絶対零度殿下からの隠れ溺愛は秘蜜の味。

待鳥園子

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59 恋に落ちる②

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「おい。人をまるで、見世物のように……いや、その通りだ。王族など、檻の中に居る獣同様に不便な身分だ。それにしても、ルシアがあれだけの知識を知っているということは、教育水準の高い場所なのだろう。異世界とは、そんなにも便利な世界なのか?」

 カミーユはルシアが、前世を過ごしたという異世界が気になっているようだ。彼女がどうしても彼に見せたいという提案書も異世界から来た知識を使ったと言えば感心していた。

「ええ。まずは、このくらいの大きさの通信機がありまして……誰かと話したり……なんなら、今見える光景や映像を記録したりすることも出来るのです」

 ルシアは自分が住んでいた異世界には、手のひらで収まるような便利な通信機があると示した。

「何……なんと便利な……」

 カミーユはスマートフォンの情報を聞き、強い興味を示したようだ。

(それは、そうだよね……こちらの世界は、なんでも魔法ありき。映像を記録したり出来る魔法具はあるけど、それは大きくて持ち運びに向いているとは言えないし……)

「そうです。それは、文字などの通信にも使えまして……私はそれを使って本を読んだりしていました」

「……本を? どういうことだ?」

「特殊な技術で、文字だけを記録することが出来るのです。だから、私は良くこういう異世界ものを読んで居ました。ふふ……カミーユのような、素敵な王子様と恋に落ちるものが多かったですよ」

 ルシアがブラック企業に働くOLだった頃は、電車でそんな現実逃避をするのが、唯一の楽しみだった。

「……ふん。それでは、異世界の本の世界と同じことが起きていると?」

 カミーユはそう言い、確かにその通りだとルシアは笑って頷いた。

(そうだわ……前世でも不幸今世でもとずっと思っていけれど、今は幸せなのだから、それで良いのかしら)

「ええ。なんだか、すごいです。私……カミーユと結婚したんですね」

「何を今更……面白い女だ。まあ……それは、初対面の頃からずっとそうだったが」

 カミーユはそう言って呆れたように笑い、ルシアは驚いた表情になった。

「カミーユ。私の住んでいた異世界には実は、面白い女と言われる法則があって……それは、男性が恋に落ちる前の前触れというか……なんというか」

(なんて言って、説明すれば良いの……)

 物語上、恋に落ちる良くある台詞を、彼にどのように説明したものかと、ルシアは上目遣いで見ればカミーユは肩を竦めた。

「ああ……面白いと言っている段階で、相当に興味を引いているからそうなるだろうな……」

「……そういえば、カミーユ。私を好きになってくれた瞬間って、いつなんですか?」

 確か誤魔化されてこの前聞けなかったことを質問し、彼は苦笑しつつこう言った。

「……それは、秘密だ。ルシアには、絶対に言わぬ」
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