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31 刺客
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芹沢くんがもし悲しそうにしていると、泣けてしまうと思う。だって、推しにはいつも世界一幸せで居て欲しい。彼が世界に存在しているというだけで、私が幸せを絶え間なく貰っているから。
「初音ちゃん! もう、看板出したら、上がって良いからね。お疲れ様ー!」
「あ。はい! お疲れ様です」
ショーケースを拭き終わっていた店長は明るく言ってから、私に手を振った。ゆうくんがあんなに可愛い顔の理由は、彼とそっくりな彼女からの遺伝だということは一目見ればすぐにわかってしまう。
年齢不詳の、可愛い系の美魔女。大学生の年齢の息子が居るなんて、信じられない。元々の作りが全然違うとは理解しつつ、私もあの年齢の頃にはあんな風になれてたら良いな。
私は荷物を置いていた事務室へと向かい、私服に着替えた。何気なく鞄の中にあるスマホを確認してみると、メッセージの通知がいくつか来ているようだった。
「……ん?」
一つ目の芹沢くんのメッセージは、ゆうくんに誘われていた飲みに今から行ってくるねっていう報告だった。推しが、私に気を使ってくれてる……真面目な彼らしくて、好感度が上がるしかない。これだけで、胸キュンしちゃう案件。
芹沢くんはもしかしたら私をキュン死させるために送り込まれた、刺客なのかもしれない。怪しげな黒づくめの服とか、似合い過ぎるしこちらにとってはご馳走でしかない。
……やばい。最高。芹沢くんのそんな格好をしているという想像だけで、ご飯は何杯か軽くいけちゃう。
そのすぐ後にあったゆうくんからのメッセージを見ると『みーちゃん、芹沢に来週ご飯行こうってちゃんと誘ってる?』と、書いてあった。
その時、私はようやく気が付いた。芹沢くんの誕生日プレゼントを買うことだけしか考えてなくて、お金を稼ぐことに精一杯になり、肝心な主役の予定を押さえるのを完全に忘れてしまっていた。
芹沢くんだって……付き合うことになったと言えど、彼は彼なりの交友関係があるのだから、早々に誘わないと予定が埋まってしまうかもしれない!
『ううん。誘ってない。誘うの、忘れてた。ありがとう。今から、誘ってみる!』
『りょーかい』
ゆうくんのメッセージは、いつも用件のみの短い文章だ。男の人って、そんな人が多い気がする。芹沢くんや、弟の銀河だってそうだし。そして、恋愛マスターの美穂ちゃんは、ウザがられないように頻度や文章量を向こうに合わせるようにと忠告をくれた。
けど、私は出来たら芹沢くんとは延々メッセージのやりとりをしたい。なんでもないラリーが楽しくて続き過ぎて、気が付けば朝になっていましたなど、とてもしたい。
芹沢くんが今頑張っている司法試験が終わったら、なんだってしてみたい。それが数年後でも、彼のことならぜんぜん待てる。その頃の二人は、もう同棲してたりして……なんかもう、本当に夢みたい。
そして、危うくまた幸せな妄想の世界の住人になり掛けていた私は、慌てて芹沢くんの誕生日の予定を早めに押さえるべく、スマホのディスプレイに指を滑らせた。
「初音ちゃん! もう、看板出したら、上がって良いからね。お疲れ様ー!」
「あ。はい! お疲れ様です」
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「……ん?」
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……やばい。最高。芹沢くんのそんな格好をしているという想像だけで、ご飯は何杯か軽くいけちゃう。
そのすぐ後にあったゆうくんからのメッセージを見ると『みーちゃん、芹沢に来週ご飯行こうってちゃんと誘ってる?』と、書いてあった。
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芹沢くんだって……付き合うことになったと言えど、彼は彼なりの交友関係があるのだから、早々に誘わないと予定が埋まってしまうかもしれない!
『ううん。誘ってない。誘うの、忘れてた。ありがとう。今から、誘ってみる!』
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けど、私は出来たら芹沢くんとは延々メッセージのやりとりをしたい。なんでもないラリーが楽しくて続き過ぎて、気が付けば朝になっていましたなど、とてもしたい。
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そして、危うくまた幸せな妄想の世界の住人になり掛けていた私は、慌てて芹沢くんの誕生日の予定を早めに押さえるべく、スマホのディスプレイに指を滑らせた。
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