絶対零度殿下からの隠れ溺愛は秘蜜の味。

待鳥園子

文字の大きさ
上 下
16 / 60

16 方法★①

しおりを挟む
「どうした。ルシアはあれほどまでに必死になって、自分の持参金を欲していたというのに。この俺と結婚すれば、持参金など要らぬ。なんなら、君の望むもの、すべて手に入れようではないか」

 これまで氷のように見えたカミーユの瞳は、まるで青い炎のような熱い視線をルシア向けていた。

 あまりに強い欲求が可視化されて周囲にあり目に映るようで、経験の無いルシアなど、それだけで焼き尽くされてしまいそうだ。

(別人みたい……あんなに、視線も態度も冷たかったのに)

 上半身裸になったカミーユは、胸を手で隠したままのルシアの腰を持ち上げ、真正面に抱きかかえた。

 所在なさげに俯いたルシアに、言いたいことがあるならば言ってみろと言わんばかりに口端を上げて微笑んだ。

「……カミーユ……落ち着いてください。あの、私……」

 先ほどカミーユと恋人になることは確かに頷いたが、数分後にはまさかこんな姿で見つめ合うことになるなんて、ルシアは思ってもみなかった。

(あまりに早過ぎる。私の気持ちは、置いていかれてしまったままなのに)

「ルシアが処女であることは、俺も知っている……隠さず見せて」

 ルシアはカミーユが自分の右手を外し、小さな果実のように赤く色付いた胸の先をじっと見て、濡れた舌で見せつけるようにして舐めた。

「……あっ……待って」

 ルシアにしてみれば、前世を合わせても味わったことのない、ひどく強烈で未知の感覚だ。

 それなのに、決して嫌ではなかった。カミーユは姿形も完璧で、王族位にあるが、ルシアが彼を好ましく思って居なければ嫌悪を感じたはずだ。

 だが、それはなかった。

(私……カミーユが、好きなんだ)

 思えば兜を被った彼がカミーユかもしれないと思っていた時に、既に意識していたのかもしれない。彼への恋を自覚したものの、今は既に濡れ場の真っ最中だった。

 カミーユが形の良い唇を開き、ルシアの胸先に齧りつき、吸っては離してを繰り返した。てらてらと艶のある自分の胸がひどくいやらしいものに思えて、恥じらったルシアが身体を引きそうになると、カミーユが軽く引き寄せ腰を元の位置に戻した。

 その時、扉を叩く音がして、ルシアはこの時が終わると思いほっと安堵した。

(良かった。あまりに、展開が早すぎるもの……助かったわ)

「……誰だ」

 不快そうにカミーユが言えば、扉一枚隔ててくぐもった低い声が答えた。

『……ヒューバートです。殿下』

 あの時、ルシアを助けてくれた騎士、ヒューバート・シャンペルだ。

 今回も彼が助けてくれたのかと思ったルシアは、下げられていた胸元の布を直そうとしたが、カミーユは彼女の手首を持ち不敵に微笑むとそれを許さなかった。

(……え?)

「入れ。ヒューバート」

 信じられないことにカミーユは、このままの状態で自身の護衛騎士ヒューバートに入室するように告げた。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。 そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。 お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。 挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに… 意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。 よろしくお願いしますm(__)m

契約結婚のはずが、幼馴染の御曹司は溺愛婚をお望みです

紬 祥子(まつやちかこ)
恋愛
旧題:幼なじみと契約結婚しましたが、いつの間にか溺愛婚になっています。 夢破れて帰ってきた故郷で、再会した彼との契約婚の日々。 ★第17回恋愛小説大賞(2024年)にて、奨励賞を受賞いたしました!★ ☆改題&加筆修正ののち、単行本として刊行されることになりました!☆ ※作品のレンタル開始に伴い、旧題で掲載していた本文は2025年2月13日に非公開となりました。  お楽しみくださっていた方々には申し訳ありませんが、何卒ご了承くださいませ。

転生令嬢は騎士からの愛に気付かない

上原緒弥
恋愛
【5/13 完結しました】城の図書館で司書として働く男爵家令嬢アシュリーには、前世の記憶がある。そのため現世での結婚事情に馴染めず、結婚せずにいようと決めていた。しかし21歳の誕生日を前にして父親から婚約の話を切り出される。躱す方法を探していたある日、上司が変装して同伴者として舞踏会へ参加するよう告げてきた。当日向かった会場で上司と別れて行動することになったアシュリーは、憧れの騎士団の副団長・ヴィルヘルムに話相手になって貰えることになったのだけれど……押しているのに気付いてもらえない騎士団副団長と、自分に自信がない男爵令嬢の恋の話。性描写が含まれる話には、※を付けています。ムーンライトノベルス様にも掲載しています。

身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】 妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる

奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。 両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。 それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。 夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。

処理中です...