0時のコンビニ、眼鏡すっぴんで片思いの人と鉢合わせた真夏の熱帯夜

待鳥園子

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 黙ったままでコツコツとディスプレイを叩かれるけど、私には銀河が何を言わんとしているのかが本当にわからなかった。

「……この人が、何? 雪華のことなら、知ってるけど……何が言いたいのか、わからない」

「……あのさ。姉ちゃんと付き合ってる男について、俺も事前に聞いて来た。姉ちゃん。あいつの元カノ。この人なんだって……姉ちゃんみたいな、普通の女の子。飽きたら、いつか捨てられてそれでもう終わるんだよ。それで、大丈夫なの?」

「……え」

「こういう人と付き合ってたってことは、元々こういう人が好きだってことだろ? 今は姉ちゃんみたいな、なんていうの……毛色の変わったタイプが、付き合ってて面白いのかもしれない。けど、その男は日本中の女性の中で自分好みの女を、選べるんだよ。元々、雪華と付き合っていたくらいだし。姉ちゃん。そんな奴にさ。最後に自分が選んで貰えるという、確証はあるの?」

 思いも寄らない情報を聞いて、あまりの衝撃に頭の中が纏まらない。

 私だって芹沢くんには、絶対に前に付き合った人が居ると前々からわかっていた。けど、まさか。才色兼備で、元々お金持ちのお嬢様で、有名な雪華が……元カノだったなんて。

「けど……芹沢くんは、そういう人じゃないよ。私のこと、好きって言ってくれるし、ちゃんと行動でも示してくれるもん。私は芹沢くんを、信じている」

 付き合ってから、今の今まで……芹沢くんを疑うなんて考えたこともなかった。「信じてる」と口にしつつも、銀河の心配している理由は、もし私がこの子なら、同じように思ってしまうはずだ。

 心の中にゆっくりと広がった暗い不安に、今にも押しつぶされてしまいそう。

 ……そっか。親しいゆうくんは、多分雪華と芹沢くんが前に付き合っていたのを知っていた。それを知っていたから「芹沢の元カノのことなんて、知らない方が良い」と、あの時私に言ってくれたんだ。

 知ってしまえば、雪華に勝てるところなんてひとつもない私が……どう思うか……あの人には、既にわかっていたから。

「雪華は高校生時代からモデルとして芸能活動をしてて、都内でも有名人だった。だから、そういう自分の事情で隠さなきゃいけない女と付き合った。やけに姉ちゃんの今の彼氏の女関係を、誰も知らなかった訳だよ……優鷹の法学部で、裁判官志望だって? 本当に、頭良さそうだね」

 芹沢くんのことを知りもしないのに、彼のことを揶揄(やゆ)するような銀河の言葉に、私は眉をひそめた。いくら姉弟だからって、言って良いことと悪いことがある。

「やめて。芹沢くんは、そういう人じゃない。私が、一番に知ってる。銀河も芹沢くんのこと、話したこともないし彼のことを何も知らない癖に、私たち二人の関係に勝手な口出ししないでよ」

 私の機嫌が、最底辺へと辿り着いたのを銀河も理解したのか、慌てるようにして、口を押さえて泣きそうな顔になった。この子は昔から私の後を着いて回る子だったから、こうして珍しく怒られるといつも辛そうにする。

 心配してくれている銀河に対し拒絶するような言葉を言うのは心は痛むけど私だって、譲れるところと譲れないところがあるのだ。

「俺だって……姉ちゃんの恋愛関係に、口出しするとか。気持ち悪いこと、したくねえよ。けど、この女の事を調べてて、つい見ちゃったんだよ……ちょっと。これ見てみてよ。じゃあ」

 そして、銀河は雪華のSNSの画面を閉じて、ある画像を私に見せた。

「……嘘……これ、芹沢くん?」
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