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67 威嚇
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「水無瀬さん。芹沢くんと、さっさと別れなさいよ。全然似合っていないのが、自分ではわからないの?」
ただ講義の合間に一人でテラスに座っていただけの私は、いきなり前の席に座ったミス優鷹の蓮井さんに、結構な剣幕で詰め寄られていた。
芹沢くんが私を守るために周囲に広めた誹謗中傷すれば訴える件についてなんだけど、こういったことを私に直接言ってくる分には、そういった犯罪行為には当たらないらしい。
だから、そういう奴が万が一居たら対処するので、俺に言って欲しいとは言われていた。
けど、そういう……なんか良くわからない悪口を言ってくる人って、多分自分が言ってると本人には認識されたくないと思う。誰だって、自分が悪者にはなりたくないものだ。
こうやって私本人に正々堂々言ってくる蓮井さんって、もしかしたら……正直者っていうか悪い人には、なり切れないっていうか。ある意味、憎めない人なのかも。
「私も……自分でも彼には似合ってないとは思うんですけど、芹沢くんが好きなことは誰にも負けません!」
私がはきはきと芹沢大好き宣言してから、何かを言い返そうとした蓮井さんは、何故か私の後ろに居る誰かを見て顔色を変えた。
「蓮井。ここから、すぐに失せろ。芹沢は彼女と別れても、お前とはこの先絶対に付き合わねえよ」
ドスの利いたとても低い声がして、私は一瞬ヤの付く職業の人が、なんでこんなところに居るのかなと、ふるっと身体を震わせた。こんな状況を助けて貰ったはずなんだけど、私も逃げたい。
蓮井さんは可愛い顔をぎゅっと大きく歪めてから、無言で席を立ち足早に去って行った。
「っ……え? ゆうくん? さっきのゆうくんだったの?」
なんと、私が振り返ってお礼を言おうと思ったら、そこに居たのは、人当たりの良さなら天下一品コミュ力モンスターのはずのゆうくんだった。彼はさりげなく近寄り私の席の隣に座りつつ、感じの良い笑顔で言った。
「はは。俺もこんな可愛い顔してても、一応は男だからさー。あんな感じの低い声も、出せるよ……ああいう頭が足りない奴には、先んじて強めに威嚇しとくのが一番だよ」
「ゆうくんの威嚇行為、めちゃくちゃ、強かった……なんだか蓮井さん。凄く怯えてたね」
もしかして、あんな反応を見せるのは、顔に似合わないドスの利いた声のせいだけではないのではと、私が不思議に思って隣のゆうくんの顔を見れば、彼は楽しそうに笑った。
「あれっ。みーちゃんっていきなり襲い掛かってきた言葉を知らない獣とも、わかり合おうとしちゃうタイプ? 動物好きなのはわかるけど、躾が出来てない奴は危険だから、近寄らないようにしようねー……嫉妬の感情はさ、誰にだって持つことはあるよ。だが、それを自分の中だけでは飲み込めずに、よくわからない理屈を捏ねて機嫌を悪くするのは、知能が足りてない証拠だから。対等の存在だと思わずに、それ相応の対応をしたら良いんだよ」
「ゆうくんって、こんなに可愛い顔してるのに……結構、言うんだね」
可愛い顔をしているからこその、ギャップのある毒舌が怖い……そういえば、芹沢くんも、佐久間は悪魔ってなんかの時に言ってたような。やけに語呂が良くて、私も言いたくなってしまう。
「あのさ。俺がみーちゃんに対して、可愛いことを言っているのは、みーちゃんがそういう可愛い子だからだよ。人間関係って、大体は鏡だから。鏡は先に、笑わないだろ? そういうこと」
「え。今……私。可愛いって、褒められた?」
「はは。そういうとこな。うん。すごーく褒めた」
ミスター優鷹の芹沢くんと同じくらいにモテモテのゆうくんは、最近元チア部の美人の彼女と別れてしまったと、大学内ではもっぱらの噂だ。
だから、次の彼女候補になりたいという女の子に話し掛けられるのが面倒なのか、なんなのか。このところ、何故か友人芹沢くんの彼女で完全に圏外の存在である私と、話しに来ることが多かった。
ただ講義の合間に一人でテラスに座っていただけの私は、いきなり前の席に座ったミス優鷹の蓮井さんに、結構な剣幕で詰め寄られていた。
芹沢くんが私を守るために周囲に広めた誹謗中傷すれば訴える件についてなんだけど、こういったことを私に直接言ってくる分には、そういった犯罪行為には当たらないらしい。
だから、そういう奴が万が一居たら対処するので、俺に言って欲しいとは言われていた。
けど、そういう……なんか良くわからない悪口を言ってくる人って、多分自分が言ってると本人には認識されたくないと思う。誰だって、自分が悪者にはなりたくないものだ。
こうやって私本人に正々堂々言ってくる蓮井さんって、もしかしたら……正直者っていうか悪い人には、なり切れないっていうか。ある意味、憎めない人なのかも。
「私も……自分でも彼には似合ってないとは思うんですけど、芹沢くんが好きなことは誰にも負けません!」
私がはきはきと芹沢大好き宣言してから、何かを言い返そうとした蓮井さんは、何故か私の後ろに居る誰かを見て顔色を変えた。
「蓮井。ここから、すぐに失せろ。芹沢は彼女と別れても、お前とはこの先絶対に付き合わねえよ」
ドスの利いたとても低い声がして、私は一瞬ヤの付く職業の人が、なんでこんなところに居るのかなと、ふるっと身体を震わせた。こんな状況を助けて貰ったはずなんだけど、私も逃げたい。
蓮井さんは可愛い顔をぎゅっと大きく歪めてから、無言で席を立ち足早に去って行った。
「っ……え? ゆうくん? さっきのゆうくんだったの?」
なんと、私が振り返ってお礼を言おうと思ったら、そこに居たのは、人当たりの良さなら天下一品コミュ力モンスターのはずのゆうくんだった。彼はさりげなく近寄り私の席の隣に座りつつ、感じの良い笑顔で言った。
「はは。俺もこんな可愛い顔してても、一応は男だからさー。あんな感じの低い声も、出せるよ……ああいう頭が足りない奴には、先んじて強めに威嚇しとくのが一番だよ」
「ゆうくんの威嚇行為、めちゃくちゃ、強かった……なんだか蓮井さん。凄く怯えてたね」
もしかして、あんな反応を見せるのは、顔に似合わないドスの利いた声のせいだけではないのではと、私が不思議に思って隣のゆうくんの顔を見れば、彼は楽しそうに笑った。
「あれっ。みーちゃんっていきなり襲い掛かってきた言葉を知らない獣とも、わかり合おうとしちゃうタイプ? 動物好きなのはわかるけど、躾が出来てない奴は危険だから、近寄らないようにしようねー……嫉妬の感情はさ、誰にだって持つことはあるよ。だが、それを自分の中だけでは飲み込めずに、よくわからない理屈を捏ねて機嫌を悪くするのは、知能が足りてない証拠だから。対等の存在だと思わずに、それ相応の対応をしたら良いんだよ」
「ゆうくんって、こんなに可愛い顔してるのに……結構、言うんだね」
可愛い顔をしているからこその、ギャップのある毒舌が怖い……そういえば、芹沢くんも、佐久間は悪魔ってなんかの時に言ってたような。やけに語呂が良くて、私も言いたくなってしまう。
「あのさ。俺がみーちゃんに対して、可愛いことを言っているのは、みーちゃんがそういう可愛い子だからだよ。人間関係って、大体は鏡だから。鏡は先に、笑わないだろ? そういうこと」
「え。今……私。可愛いって、褒められた?」
「はは。そういうとこな。うん。すごーく褒めた」
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だから、次の彼女候補になりたいという女の子に話し掛けられるのが面倒なのか、なんなのか。このところ、何故か友人芹沢くんの彼女で完全に圏外の存在である私と、話しに来ることが多かった。
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