62 / 86
62 不文律(side 司)
しおりを挟む
「芹沢ガールという呼称については、俺にも色々と言いたいところはあるんだけど。今では完全に諦めの境地に至ったから、とりあえずそこはもう良いとして、そんな不文律あったんだ……さっきも言ったけど、水無瀬さんは俺の彼女だし。写真くらい撮られたからって、何も言わないよ。出来たら俺だって、水無瀬さんの写真欲しいし」
包み隠さず俺の本音を言えば、彼女の顔は目に見えてパッと輝いた。
「うっ……嬉しい! じゃあ、芹沢くんの部屋にカメラ置いて、二十四時間動画をずっと撮っても良い? 私。どの瞬間も、見逃したくなくて」
「……うん。その辺りは色々とお互いの意見に、擦り合わせが必要みたいだ。けど、俺も水無瀬さんの可愛い写真は沢山撮りたいと思ってるから……限度を越えない程度に、お互い撮影しても良いことにする?」
「うっ……嬉しいぃぃぃぃぃ。良かった。今まで、ずっと我慢してたの。付き合った日も……なんで、私の目には、スクショ機能が付いてないのかなって……ずっと」
「俺と、付き合った日? あの日に、なんか……二人で撮影するようなところ、あった?」
確かエアコンの壊れた彼女の部屋で付き合うことを決めてから、二人でシャワーを浴びて俺の部屋へと移動しただけのような気がする。
彼女の家から、俺の家までは駅周辺と言っても、ただの商店街続くだけ。目新しい撮影スポットなんかも特にない。
「わかってないっ……芹沢くんは、自分の放つ眩しさについて、わかってないんだよ。えっと、出来たら今度、あの時の再現のために、半裸で朝日浴びて欲しいんだけど……ダメ?」
あの時、汗に濡れたTシャツを着るのが嫌だったので、早朝だし人目もないから良いかと、上半身裸でのままで確かに道を歩いていた。
「……水無瀬さんって、本当に俺のこと好きだよね」
「うん。私。芹沢くんのこと、全部好きだよ」
へらっと微笑んで水無瀬さんは、目の前のベーグルに口を開いて齧(かじ)り付いた。
「……じゃあ、俺の部屋に一緒に住む? 毎日家に帰ったら、水無瀬さんが居ると嬉しいな」
これは佐久間に相談したら、付き合ってすぐにそんなことを言えば絶対に引かれると言われていたことだったので、俺なりにかなりタイミングを図って言ったつもりではあった。
合鍵をすぐに渡したのに、何故か俺と明確に約束している時にしか水無瀬さんは部屋に来ない。
「だっ……ダメ!」
二つ返事でオーケーしてくれると思っていたことだったので、俺はここで内心慌てた。彼女の思考は計算が出来ないと思っていたけど、この流れで断られる理由なんて、俺には本当に理解不能だったからだ。
「うん……あの、なんで?」
出来るだけ水無瀬さんからは平静な様子で見えるようにして、落ち着いて聞いたつもりだ。
ちなみに心の中では「なんでだ良くわからない」という大嵐が巻き起こっている。俺の事をあんなに好きだと言ったのに、同棲の提案を断られるなんて思っていなかった。
もう。この子の考えすべてを理解するのは、俺には一生無理なのかもしれない。
「四六時中……芹沢くんと、一緒に居るなんて。無理だよ!」
水無瀬さんのはっきりとした拒絶の言葉を聞いて、頭をガーンと大きなハンマーで殴られたかのようだった。
けど、きっと彼女のことだ。
こんな普通の思考回路の俺には思いつきもしない、突拍子もない良くわからない理由で嫌がっているに違いない。だいぶ、そんな水無瀬さんがわかって来た。
「……うん。なんで? 水無瀬さんは、俺のこと好きなのに?」
「好きだから、無理なの。絶対に変なとこを、見せたくないもん」
「水無瀬さん。何してても、可愛いのに……俺へのそういう変な幻想、どうやったら無くせるのかな……」
そんなことなんてどうでも良いとばかりに俺の写真を撮りたいシチュエーションを語る、水無瀬さんのキラキラとした目を見れば。
その答えは、簡単には出なさそうだった。
包み隠さず俺の本音を言えば、彼女の顔は目に見えてパッと輝いた。
「うっ……嬉しい! じゃあ、芹沢くんの部屋にカメラ置いて、二十四時間動画をずっと撮っても良い? 私。どの瞬間も、見逃したくなくて」
「……うん。その辺りは色々とお互いの意見に、擦り合わせが必要みたいだ。けど、俺も水無瀬さんの可愛い写真は沢山撮りたいと思ってるから……限度を越えない程度に、お互い撮影しても良いことにする?」
「うっ……嬉しいぃぃぃぃぃ。良かった。今まで、ずっと我慢してたの。付き合った日も……なんで、私の目には、スクショ機能が付いてないのかなって……ずっと」
「俺と、付き合った日? あの日に、なんか……二人で撮影するようなところ、あった?」
確かエアコンの壊れた彼女の部屋で付き合うことを決めてから、二人でシャワーを浴びて俺の部屋へと移動しただけのような気がする。
彼女の家から、俺の家までは駅周辺と言っても、ただの商店街続くだけ。目新しい撮影スポットなんかも特にない。
「わかってないっ……芹沢くんは、自分の放つ眩しさについて、わかってないんだよ。えっと、出来たら今度、あの時の再現のために、半裸で朝日浴びて欲しいんだけど……ダメ?」
あの時、汗に濡れたTシャツを着るのが嫌だったので、早朝だし人目もないから良いかと、上半身裸でのままで確かに道を歩いていた。
「……水無瀬さんって、本当に俺のこと好きだよね」
「うん。私。芹沢くんのこと、全部好きだよ」
へらっと微笑んで水無瀬さんは、目の前のベーグルに口を開いて齧(かじ)り付いた。
「……じゃあ、俺の部屋に一緒に住む? 毎日家に帰ったら、水無瀬さんが居ると嬉しいな」
これは佐久間に相談したら、付き合ってすぐにそんなことを言えば絶対に引かれると言われていたことだったので、俺なりにかなりタイミングを図って言ったつもりではあった。
合鍵をすぐに渡したのに、何故か俺と明確に約束している時にしか水無瀬さんは部屋に来ない。
「だっ……ダメ!」
二つ返事でオーケーしてくれると思っていたことだったので、俺はここで内心慌てた。彼女の思考は計算が出来ないと思っていたけど、この流れで断られる理由なんて、俺には本当に理解不能だったからだ。
「うん……あの、なんで?」
出来るだけ水無瀬さんからは平静な様子で見えるようにして、落ち着いて聞いたつもりだ。
ちなみに心の中では「なんでだ良くわからない」という大嵐が巻き起こっている。俺の事をあんなに好きだと言ったのに、同棲の提案を断られるなんて思っていなかった。
もう。この子の考えすべてを理解するのは、俺には一生無理なのかもしれない。
「四六時中……芹沢くんと、一緒に居るなんて。無理だよ!」
水無瀬さんのはっきりとした拒絶の言葉を聞いて、頭をガーンと大きなハンマーで殴られたかのようだった。
けど、きっと彼女のことだ。
こんな普通の思考回路の俺には思いつきもしない、突拍子もない良くわからない理由で嫌がっているに違いない。だいぶ、そんな水無瀬さんがわかって来た。
「……うん。なんで? 水無瀬さんは、俺のこと好きなのに?」
「好きだから、無理なの。絶対に変なとこを、見せたくないもん」
「水無瀬さん。何してても、可愛いのに……俺へのそういう変な幻想、どうやったら無くせるのかな……」
そんなことなんてどうでも良いとばかりに俺の写真を撮りたいシチュエーションを語る、水無瀬さんのキラキラとした目を見れば。
その答えは、簡単には出なさそうだった。
17
お気に入りに追加
332
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる