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10 秘密の花園
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やっと箱の中から出た私は、両腕を上げて窮屈な姿勢で固定されていた背筋を伸ばした。
ジョルジュは本当に長い間、第二王子ギャビンを探し回ってうろうろしていた。けど、待っている時間って感覚が狂って長く感じるし、私もそうだったのかもしれない。
それに、後ろから抱き抱えられていたギャビンに無性にドキドキしていたので、脳内物質が過剰に出ていたというのももう仕方ない。
私だってギャビンが初期の共通ルートで婚約解消を言い出した時には、切ない思いを感じたものだった。
第二王子で正ヒーローギャビンは前世のお気に入りキャラで、彼の婚約者で婚約破棄される悪役令嬢役だと知った時は、私も絶望に似た気持ちを味わったもの。
「……それでは、レイラ。君の言う通りにしよう。黒うさぎのトリスタンに会いに行くんだろ?」
その時のギャビンはかなり無理をして笑っているのはわかっていたけど、仕方ない。だって、好きな人から嘘の感情で愛されたって、きっと一生もやもやすることになるんだし。
もし、好感度がなくなったら、彼はどんな態度になるんだろう……? 私は慌てて首を振った。いけない。そんなことを考えてもどうしようもない。
「……いきましょうっ!」
私は早くトリスタンに会おうと、扉に向かって歩き始めた。不意にギャビンが右手を掴んで、真剣な目で私を見た。
「さっきの約束は、絶対だよ。僕にはもう嘘をつかないで。レイラ」
「わかりました。ちゃんと約束は、守ります」
私はそう言って、彼の手をそっと外した。悲しそうな顔をされても、私にはそれをどうしてあげることも出来ない。
黒うさぎのトリスタンが出現する場所、赤薔薇園はギャビンの部屋からすぐ近くにあった。
「……えっと。あ! トリスタン!」
私はあまりの会いたさに、薔薇園にある椅子でくつろいでいた様子のトリスタンに駆け寄った。
ギョッとした様子のトリスタンは、何故か私から逃げ出した!
「なんや! なんで、追いかけてくるんや! 儂何も悪いことしてへんで!」
「待ってよ! トリスタン! 貴方に話したいことがあるの!」
走りながら言った私の言葉を聞いて一瞬立ち止まり振り返ったトリスタンは、もっとギョッとした様子で、さっきよりもっと早い速度で逃げ出した。
え。なんでだろう。私が何気なく振り返ると、ギャビンが後を追ってくるのはわかるとして……さっき、なんとか遭遇するのを回避したジョルジュも!? っていうか、ハイドもその後から追って来ているし!!
ギャビン一人だけならともかく、彼ら三人に捕まったら、もう何の言い訳も聞いてもらえない!!
「ちょっと、待ってよー!! トリスタン!! どうしても貴方に聞いてもらわないといけないの!!」
「なんや!! 何でや!! なんで儂が、悪役令嬢とヒロインに選ばれていない攻略対象者たちに追いかけられるんや!! 儂、あいつらが居る場所とか教えたり、好感度教えるくらいで、何も悪いことしてへんで!!」
トリスタンは捕らえられたら何をされるかわからないとばかりに、恐慌状態になっている。
っていうか、あの三人も私を追いかけて来る!
もう!! これだと、イケメンいっぱいで夢溢れる乙女ゲームじゃなくて……完全に、私への罰ゲームになってるってばー!!
ジョルジュは本当に長い間、第二王子ギャビンを探し回ってうろうろしていた。けど、待っている時間って感覚が狂って長く感じるし、私もそうだったのかもしれない。
それに、後ろから抱き抱えられていたギャビンに無性にドキドキしていたので、脳内物質が過剰に出ていたというのももう仕方ない。
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もし、好感度がなくなったら、彼はどんな態度になるんだろう……? 私は慌てて首を振った。いけない。そんなことを考えてもどうしようもない。
「……いきましょうっ!」
私は早くトリスタンに会おうと、扉に向かって歩き始めた。不意にギャビンが右手を掴んで、真剣な目で私を見た。
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私はそう言って、彼の手をそっと外した。悲しそうな顔をされても、私にはそれをどうしてあげることも出来ない。
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「なんや! なんで、追いかけてくるんや! 儂何も悪いことしてへんで!」
「待ってよ! トリスタン! 貴方に話したいことがあるの!」
走りながら言った私の言葉を聞いて一瞬立ち止まり振り返ったトリスタンは、もっとギョッとした様子で、さっきよりもっと早い速度で逃げ出した。
え。なんでだろう。私が何気なく振り返ると、ギャビンが後を追ってくるのはわかるとして……さっき、なんとか遭遇するのを回避したジョルジュも!? っていうか、ハイドもその後から追って来ているし!!
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「ちょっと、待ってよー!! トリスタン!! どうしても貴方に聞いてもらわないといけないの!!」
「なんや!! 何でや!! なんで儂が、悪役令嬢とヒロインに選ばれていない攻略対象者たちに追いかけられるんや!! 儂、あいつらが居る場所とか教えたり、好感度教えるくらいで、何も悪いことしてへんで!!」
トリスタンは捕らえられたら何をされるかわからないとばかりに、恐慌状態になっている。
っていうか、あの三人も私を追いかけて来る!
もう!! これだと、イケメンいっぱいで夢溢れる乙女ゲームじゃなくて……完全に、私への罰ゲームになってるってばー!!
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