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43 ヘッドドレス②
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◇◆◇
「あったわ……! 良かった」
ルシアは騎士団に調査されているというひと気のないユスターシュ伯爵家を訪れ、一人で自室に入ると以前ソフィアから渡された小箱に入ったヘッドドレスを確認していた。
それは、可愛らしく上品で質が高く、叔父の土産だったハンカチをあげただけのお礼としては、不釣り合いなほどにとても価値のある品物だった。
(可愛い……これを身につけたら、喜んでくれるかしら)
ルシアだってカミーユの胸元に自分のあげたハンカチーフがあった時、それはを見て嬉しかったものだった。
きっと彼も、ルシアが自分の贈り物が使っていると見れば、喜んでくれるはずだ。
「これは……これは、見違えた。ルシア」
驚いている酒焼けした低い声を聞き、ルシアは信じられな思いで後ろを振り返った。
「おっ……貴方……私の両親を殺した男」
(嘘でしょう。どうして、ここに?)
それは以前ルシアが『お父様』と呼び、彼女を虐待していた犯罪者だった。
「おいおい。悲しいこと言うなよ。以前のように、お父様と呼んでくれて良い。この姿は間違いなく、お前の父なんだからな」
扉からだんだんと自分へと近づく男に、ルシアは後ずさった。にやにやとした薄ら笑いが気持ち悪く、餌付いて吐きそうになった。
「……どこから入ってきたの? ここは国の騎士団が警備しているはずよ!」
だから、ルシアも安心してここへやって来たのだ。だと言うのに、指名手配されているはずの男は、ユスターシュ伯爵邸に我が者顔で居た。
「はあ……大いなる権力者が俺の味方でね。証拠隠滅に来ただけなんだが。あの方に、思いも寄らない良いお土産が出来た」
(大いなる権力? 誰なの……? この事件の捜査はカミーユ殿下に一任されていて……彼と同等の権力を持つ人……?)
またルシアには謎なことを言い出した父親テレンスを騙る犯罪者に、彼女は顔を歪めた。
だが、大きな身体には似つかわしくない素早い動きでその男は、ルシアの腹へと拳を強く叩き込み彼女は気を失ってしまった。
「あったわ……! 良かった」
ルシアは騎士団に調査されているというひと気のないユスターシュ伯爵家を訪れ、一人で自室に入ると以前ソフィアから渡された小箱に入ったヘッドドレスを確認していた。
それは、可愛らしく上品で質が高く、叔父の土産だったハンカチをあげただけのお礼としては、不釣り合いなほどにとても価値のある品物だった。
(可愛い……これを身につけたら、喜んでくれるかしら)
ルシアだってカミーユの胸元に自分のあげたハンカチーフがあった時、それはを見て嬉しかったものだった。
きっと彼も、ルシアが自分の贈り物が使っていると見れば、喜んでくれるはずだ。
「これは……これは、見違えた。ルシア」
驚いている酒焼けした低い声を聞き、ルシアは信じられな思いで後ろを振り返った。
「おっ……貴方……私の両親を殺した男」
(嘘でしょう。どうして、ここに?)
それは以前ルシアが『お父様』と呼び、彼女を虐待していた犯罪者だった。
「おいおい。悲しいこと言うなよ。以前のように、お父様と呼んでくれて良い。この姿は間違いなく、お前の父なんだからな」
扉からだんだんと自分へと近づく男に、ルシアは後ずさった。にやにやとした薄ら笑いが気持ち悪く、餌付いて吐きそうになった。
「……どこから入ってきたの? ここは国の騎士団が警備しているはずよ!」
だから、ルシアも安心してここへやって来たのだ。だと言うのに、指名手配されているはずの男は、ユスターシュ伯爵邸に我が者顔で居た。
「はあ……大いなる権力者が俺の味方でね。証拠隠滅に来ただけなんだが。あの方に、思いも寄らない良いお土産が出来た」
(大いなる権力? 誰なの……? この事件の捜査はカミーユ殿下に一任されていて……彼と同等の権力を持つ人……?)
またルシアには謎なことを言い出した父親テレンスを騙る犯罪者に、彼女は顔を歪めた。
だが、大きな身体には似つかわしくない素早い動きでその男は、ルシアの腹へと拳を強く叩き込み彼女は気を失ってしまった。
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