59 / 60
59 恋に落ちる②
しおりを挟む
「おい。人をまるで、見世物のように……いや、その通りだ。王族など、檻の中に居る獣同様に不便な身分だ。それにしても、ルシアがあれだけの知識を知っているということは、教育水準の高い場所なのだろう。異世界とは、そんなにも便利な世界なのか?」
カミーユはルシアが、前世を過ごしたという異世界が気になっているようだ。彼女がどうしても彼に見せたいという提案書も異世界から来た知識を使ったと言えば感心していた。
「ええ。まずは、このくらいの大きさの通信機がありまして……誰かと話したり……なんなら、今見える光景や映像を記録したりすることも出来るのです」
ルシアは自分が住んでいた異世界には、手のひらで収まるような便利な通信機があると示した。
「何……なんと便利な……」
カミーユはスマートフォンの情報を聞き、強い興味を示したようだ。
(それは、そうだよね……こちらの世界は、なんでも魔法ありき。映像を記録したり出来る魔法具はあるけど、それは大きくて持ち運びに向いているとは言えないし……)
「そうです。それは、文字などの通信にも使えまして……私はそれを使って本を読んだりしていました」
「……本を? どういうことだ?」
「特殊な技術で、文字だけを記録することが出来るのです。だから、私は良くこういう異世界ものを読んで居ました。ふふ……カミーユのような、素敵な王子様と恋に落ちるものが多かったですよ」
ルシアがブラック企業に働くOLだった頃は、電車でそんな現実逃避をするのが、唯一の楽しみだった。
「……ふん。それでは、異世界の本の世界と同じことが起きていると?」
カミーユはそう言い、確かにその通りだとルシアは笑って頷いた。
(そうだわ……前世でも不幸今世でもとずっと思っていけれど、今は幸せなのだから、それで良いのかしら)
「ええ。なんだか、すごいです。私……カミーユと結婚したんですね」
「何を今更……面白い女だ。まあ……それは、初対面の頃からずっとそうだったが」
カミーユはそう言って呆れたように笑い、ルシアは驚いた表情になった。
「カミーユ。私の住んでいた異世界には実は、面白い女と言われる法則があって……それは、男性が恋に落ちる前の前触れというか……なんというか」
(なんて言って、説明すれば良いの……)
物語上、恋に落ちる良くある台詞を、彼にどのように説明したものかと、ルシアは上目遣いで見ればカミーユは肩を竦めた。
「ああ……面白いと言っている段階で、相当に興味を引いているからそうなるだろうな……」
「……そういえば、カミーユ。私を好きになってくれた瞬間って、いつなんですか?」
確か誤魔化されてこの前聞けなかったことを質問し、彼は苦笑しつつこう言った。
「……それは、秘密だ。ルシアには、絶対に言わぬ」
カミーユはルシアが、前世を過ごしたという異世界が気になっているようだ。彼女がどうしても彼に見せたいという提案書も異世界から来た知識を使ったと言えば感心していた。
「ええ。まずは、このくらいの大きさの通信機がありまして……誰かと話したり……なんなら、今見える光景や映像を記録したりすることも出来るのです」
ルシアは自分が住んでいた異世界には、手のひらで収まるような便利な通信機があると示した。
「何……なんと便利な……」
カミーユはスマートフォンの情報を聞き、強い興味を示したようだ。
(それは、そうだよね……こちらの世界は、なんでも魔法ありき。映像を記録したり出来る魔法具はあるけど、それは大きくて持ち運びに向いているとは言えないし……)
「そうです。それは、文字などの通信にも使えまして……私はそれを使って本を読んだりしていました」
「……本を? どういうことだ?」
「特殊な技術で、文字だけを記録することが出来るのです。だから、私は良くこういう異世界ものを読んで居ました。ふふ……カミーユのような、素敵な王子様と恋に落ちるものが多かったですよ」
ルシアがブラック企業に働くOLだった頃は、電車でそんな現実逃避をするのが、唯一の楽しみだった。
「……ふん。それでは、異世界の本の世界と同じことが起きていると?」
カミーユはそう言い、確かにその通りだとルシアは笑って頷いた。
(そうだわ……前世でも不幸今世でもとずっと思っていけれど、今は幸せなのだから、それで良いのかしら)
「ええ。なんだか、すごいです。私……カミーユと結婚したんですね」
「何を今更……面白い女だ。まあ……それは、初対面の頃からずっとそうだったが」
カミーユはそう言って呆れたように笑い、ルシアは驚いた表情になった。
「カミーユ。私の住んでいた異世界には実は、面白い女と言われる法則があって……それは、男性が恋に落ちる前の前触れというか……なんというか」
(なんて言って、説明すれば良いの……)
物語上、恋に落ちる良くある台詞を、彼にどのように説明したものかと、ルシアは上目遣いで見ればカミーユは肩を竦めた。
「ああ……面白いと言っている段階で、相当に興味を引いているからそうなるだろうな……」
「……そういえば、カミーユ。私を好きになってくれた瞬間って、いつなんですか?」
確か誤魔化されてこの前聞けなかったことを質問し、彼は苦笑しつつこう言った。
「……それは、秘密だ。ルシアには、絶対に言わぬ」
351
お気に入りに追加
2,041
あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。
そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。
お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。
挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに…
意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。
よろしくお願いしますm(__)m
契約結婚のはずが、幼馴染の御曹司は溺愛婚をお望みです
紬 祥子(まつやちかこ)
恋愛
旧題:幼なじみと契約結婚しましたが、いつの間にか溺愛婚になっています。
夢破れて帰ってきた故郷で、再会した彼との契約婚の日々。
★第17回恋愛小説大賞(2024年)にて、奨励賞を受賞いたしました!★
☆改題&加筆修正ののち、単行本として刊行されることになりました!☆
※作品のレンタル開始に伴い、旧題で掲載していた本文は2025年2月13日に非公開となりました。
お楽しみくださっていた方々には申し訳ありませんが、何卒ご了承くださいませ。
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。

転生令嬢は騎士からの愛に気付かない
上原緒弥
恋愛
【5/13 完結しました】城の図書館で司書として働く男爵家令嬢アシュリーには、前世の記憶がある。そのため現世での結婚事情に馴染めず、結婚せずにいようと決めていた。しかし21歳の誕生日を前にして父親から婚約の話を切り出される。躱す方法を探していたある日、上司が変装して同伴者として舞踏会へ参加するよう告げてきた。当日向かった会場で上司と別れて行動することになったアシュリーは、憧れの騎士団の副団長・ヴィルヘルムに話相手になって貰えることになったのだけれど……押しているのに気付いてもらえない騎士団副団長と、自分に自信がない男爵令嬢の恋の話。性描写が含まれる話には、※を付けています。ムーンライトノベルス様にも掲載しています。

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
獣人公爵のエスコート
ざっく
恋愛
デビューの日、城に着いたが、会場に入れてもらえず、別室に通されたフィディア。エスコート役が来ると言うが、心当たりがない。
将軍閣下は、番を見つけて興奮していた。すぐに他の男からの視線が無い場所へ、移動してもらうべく、副官に命令した。
軽いすれ違いです。
書籍化していただくことになりました!それに伴い、11月10日に削除いたします。
婚約者の本性を暴こうとメイドになったら溺愛されました!
柿崎まつる
恋愛
世継ぎの王女アリスには完璧な婚約者がいる。侯爵家次男のグラシアンだ。容姿端麗・文武両道。名声を求めず、穏やかで他人に優しい。アリスにも紳士的に対応する。だが、完璧すぎる婚約者にかえって不信を覚えたアリスは、彼の本性を探るため侯爵家にメイドとして潜入する。2022eロマンスロイヤル大賞、コミック原作賞を受賞しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる