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47 もう一人②
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「ルシア。もう一人のルシア・ユスターシュ伯爵令嬢が、この城へと帰ってきたそうだ。君の情報は戒厳令を敷いていた。だから、あいつらも君がエリザベスの姿のままで捕まったか、つまみだされたか……それを知ることも叶わず、とにかく、この城へ来るしかなかったのだろう」
「……どうして。そんな……だって」
ルシアがこうしてカミーユを説得出来ていれば、それは敵地に何も考えずに飛び込んで来るのと同じだ。
「……しかし、ルシアが戻ってきて俺に自分の存在を知らせることが出来ていれば、あいつはもう身の破滅だからな。一か八か試してみたかったのではないか? 帰って来ていなければ、エリザベスの姿をした君を殺せば成り代われる」
「ああ……なんてこと。信じられない」
そうするしかないと言われればそうなのだが、豪胆というか何も考えていないのか、エリザベスはこれがルシアから明かされていればすぐに捕えられるというのに。
「ふん。こちらの状況は読めぬから、こうして賭けに出たんだろう。生憎、負けてしまったようだがな」
カミーユは心底気に入らないと言いたげに、眉を寄せて言った。
「ああ……私がもし帰っていれば、行方がそれで知れると?」
(あの、犯罪者……やはり、ワーリントン公爵令嬢のことなど、どうでも良いんだわ。彼女が罰されたり殺されたりしても、別の寄生先を見つけるつもりなのね……)
実の娘として扱わねばならないはずのルシアにも役に立つと知ってからも非道なことをしたし、捨て駒のような扱いをされるエリザベスなど、このままでは、もっと酷いことをされてしまうのではないか。
自業自得とも言えるだろうが、まんまと犯罪者に騙されてしまうほどに育ちが良い彼女のことを思えば哀れにも思えて、ルシアはどうするべきかと考えた。
(私を殺して姿を奪い成り代わろうとしたことを、許せる訳ではないけれど……けれど、ただ利用されているだけなら、可哀想だわ)
「いや、そういえば……君は人に見られることを好むようだからな。女ならば別に良いだろう」
「……え?」
急に機嫌を直した様子のカミーユに微笑まれ、ルシアは戸惑った。
「ルシアの姿を取ろうとしたならば、極刑に処すべきだと俺は思う……だが、あまり物を考えぬ高貴な公爵令嬢だ。騙されたまま殺されてしまうというのも、俺たちも夢見が悪い。そうだな?」
「……は、はい」
有無を言わさぬ問いかけをされて、ルシアは慌てて何度も頷いた。
(なっ……何の話?)
「しかし、このままでは俺も腹の虫が収まらぬ。高貴なる公爵令嬢を、驚かせてやろうではないか」
ルシアはそう言ったカミーユに戸惑ったまま頷き、彼は満足そうに微笑むと、待っていた護衛騎士に何かを耳打ちした。
「ああ……準備に時間がかかるな。君は一度食事でもして、着替えでもしてくれ」
時計を見ながらカミーユはそう言ったので、ルシアは頷き、彼に指示されて慌ただしく出て行く面々を見送るしかなかった。
「……どうして。そんな……だって」
ルシアがこうしてカミーユを説得出来ていれば、それは敵地に何も考えずに飛び込んで来るのと同じだ。
「……しかし、ルシアが戻ってきて俺に自分の存在を知らせることが出来ていれば、あいつはもう身の破滅だからな。一か八か試してみたかったのではないか? 帰って来ていなければ、エリザベスの姿をした君を殺せば成り代われる」
「ああ……なんてこと。信じられない」
そうするしかないと言われればそうなのだが、豪胆というか何も考えていないのか、エリザベスはこれがルシアから明かされていればすぐに捕えられるというのに。
「ふん。こちらの状況は読めぬから、こうして賭けに出たんだろう。生憎、負けてしまったようだがな」
カミーユは心底気に入らないと言いたげに、眉を寄せて言った。
「ああ……私がもし帰っていれば、行方がそれで知れると?」
(あの、犯罪者……やはり、ワーリントン公爵令嬢のことなど、どうでも良いんだわ。彼女が罰されたり殺されたりしても、別の寄生先を見つけるつもりなのね……)
実の娘として扱わねばならないはずのルシアにも役に立つと知ってからも非道なことをしたし、捨て駒のような扱いをされるエリザベスなど、このままでは、もっと酷いことをされてしまうのではないか。
自業自得とも言えるだろうが、まんまと犯罪者に騙されてしまうほどに育ちが良い彼女のことを思えば哀れにも思えて、ルシアはどうするべきかと考えた。
(私を殺して姿を奪い成り代わろうとしたことを、許せる訳ではないけれど……けれど、ただ利用されているだけなら、可哀想だわ)
「いや、そういえば……君は人に見られることを好むようだからな。女ならば別に良いだろう」
「……え?」
急に機嫌を直した様子のカミーユに微笑まれ、ルシアは戸惑った。
「ルシアの姿を取ろうとしたならば、極刑に処すべきだと俺は思う……だが、あまり物を考えぬ高貴な公爵令嬢だ。騙されたまま殺されてしまうというのも、俺たちも夢見が悪い。そうだな?」
「……は、はい」
有無を言わさぬ問いかけをされて、ルシアは慌てて何度も頷いた。
(なっ……何の話?)
「しかし、このままでは俺も腹の虫が収まらぬ。高貴なる公爵令嬢を、驚かせてやろうではないか」
ルシアはそう言ったカミーユに戸惑ったまま頷き、彼は満足そうに微笑むと、待っていた護衛騎士に何かを耳打ちした。
「ああ……準備に時間がかかるな。君は一度食事でもして、着替えでもしてくれ」
時計を見ながらカミーユはそう言ったので、ルシアは頷き、彼に指示されて慌ただしく出て行く面々を見送るしかなかった。
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