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69 尾行
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立ち姿を表す言葉が素敵でしかない芹沢くんが、大学の最寄り駅の改札を出た。
こんな時にも推しの彼の後ろ姿を堪能している私はというと、現在尾行中。
昨夜、本日土曜日にどうしても会いたいと電話でお願いしたら、芹沢くんからごめん無理なんだと辛そうな声でそう言われた。
この時に、巷で良く耳にする『女の第六感』というものを、私は初めて感じた。
彼は、私に何か重大な隠し事をしている。
話を聞くことは出来ないけど、気になり過ぎてしまった私はマンション前で出待ちをして、そして今に至る。
芹沢くんは何かの用事があって、そのまま私たちがいつも通うキャンパスに向かうのかと思ってた。
けど、何故か大学の近くにある小さな公園へと向かっている。私はなんでだろうと思いつつも、そのまま彼の後を尾行しようと歩き出したら、後ろから誰かに肩に手を掛けられて驚いた。
「えっ……っゆうくん! と、赤星くん……? 二人とも、何してるの?」
そこに居たのは、芹沢くんの友人二人だ。どちらもタイプの違うイケメンであることは、大事な情報なので付け加えておきたい。
けど、二人は驚いている私を見て困ったような表情をしていた。
「いや……それ。完全にこっちの台詞だから。みーちゃん、何してんの……言っとくけど。このまま芹沢が行く場所に行けば、みーちゃんは傷付くことになるよ」
いつもは愛想の良いゆうくんなのに、信じられないくらいの真顔だった。
「っ……芹沢くんって、浮気してるの?」
信じたくないけどそういう疑惑を持ってしまっていた私の言葉にゆうくんは、何故かやっぱりという表情になった。
「あー。そうか。やっぱり。みーちゃんは雪華のSNSに載せた、あの写真を見たのか。でも、なんで? 雪華と芹沢のことは、先方の事情で伏せられててあまり知られてはいない。俺も、芹沢本人から直接聞いただけだ」
学生時代からモデル活動をしていた雪華の立場上、交際していた事実を隠さざるを得なかったという事情は理解出来る。そんな人が今は匂わせを繰り返しているなんて、辻褄が合わない気もするけど。
「うん。弟が、教えてくれたの。私が付き合っている人と、雪華が最近会ってるみたいだって」
「……なんで、みーちゃんの弟が、そんなこと知ってるんだ? 先に結論を言うけど、芹沢はみーちゃんを裏切ってなんかないよ。それは絶対に違うと、誓える。けど……みーちゃんはあいつの後を尾けて、すべてを知ってしまえば傷つくことになる。だから、俺たちは出来るだけ知られないように動いていた……みーちゃんは、傷付いても知りたい?」
ここで引き返した方が良いと諭すようなゆうくんの言葉を聞いて、そんなことより芹沢くんは浮気していなかったと知り、深く安心した私は力強く頷いた。
良かった。
芹沢くんのことは大好きだし、信じているけど。やっぱり、二人が会っている証拠となる画像を送られていたら……それは、会っていたことは事実だったってことだから。
けど、何か理由があって、芹沢くんは雪華と会っていたことが今わかった。だから、このところ芹沢くんには会えなかった。
そういう事情で、学内ではゆうくんは出来るだけ私と一緒に居るようにしてたんだ。
「うん! 芹沢くんを、助けたい。私はその為に傷ついたって、別に大丈夫だから」
「みーちゃん。良いね。俺は、そういう子が大好きだ。俺は、味方だよ」
これまで黙ったままだった派手顔の赤星くんは、にっこり笑って大きな手で私の頭を撫でた。
長身の芹沢くんよりもっと背の高い赤星くんは、私には見上げてしまうほどだけど、彼がただそこに居るというだけで、何故か不思議と何があっても大丈夫だという安心感を貰える人だった。
「……わかった。けど、みーちゃんは俺たちと一緒に居るんだ。芹沢は今日、出来れば話し合いをしてこの事に決着を付けたいと、そう言っていたけど……これまでの交渉は、すべて決裂している。その後どうなるかは、俺たちにもわからないから」
私たちがこうして話している間も、芹沢くんの背中は遠去かる。彼は公園への道を、一人で歩いていた。
雪華が……芹沢くんを、私が傷付くような何かで脅している……? これって……一体、どういうことなの?
こんな時にも推しの彼の後ろ姿を堪能している私はというと、現在尾行中。
昨夜、本日土曜日にどうしても会いたいと電話でお願いしたら、芹沢くんからごめん無理なんだと辛そうな声でそう言われた。
この時に、巷で良く耳にする『女の第六感』というものを、私は初めて感じた。
彼は、私に何か重大な隠し事をしている。
話を聞くことは出来ないけど、気になり過ぎてしまった私はマンション前で出待ちをして、そして今に至る。
芹沢くんは何かの用事があって、そのまま私たちがいつも通うキャンパスに向かうのかと思ってた。
けど、何故か大学の近くにある小さな公園へと向かっている。私はなんでだろうと思いつつも、そのまま彼の後を尾行しようと歩き出したら、後ろから誰かに肩に手を掛けられて驚いた。
「えっ……っゆうくん! と、赤星くん……? 二人とも、何してるの?」
そこに居たのは、芹沢くんの友人二人だ。どちらもタイプの違うイケメンであることは、大事な情報なので付け加えておきたい。
けど、二人は驚いている私を見て困ったような表情をしていた。
「いや……それ。完全にこっちの台詞だから。みーちゃん、何してんの……言っとくけど。このまま芹沢が行く場所に行けば、みーちゃんは傷付くことになるよ」
いつもは愛想の良いゆうくんなのに、信じられないくらいの真顔だった。
「っ……芹沢くんって、浮気してるの?」
信じたくないけどそういう疑惑を持ってしまっていた私の言葉にゆうくんは、何故かやっぱりという表情になった。
「あー。そうか。やっぱり。みーちゃんは雪華のSNSに載せた、あの写真を見たのか。でも、なんで? 雪華と芹沢のことは、先方の事情で伏せられててあまり知られてはいない。俺も、芹沢本人から直接聞いただけだ」
学生時代からモデル活動をしていた雪華の立場上、交際していた事実を隠さざるを得なかったという事情は理解出来る。そんな人が今は匂わせを繰り返しているなんて、辻褄が合わない気もするけど。
「うん。弟が、教えてくれたの。私が付き合っている人と、雪華が最近会ってるみたいだって」
「……なんで、みーちゃんの弟が、そんなこと知ってるんだ? 先に結論を言うけど、芹沢はみーちゃんを裏切ってなんかないよ。それは絶対に違うと、誓える。けど……みーちゃんはあいつの後を尾けて、すべてを知ってしまえば傷つくことになる。だから、俺たちは出来るだけ知られないように動いていた……みーちゃんは、傷付いても知りたい?」
ここで引き返した方が良いと諭すようなゆうくんの言葉を聞いて、そんなことより芹沢くんは浮気していなかったと知り、深く安心した私は力強く頷いた。
良かった。
芹沢くんのことは大好きだし、信じているけど。やっぱり、二人が会っている証拠となる画像を送られていたら……それは、会っていたことは事実だったってことだから。
けど、何か理由があって、芹沢くんは雪華と会っていたことが今わかった。だから、このところ芹沢くんには会えなかった。
そういう事情で、学内ではゆうくんは出来るだけ私と一緒に居るようにしてたんだ。
「うん! 芹沢くんを、助けたい。私はその為に傷ついたって、別に大丈夫だから」
「みーちゃん。良いね。俺は、そういう子が大好きだ。俺は、味方だよ」
これまで黙ったままだった派手顔の赤星くんは、にっこり笑って大きな手で私の頭を撫でた。
長身の芹沢くんよりもっと背の高い赤星くんは、私には見上げてしまうほどだけど、彼がただそこに居るというだけで、何故か不思議と何があっても大丈夫だという安心感を貰える人だった。
「……わかった。けど、みーちゃんは俺たちと一緒に居るんだ。芹沢は今日、出来れば話し合いをしてこの事に決着を付けたいと、そう言っていたけど……これまでの交渉は、すべて決裂している。その後どうなるかは、俺たちにもわからないから」
私たちがこうして話している間も、芹沢くんの背中は遠去かる。彼は公園への道を、一人で歩いていた。
雪華が……芹沢くんを、私が傷付くような何かで脅している……? これって……一体、どういうことなの?
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