いんじゃないかな」
絵里香ちゃんは頷いた。渡り廊下の終わりには、三段の階段がある。しかも、第二校舎には通常クラスの教室がある訳ではないので、昼休み終わりに移動教室がある生徒が通るくらいだ。
私はお弁当を開いて、いつものように藤崎くんを見た。
彼は三人の友人たちと楽しそうに話しながら、何かを探すように周囲を見渡している……どうしたんだろう。お弁当の中の卵焼きを食べながら、いつもとは違う様子を見せる藤崎くんを見て居た。
「美波ちゃん、階段から落ちても何もなくて良かったよね」
絵里香ちゃんが昨日のことを聞こうとしてかそう言ったので、私は頷いた。
「そうだね。MRIっていう脳の状態が見られる大きな装置の中に入ったんだけど、動いたら駄目っていわれているし、大きな音聞こえるし……それで、私の脳を輪切りにした画像が見られるんだけど、全く異常なくてお医者さんも綺麗な脳だねえって言われちゃったの。綺麗な脳って何って感じだよね!?」
綺麗な脳があるってことは、汚い脳があるって事……? まあ、私の頭は階段が落ちたくらいではどうってことはないと思うけど……。
不意に頭を上げて藤崎くんが居る方向を見ようとしたら、彼と目が合ってしまって、私は慌ててパッと目を逸らした。
「本当だよね。え? 美波ちゃんどうしたの? ……っていうか、藤崎くんこっち見てるよ。美波ちゃん」
絵里香ちゃんも藤崎くんがこちら方向を見ていることに気がついたのか、私にこそこそと耳打ちした。
知っている……! 知っているよ! だから、頭を上げられないんだよ……!
「え。なんなんだろう……こっち方向に何かあるのかな?」
「……美波ちゃんが居るんじゃない?」
絵里香ちゃんは当たり前みたいに言ったけど、私はぶんぶんと首を横に振った。
「私は確かに居るよ! けど、私を見る理由はないよね?」
「いつもの場所に居ないから、気になったんじゃない?」
「なっ……ないないない……ないよ。絶対」
私はなんだかその時、視界が階段から落ちた時に見たあの夢の光景が広がっているような気がした。
妙に現実感のある夢、不思議な感覚。
私のことを認識していないはずなのに、妙に気にしているような素振り。
……まさかね。
昨日、階段から落ちた私を助けてくれたらしい黒木くんにお礼を言いに行こうかと思ったら、彼は友達何人かと連れだって教室を出て行くところだった。
黒木くんたちは、何処でお昼食べているんだろう……お弁当持っていないってことは、購買組なのかもしれない。
もしかしたら何処かで見掛けたことがあるかもしれないけど、正直に言ってしまうと、好きな人以外の情報は頭を素通りする。
なかなか、お礼を言うタイミングが見つからない。けど、同じクラスメイトって言っても、黒木くんと話したことなんて、数回あるかないかなんだけど。
「美波ちゃん。今日も校庭行く? そろそろ暑いよね」
確かに気温が上がりだして外は暑い。暑いけど、藤崎くんを見るためなら耐えられる。
けど、友人絵里香ちゃんは私に付き合ってくれているだけで、優しい彼女に暑い思いをさせたい訳でもなかった。
「どうしようかな……あ! あの屋根の下なら影になるしあの場所はどう?」
私が指さして示した渡り廊下の隅は、日向になるとじりじりと肌をあぶられる太陽光から私たちを守ってくれそう。
「うん。そうだね。ちょうど座れそうな段差あるし、良いんじゃないかな」
絵里香ちゃんは頷いた。渡り廊下の終わりには、三段の階段がある。しかも、第二校舎には通常クラスの教室がある訳ではないので、昼休み終わりに移動教室がある生徒が通るくらいだ。
私はお弁当を開いて、いつものように藤崎くんを見た。
彼は三人の友人たちと楽しそうに話しながら、何かを探すように周囲を見渡している……どうしたんだろう。お弁当の中の卵焼きを食べながら、いつもとは違う様子を見せる藤崎くんを見て居た。
「美波ちゃん、階段から落ちても何もなくて良かったよね」
絵里香ちゃんが昨日のことを聞こうとしてかそう言ったので、私は頷いた。
「そうだね。MRIっていう脳の状態が見られる大きな装置の中に入ったんだけど、動いたら駄目っていわれているし、大きな音聞こえるし……それで、私の脳を輪切りにした画像が見られるんだけど、全く異常なくてお医者さんも綺麗な脳だねえって言われちゃったの。綺麗な脳って何って感じだよね!?」
綺麗な脳があるってことは、汚い脳があるって事……? まあ、私の頭は階段が落ちたくらいではどうってことはないと思うけど……。
不意に頭を上げて藤崎くんが居る方向を見ようとしたら、彼と目が合ってしまって、私は慌ててパッと目を逸らした。
「本当だよね。え? 美波ちゃんどうしたの? ……っていうか、藤崎くんこっち見てるよ。美波ちゃん」
絵里香ちゃんも藤崎くんがこちら方向を見ていることに気がついたのか、私にこそこそと耳打ちした。
知っている……! 知っているよ! だから、頭を上げられないんだよ……!
「え。なんなんだろう……こっち方向に何かあるのかな?」
「……美波ちゃんが居るんじゃない?」
絵里香ちゃんは当たり前みたいに言ったけど、私はぶんぶんと首を横に振った。
「私は確かに居るよ! けど、私を見る理由はないよね?」
「いつもの場所に居ないから、気になったんじゃない?」
「なっ……ないないない……ないよ。絶対」
私はなんだかその時、視界が階段から落ちた時に見たあの夢の光景が広がっているような気がした。
妙に現実感のある夢、不思議な感覚。
私のことを認識していないはずなのに、妙に気にしているような素振り。
……まさかね。
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