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63 別れさせ屋
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「あんた。何の目的だ?」
「待って……なんのこと?」
このところ、大学内で俺にやたらと纏わり付いていた女は、いきなり学内のカフェに誘われホイホイと着いて来た。
何かしら前向きな話が出来ると踏んでいたのか、上機嫌だったはずのお綺麗な顔は瞬時にして強ばり固まった。
まるで、芸能人のような容姿をした女の。見え見えで、わかりやすい性的アピール。それを向けられた側の俺にはどこか気持ち悪い違和感しか、なかった。
こういった容姿に自信のある女は、自分のことを大事にしてくれない男は、自分にとってのゴミに似た存在だと決め付けている場合が多い。
容姿が良いという時点で既に全方位の男が言い寄ってくるので、自分は何の努力もせずにその中から好みの男を選ぶだけで良い人生だったはずだ。
そんな楽なルートをこれまでに辿って来たのなら、誰かから冷たくされてもめげないという関係性には耐えられなくなるものだ。
これだけ何度も、彼女が居ると言っても聞かずに無視されても諦めないなんて、明らかにおかしいことだった。
「……何を、企んでる? ……お前。もしかして、別れさせ屋じゃない? 前にそういう職業の話を、聞いたことがあるんだよ。俺の彼女には手を出せないから、誰かがダメ元で送り込んだ女?」
「ち、ちがうわよ!」
女の目が一瞬泳いだのを見て、正体を確信した。なるほど。演技は上手いが、突発的な事態には弱いタイプのようだった。
「見え見え、なんだよ。お前。俺のことなんて、絶対に好きじゃないだろ。金をいくら積まれたか知らないけど、恋人同士を別れさせて、どうするつもりだ? 依頼人は、誰? わかりやすく言い寄ってくれたから、証言者には困らない。大学の部外者なんだから、俺が今から突き出したら、すぐに個人情報の調べはつくんだけど?」
「……依頼人の名前は、絶対に言えない」
部外者が大学にまでやって来て纏わり付かれていて迷惑をしていると、警察に届けを出せば本来この場所に居るべきではない部外者は御用となる。流石に本職の公的機関には、偽の身分証は通らないだろう。
そうすれば、後ろ暗い事情を持つ連中に関しては、色々とやりようがある。
女はこれは逃げられないと踏んだのか、さっきまでの媚びたような不自然な笑顔は何処かへ消えた。憎々しい表情で、俺をきつく睨み付けた。
「やっぱりか。じゃあ……俺がその依頼人の依頼料の倍額を情報料で出すって、言ったら?」
金には金で対抗するかと俺が提案すれば、女は唇を噛みイライラした様子で首を横に振った。
「無理。一応、これは私の仕事だから、信用が一番だし」
「はは……そんな外道な職業でも、一応はそういうプライドは持っているんだ? じゃあ、これだけ答えろ。依頼人は、男? 女? 答えたら、警察に通報するのだけは見逃してやるよ」
「女よ! じゃあね! めちゃくちゃ、ムカつく男!」
「それはどうも。あんたに好かれたくないね。大人しく帰ってくれて、ありがとう」
女はいきり立って立ち上がり、カツカツと耳障りなハイヒールの音を立てて、去って行った。
あれだけの容姿を持つ別れさせ屋の時間を何週間も拘束し、俺をハニートラップに掛けるだけの目的で張り付かせることが出来る……財力を持つ、女か。
今までに想定していた中でも、最悪な事態がこれから起こりそうだった。
「待って……なんのこと?」
このところ、大学内で俺にやたらと纏わり付いていた女は、いきなり学内のカフェに誘われホイホイと着いて来た。
何かしら前向きな話が出来ると踏んでいたのか、上機嫌だったはずのお綺麗な顔は瞬時にして強ばり固まった。
まるで、芸能人のような容姿をした女の。見え見えで、わかりやすい性的アピール。それを向けられた側の俺にはどこか気持ち悪い違和感しか、なかった。
こういった容姿に自信のある女は、自分のことを大事にしてくれない男は、自分にとってのゴミに似た存在だと決め付けている場合が多い。
容姿が良いという時点で既に全方位の男が言い寄ってくるので、自分は何の努力もせずにその中から好みの男を選ぶだけで良い人生だったはずだ。
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これだけ何度も、彼女が居ると言っても聞かずに無視されても諦めないなんて、明らかにおかしいことだった。
「……何を、企んでる? ……お前。もしかして、別れさせ屋じゃない? 前にそういう職業の話を、聞いたことがあるんだよ。俺の彼女には手を出せないから、誰かがダメ元で送り込んだ女?」
「ち、ちがうわよ!」
女の目が一瞬泳いだのを見て、正体を確信した。なるほど。演技は上手いが、突発的な事態には弱いタイプのようだった。
「見え見え、なんだよ。お前。俺のことなんて、絶対に好きじゃないだろ。金をいくら積まれたか知らないけど、恋人同士を別れさせて、どうするつもりだ? 依頼人は、誰? わかりやすく言い寄ってくれたから、証言者には困らない。大学の部外者なんだから、俺が今から突き出したら、すぐに個人情報の調べはつくんだけど?」
「……依頼人の名前は、絶対に言えない」
部外者が大学にまでやって来て纏わり付かれていて迷惑をしていると、警察に届けを出せば本来この場所に居るべきではない部外者は御用となる。流石に本職の公的機関には、偽の身分証は通らないだろう。
そうすれば、後ろ暗い事情を持つ連中に関しては、色々とやりようがある。
女はこれは逃げられないと踏んだのか、さっきまでの媚びたような不自然な笑顔は何処かへ消えた。憎々しい表情で、俺をきつく睨み付けた。
「やっぱりか。じゃあ……俺がその依頼人の依頼料の倍額を情報料で出すって、言ったら?」
金には金で対抗するかと俺が提案すれば、女は唇を噛みイライラした様子で首を横に振った。
「無理。一応、これは私の仕事だから、信用が一番だし」
「はは……そんな外道な職業でも、一応はそういうプライドは持っているんだ? じゃあ、これだけ答えろ。依頼人は、男? 女? 答えたら、警察に通報するのだけは見逃してやるよ」
「女よ! じゃあね! めちゃくちゃ、ムカつく男!」
「それはどうも。あんたに好かれたくないね。大人しく帰ってくれて、ありがとう」
女はいきり立って立ち上がり、カツカツと耳障りなハイヒールの音を立てて、去って行った。
あれだけの容姿を持つ別れさせ屋の時間を何週間も拘束し、俺をハニートラップに掛けるだけの目的で張り付かせることが出来る……財力を持つ、女か。
今までに想定していた中でも、最悪な事態がこれから起こりそうだった。
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